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守護獣な私と巫女と呼ばれる彼女と、のんびり過ごす獣愛物語。  作者: にゃんたるとうふ
海の国で―――
15/108

海の守護獣の加護

行きよりも勢いを増した泳ぎをしたせいで、海面に着いた時には止まることができずに海上へとリンちゃんと一緒に飛び上がってしまった。


そのせいで港や市場の方は大騒ぎになっていたけど、そんなことよりウルメのいる灯台へ向かわないと!


『ぐぅっ!貴様、一体何がしたいのだ!?民が大騒ぎではないかっ!』


――うるせぇ!!リンちゃんが引き籠ってたから引きずりだしたんだろうがっ!黙ってついてこいやぁ!!


暴れるリンちゃんを押さえながら灯台の近くへとやって来た私たちを出迎えたのは、泣き出しそうに瞳を潤ませたウルメとそれを宥めるサナエたちだった。

「りっ、リン様ぁ!!」


『っ!!ウルメ・・・!』


ウルメの存在に気付いたリンちゃんはさらに強く暴れたが、前足で頭をガッチリ固定しているので身動きが取れない様子だった。

そんな彼女の頭を灯台近くの岸に叩きつけ、ウルメへと視線を向けて促した。

「わ、わかりましたです・・・!女は度胸、ですっ!!」

そう言って気合を入れるように拳を握り締めたウルメはリンちゃんに駆け寄ると、リンちゃんの口元に唇を押し当てた。


『っ!?う、ウルメ・・・!?一体何を――――ぬっ?』


一瞬打ち付けた痛みで顔を顰めていたリンちゃんだったが、ウルメの突然のことに驚いたような声をあげたがすぐに何かに気付いたようにウルメへと視線を向けた。

「ウルメの傷が・・・消えてる?」

サナエの呟きに、頬を上気させていたウルメは自身のお腹へと目を向けた。

「ふぇっ・・・?あっ!本当ですっ、傷が消えて心なしか身体が軽くなったような気がするです!」

そう言って笑顔を浮かべたウルメから視線を逸らしたリンちゃんは私へと視線を向けたので、吸盤を元の体毛に戻して頭を固定していた前足を離した。

すると再び海の中へと潜ったリンちゃんに疑問符を浮かべていると、見る見るうちに濁っていた海面が透き通っていき・・・とても綺麗な青い海へと変貌した。


――すごいな・・・さすがはリンちゃん、っと私がこのままいると騒ぎが大きくなるか


そう思った私は一旦海中に潜ると街から死角になっている所で人の姿になり、陸に上がると素早く灯台の中に入ってワンピースを着てすぐに戻ってきた。

「お疲れさま、ソフィ」

「ありがとう、サナエ」

戻ってきた私に笑顔を浮かべてそう言ってくれたサナエに私も笑顔を返していると、先程聞いた声が聞こえてきた。

「貴様は人になるとそうなるのか、存外普通だな」

振り返ると毛先に進むにつれて赤色に変わっていく透き通るような青色の髪を頭の両サイドで結んだ青い瞳のビキニを着た魚人の長身女性、っというかリンちゃんが立っていた。

「そういうリンちゃんの人の姿も初めて見たけど、何でビキニ・・・?」

リンちゃんの声と姿を確認したウルメはリンちゃんに駆け寄ると、その胸に跳び込むようして抱き着くと口を開いた。

「私とお揃いがいいとリン様がおっしゃったからです!リン様、無事で本当によかったです・・・私のせいでリン様に苦しい思いをさせてしまってっ!」

そう口にしたウルメを愛おしそうに包み込むようにして抱き締めたリンちゃんは、ウルメの頭を優しく撫でながら口を開いた。

「ウルメのせいではない、近くにいながらウルメを護れなかった我の失態だ。だからそんな顔をするでない、いつもの可愛くて愛おしい笑顔を咲かせておくれ」

「~~っ!り、リン様ーーーっ!!」

リンちゃんの言葉を聞いて感極まった様子のウルメは、リンちゃんを強く抱き締めて胸に顔をうずめていた。

「貴様にも迷惑を掛けた、我が友よ。いや、今はソフィと呼んだ方がよいか?」

「別にいつも通りでいいよ、リンちゃん。それで一体何があったの?リンちゃんが後れを取るなんて、よっぽど・・・でもないか。リンちゃんってたまにドジするし」

私がそう言うと顔をサッと逸らしたリンちゃん、でもすぐに咳払いをして気持ちを切り替えてから口を開いた。

「我のことはどうでもよい、何があったかについてだが・・・簡潔に言えば、隙を狙った暗殺者のような者がウルメの腹部に魔剣を突き立て呪いをかけた。その呪いは人を蝕んで死に至らしめるものだった、故に我が全てを受け止めてウルメを死から護った」

そこで一息ついたリンちゃんは、不安げに見上げるウルメの頭を優しく撫でてから口を開いた。

「人を殺す呪いは我にとってはそこまで強力ではなかったが、力をうまく使うことができず我の破壊衝動というのか・・・獣としての本能を刺激するものだった、故に海底で大人しくしていたのだ・・・まさか貴様が現れて、海底から引っ張り出してくるとは思っていなかったがな」

そう言って私にジト目を向けてくるリンちゃんだったが、私が来たからそうしてウルメと抱き合えてるんだぞ?感謝してほしいなっ!

「まぁ、呪いの解き方を知ってたのはロズダだけどね」

「またも私の名前を・・・!あぁっ・・・んはぁ・・・」

私が指を差してそう言った先では、身体をくねらせながら声を漏らす変態(ロズダ)がいた。

「・・・魔女か、随分貴様にご執心なようだが・・・何をした?」

「知らん。むしろこっちが聞きたいぐらいだよ」

私がため息交じりにそう言うと、「貴様も苦労しているのだな」と同情の視線を向けられた。

「ともかく我らを救ってくれたこと、感謝する。我は国全体に加護をかける為に貴様たちと一緒にはいられないが、ゆっくりしていくといい」

そう言い終えるとウルメを連れて灯台の中へと戻っていった、私たちも宿屋に戻って一休みしてから観光しようか。


そう提案すると三人は頷いてくれたので、宿屋のある街の方へと歩き出した。

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