食後の運動ならぬ、食前の運動だー
眠りに落ちた彼女を眺めること二時間―――
「ん・・・ん~・・・ふぁ・・・いぃにおい・・・ふみゃ?」
あ、起きた。
まだ寝ぼけているのか、私の前足を撫でながら深呼吸している。
ハッとしたのか顔を上げると、私と目が合った・・・するとみるみる顔が赤くなっていく、リンゴみたいで可愛いなぁ。
「んんっ!ごめんね、寝ちゃってたよ・・・うぅ~、お話しする時間がぁ~・・・」
――気にしなくていいよ、時間はまだまだあるし一緒に居てくれるんだよね?
私がそう言うと赤く染まった顔で、年齢に比べて幼さの方が勝る微笑みを浮かべて抱き着いてきた・・・可愛すぎかよぅ!
そんな私の内心など知らない彼女は、私に頬擦りして幸せそうな笑顔を咲かせている。
その笑顔で私も幸せになれるよ・・・うへへ~♪
彼女をずっと眺めていたいなぁ・・・と思っていると、不穏な気配を感じてその方角へと顔を向ける。
私が大きく動いたことで彼女は揺れに気づいて私を見つめた。
「ソフィ?どうかしたの?」
――こちらを狙う者がいる・・・少し行ってくるよ
彼女の身体に尻尾を巻き付けて持ち上げ、地面に降ろしてから私は立ち上がる。
そこで彼女が不安げな顔で胸元で手を握り締めているのが見えたので、尻尾で頭を撫でてあげてから言ってあげた。
――私は帰ってくるから、サナエは堂々として待っていてね
私の言葉に少しの不安の色を顔に残しながらも頷いてくれたので、私は気配を感じた方角へと地面を強く蹴り飛び出した。
この国は周りを断崖の絶壁で囲われていて、たまに野生の捕食生物が獲物を求めて降り立ってくることがある。
まぁ私もその一匹だったんだけどね・・・ほぼ食い殺して、あとは四人の王族と彼女''サナエ,,だけとなった時に彼女と出会い、まぁ・・・ね?一目惚れってあるんだなぁってその時は思ったね。
それからは彼女の為にこの国を護るという条件で、食事と彼女(←こっちの方が大事!!)を求めたらあっさり承諾されたので今はこうしているというわけ。
ちなみに後々聞いたら承諾したのは彼女自身だったみたい、他の人は止めたらしいけど彼女は引かなかったそうな・・・彼女も私に一目惚れしたって言ってたなぁ・・・うへへへへ♪嬉しすぎてその日は炎を天高く噴いてしまったなぁ・・・
って彼女との出会いを考えていたら気配を感じた所に着いた・・・あ、なんかいる。
『グルルアアァァァァッ!!!』
咆哮をあげるソレは、首が二つあってその頭頂部付近には仰々しい角が無数に生え、腕は身の丈の倍以上もある翼と一対になり、身体にはこれまた無数の棘が不揃いに生えていて尻尾は二対に分かれていた。
その姿は俗にいう『竜』であった。
うわー!初めて見た!いやでも、初めてではないのかな?いや、彼女はどっちかというと蛇か。
それにしても竜って実際は結構怖い顔してるんだなぁ・・・でもカッコいいなぁ・・・私もちょっと''真似,,してみようかな~っと。
私はそう思って背中から目の前の竜に似た翼を生やしてみた、私の翼は体毛に覆われているからなんかもさっとしてるなぁ・・・全然カッコよくないっ!むがぁーーっ!!
私が心の中で憤慨していると、竜は私が突然翼を生やしたことで驚いたらしく臨戦態勢になっていた。
大丈夫だよ~怖くないよ~。
そう思って一歩踏み出すと竜は突然動き出し一つの首が私の首に噛み付き、もう一つの首は私の前足へと噛み付いてきた。
それにより乾ききった地面へと血が滴り落ち、潤いを与えていく。
『グルアアァァッ!』
竜は雄叫びを上げて私から口を離した、大量の血を吐きだしながら。
――存外脆い・・・こんなものか?
私はそう言って三本ある尻尾の一本を竜の一つの首に巻き付け、少し力を入れる・・・少しね。
バギャッ!グチャッグチッ!
すると竜の首は木の棒を折るように簡単に折れた・・・あれ?本当に脆すぎない?まだ幼生だったのかな・・・じゃあ悪いことしちゃったな・・・かなり痛そうだし、楽にしてあげよう・・・えいっ。
私は痛みで悶える竜に近づいてその身体に爪を突き立て、一気に地面へと叩きつけた。
ズギュッ!グチャッ!ビチャッ!!
竜の体は真っ二つに裂けて、その血肉を地面へとぶちまけた。
それにより事切れたらしく、首をだらんと垂らせて動かなくなった・・・うん!仕事終わり!かえろーっ!
地面に転がるモノなど気にせず、先ほど生やしておいた翼を使って彼女の元へと一直線で帰るのだった。
ちなみに、ちゃんと着地できずに屋根に激突して半壊させたりしたけど事故ってことで許してね。
昼食のお肉も美味しかったです!満足!
ちなみに竜は成体です、一体で村一つ壊滅させるぐらいの強さだったりします。