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守護獣な私と巫女と呼ばれる彼女と、のんびり過ごす獣愛物語。  作者: にゃんたるとうふ
風の国で―――
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異形の大狼VS風を操る者

グリフォンと対峙したと同時に、私は強く床を蹴ってグリフォンの懐に入った瞬間に獣に戻り体当たりをおみまいした。


『ぬぐぉっ!?』


「グリフォン様!そ、ソフィさん!?」

ピューイの驚いた声を背後に受けながら、塔の外へと投げ出されたグリフォンは崩した体勢を立て直して空高く舞い上がった。


――逃がさんっ!!


私も背中から翼を生やしてグリフォンを追いかけて空に舞い上がった、グリフォンは驚いた様子だったがすぐに気持ちを切り替えたのか上から見下げていた。


『俺様に喧嘩を売るたぁ・・・いい度胸してるぜぇ!!そこらの獣風情がよお!!』


そう叫んですぐに前足に風を纏わせたグリフォンがその足を振るうと、風の刃が雨のように降り注いできた。

その風の刃の間を縫うように躱していき、グリフォンの懐へと潜り込んで身体を回転させて尻尾を振るった。

―――がすでにグリフォンの姿はなく、私の後方へと移動して再び風の刃を放ってきていた。


――チッ・・・!


避けきれないと判断して毛質と肉質を硬化させて風の刃を受けきった、と同時に真横に移動していたグリフォンは私の腹部に下半身のライオンの足で蹴り飛ばしてきた。


――むっ・・・!


『ぐっ・・・!?お前身体硬すぎだろっ!こりゃあ近接を挑まねぇ方が賢明だなぁ!!』


再び距離を取ったグリフォンの速さを見て、私は内心で軽く舌打ちをした。

ともかく相手がこれ以上の攻撃をしてこない限り私に傷を付けることはできない、ならどうやってこっちの攻撃を当てるかだな。

そう考えていると口を大きく開いて息を吸ったグリフォンは、すぐさま何か吐き出した・・・っ!


『風弾っ!!』


風の刃よりも鋭くて速い風の塊を咄嗟に前足で受け止めたが、硬化させているはずなのに傷を受けた・・・すぐ治ったけど。

さっさと決着をつけないと面倒臭そうだな、そう思って近づけばそれと同じぐらい離れていくグリフォンに舌打ちした。

距離を保ちながら風の弾丸を放ってくるグリフォンにヤキモキしながらも、どうにかこちらの攻撃を当てる方法を考えていると塔の上からサナエが大声で私に呼びかけた。

「ソフィ!熱を下に向かって撃って!!」

熱・・・?熱線のことかな?でも下にって・・・っ!そうかっ、サナエの言いたいことを察した私はグリフォンよりも高い位置に飛び上がると口を大きく開けて熱線を放った。


『なにっ!?―――っぶねぇなぁっ!!火を吐く狼なんて聞いたことも・・・ぁっ!?お、お前まさかっ・・・!?』


何故か顔色を悪くしたグリフォンに首を傾げながらも、その場から動かない様子に内心安堵の息を吐いた。

それと同時に異変に気付いたグリフォンは下へと視線を向けた瞬間、私の熱線で暖められた空気が冷たい空気を押し上げる上昇気流になったことにより、グリフォンは咄嗟のことに身動きできずに無防備に上に押し上げられた。

そしてすでに私の方がグリフォンの頭上に来ていたわけで、覚悟はいいな・・・?


――サナエに手を出そうとしたことを悔いながら、地に落ちろっ!!


『――――ぶごおぁっ!!?』


身体の捻りを加えた渾身の前足で頭をぶん殴り、その勢いのまま大穴の中へと落ちていくグリフォンを見届けると塔で待つサナエの元へと戻った。




『すみませんでした・・・俺様、調子に乗ってました』


大穴から這い上がってきたグリフォンは最初の威勢は何処へやら、とても大人しくなっていて私と目が合うと身体を震わせて明後日の方向へと視線を逸らした。

「ソフィに負けたからって態度が委縮しすぎな気もするけど、ソフィ何かしたの?」

サナエの問いに特にこれといったことはしていないので首を横に振ると、ピューイがグリフォンの側に駆け寄って怪我の心配をしていた。

「グリフォン様、怪我は大丈夫ですか?見せてくださいっ!」

ピューイの変わらない態度にグリフォンは何処か感動したように瞳を潤ませていた、これからはピューイやハーピィたちを大切にするだろう。


『それにしても''また,,大狼さんに会うことになるとは思ってなかったですよ、ハッハッハッ・・・はぁ』


「えっ!?グリフォン様とソフィさんって知り合いだったんですか!?」

ピューイは驚きながら私の方へと視線を向けた、それにつられるように皆の視線が私に向けられた。


――・・・何処かで会ったか?まったく記憶にないのだが


『いやっ!憶えてないならそれでいいです!そうだ、ピューイ。この街にいるハーピィたちに帰っていいことを伝えて来てくれ、そのついでにお前も他の街で暮らしてもいいぞ』


「あ、はい!分かりました、グリフォン様!皆に伝えた後、また戻ってきますねっ!」

そう元気に返事をしたピューイは塔の下へと飛び降りていった、グリフォンは首を傾げていた。


――よかったではないか、ピューイは貴様の側を離れたくないようだぞ?


『・・・本当に馬鹿正直な娘だ、大切にしなければな。大狼さんたちもこの街でも他の街でも、この国にいる間はゆっくりしていってください』


グリフォンの言葉を受けて頷いて返した私たちは、休むところを探しに塔を後にした。




塔の入り口へと戻ってきた私たちは、他の街に戻っていくハーピィたちとこちらに向かって飛んでくるピューイの姿を見つけた。

「みなさんも他の街に移動するのですか?あっ、そうだ!グリフォン様を止めていただいてありがとうございました!信頼を回復するのは一苦労だと思いますけど、グリフォン様と二人で頑張っていきますっ!」

元気な笑顔を浮かべるピューイにはグリフォンから離れるという選択肢はないようだった、巫女だからかな?

「どうしてそこまでグリフォンの為に頑張れるんですか?他の皆が悪く言っていたのに・・・」

ユキナが抱いていた疑問をピューイにぶつけると、ピューイは笑顔を浮かべたままこう言った。

「え?だって他に味方がいないのに私だけ味方になったら、グリフォン様を独り占めできるじゃないですかっ!この街につれてこられたみんなも帰っちゃいましたから、アチシがグリフォン様の心の奥深くに刻まれて愛してもらえるんですよ!最高じゃないですかっ!これからはここで二人っきりで過ごせるなんて夢みたいです、ソフィさんがグリフォン様に勝ってくれたおかげです!ほんっとうにありがとうございましたっ!!」

満面の笑みでそう口にしたピューイに背筋をゾクッとさせながらも、私たちは近くの街まで飛んで移動するのでした。

ピューイは好きな人の周りに他の女がいると密かに排除するタイプ。

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