変態の執念には驚かされるよ・・・
目を開けると輝く太陽が真上に昇っている時間だった、ゆっくり上体を起こして伸びをしてから隣で寝ていたはずのサナエがいないことに気付いた。
「サナエ、サナエ・・・?どこ行ったの・・・?サナエ、サナエサナエッ!!」
ベッドを圧し折る勢いで飛び降りると、部屋を見回してから一つの扉を力任せに開けた。
「え・・・?そ、ソフィ・・・?―――ひゃっ!」
中で腰を落としていたワンピースをたくし上げていたサナエは、突然扉が開いたことに驚いた様子で顔を上げていたが気にせず抱き着いた。
「よかったぁ・・・サナエ、サナエぇ・・・はむっ、あむっ・・・」
「あんっ・・・もう、ソフィ。くすぐったい、よぉ・・・あぅっ!?――んん~~っ!」
首筋を甘噛みしながら舌を這わせていると、サナエが身震いしたと思ったら水が流れるような音が下から聞こえてきたので・・・落ち着いた頭で今の状況を理解した私は、そっと立ち上がると部屋を後にした。
「うん、とりあえず後でサナエに謝ろう」
そう呟いて少し時間が経った頃に出てきたサナエは、顔を真っ赤にして私を可愛く睨みつけていた。
「・・・ソフィのバカ、少し側を離れただけなのに」
「ゴメンね、サナエ。隣にいなかったから居ても立ってもいられなくて・・・私にはサナエが必要だから、少しも離れたくないんだ」
私がそう言うとムスッとした顔を緩めそうになるのを必死に抑えていた、可愛いっ。
「ソフィだって一日側にいなかったくせに・・・」
そっ、それを言われると何も言い返せない・・・!私があーだこーだと考えていると、目の前まで来ていたサナエは私の頬にキスをした。
「だからこれからは、離れないようにしてね?私もソフィが側にいないとどうなっちゃうか分からないから、ね?」
「うん・・・ゴメンね、サナエ。やっぱり私にはサナエしかいないよ」
サナエを抱き寄せて優しく抱き締めると、サナエもギュッと抱き締め返してくれた。
この後ベッドへと戻った私たちは、眠りに落ちるまで・・・いや、眠りに落ちた後も抱き締め合いながら一日を過ごした。
再び目を覚ますと、メイド服の裾を翻しながら備え付けのテーブルの上に料理を盛り付けるユキナの姿が目に入った。
そして少し視線を逸らすとサナエが可愛い寝顔を無防備に晒していたので、軽く唇同士をくっつけてから上半身を起こした。
「あっ!おはようございます、ソフィ様!朝食の準備が出来ましたよ、精のつく物を作ったので食べてくださいっ!」
「んっ・・・わかった、サナエ起きて。ユキナがご飯を用意してくれたんだって」
私が軽く頷いて返すと嬉しそうに頬を緩ませたユキナ、そんな彼女から目を離して未だベッドに横になるサナエの身体を揺すってそう声を掛けた。
「んみゅ・・・ふあぁ・・・おはよぉ、そふぃ・・・えぃっ」
寝惚け眼でそう口にしたサナエは身体を起こすとすぐに私の胸に飛び込んできたので、私はしっかりと抱き留めてギュッと抱き締めた。
「んふぅ、ソフィは暖かいね」
「サナエも暖かいよ?それに甘くていい匂いもするし、食べちゃいたいくらいだよ」
「もぅ、ソフィったら・・・食べるのは夜にしてほしいな?」
そう言われると我慢できなくなっちゃうよ?あとその口元を隠す仕草可愛すぎない?
「サナエ様・・・?私がいることを知っていてそんなことをしているんですか?」
その声に反応した私がそちらに目を向けると、笑顔を浮かべたユキナがサナエへと顔を向けていた・・・なんだかユキナの機嫌が悪い?
「あら、ユキナ。全然気付いていたけど、どこに遠慮する必要があるの?ソフィは私のモノで、私はソフィのモノなんだから」
「むうぅぅっ・・・!」
自身の頬と私の頬をくっつけながらドヤ顔をするサナエ(すごく可愛いっ!)と、頬を膨らませてサナエを睨むユキナを見て私は首を傾げた。
「アナタはサナエさん以外のことになると鈍くなりますね」
少し離れた位置でイスに座ったロズダがそう口にした、っていうか貴様もいたのか・・・全然気付かなかったぞ。
「あぁっ!とても蔑ろにされている気がしますぅ・・・!――はっ!いえ、そうではなくて・・・神殿に入って戻ってくるまで、一夜明けたことにとても心配したんですよ?戻ってきた後も二日も部屋からお出になりませんでしたし、ユキナを宥めるのにとっても苦労したんですよ?なので何かご褒美を所望します」
確かに迷惑かけたのは事実だから言い返せない・・・でもご褒美かぁ。
「・・・ビンタでいいか?」
「アナタが私をどう見ているかはよく分かりましたが、私の願いは私の作った服を着てもらうことです」
・・・それだけ?もっとドギツイことをお願いしてくるものとばかり思ってたよ、それぐらいなら全然許容範囲だからいいけど。
「本当ですか?実はウルメさんに会ってから浮かんだアイデアがありまして・・・ウルメさんが着ていたビキニの布面積を大幅に削った物で―――」
「一回死ぬといい、いや殺すっ!」
「生憎私を殺しても魔法の誓約書(声認証型)があるので着ていただくのは確約ですが・・・」
お前こんなしょうもないことにそんな貴重品使ったの!?どんだけ着せたかったんだよ、この変態っ!!
「ちなみに着ていただく物はこちらです」
これってどれ?・・・もしかしてその手に持ってる布切れのこと?それを着れと・・・?
「つまり・・・それを焼き尽くせば着る必要はない、ということか―――っ」
「生憎、誓約書の効果でこれをアナタが手を出すことはできませんので・・・諦めてくださいね?」
そのしてやったりみたいな顔やめろっ!無性に腹立つ!!・・・ってそうだ、サナエに焼いてもらえばいいんだ!そう思ってサナエに視線を向けると、何事か考えているようだったけどすぐに顔を上げて私が見ていることに気付いた。
「・・・ごめんね、ソフィ。私、ソフィがそれを着た姿を見たいな?」
「サナエのお願いなら、全然いいよっ!」
私がそう言うとサナエは嬉しそうに頬を緩ませ、ロズダも嬉しそうにしていたが・・・ユキナだけ目が据わっていた。




