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守護獣な私と巫女と呼ばれる彼女と、のんびり過ごす獣愛物語。  作者: にゃんたるとうふ
海の国で―――
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異形の大狼VS海の支配者

「き、キスってあのキスのことですかっ!?」

ロズダの言葉にアタフタしながら唇に触れては顔の赤みを増していくウルメ、それを見てロズダは落ち着くようにと口にした。

「あくまで最愛の者から、ですから・・・リヴァイアサンがウルメさんを想っていなければ意味がありませんよ?」

「大丈夫ですっ!リン様とは心が通じ合ってると思うです、結婚の約束だってしたのですからっ!!」

顔を真っ赤にしながら大きくそう声をあげたウルメに、ロズダは「そ、そうですか・・・」とウルメの勢いに押されて少し引いていた。

「解決方法が分かったのは良いけど、リンちゃんは今どこにいるの?」

私がそう尋ねると、先程まで元気ハツラツとしていたウルメは急速に勢いを失った。

「うっ・・・じ、実は、たぶん海底深くに潜ってしまってると思うです。多分、私たちに迷惑を掛けないために・・・です」

だから海に加護が届いてなかったんだ、海底かぁ・・・そう思いながら席を立った。

「じゃあちょっと潜ってリンちゃん引き上げてくるね?」

私がそう言うとウルメとユキナは驚いた表情を浮かべ、サナエとロズダは私のことを知っているからいつも通りだった・・・ロズダの知ってますって顔が腹立つからデコピンをおみまいしておこう、えいっ!

「あふんっ!」

オデコにデコピンを受けたロズダは勢いを殺せずイスごとひっくり返った、そんなロズダを無視してウルメは口を開いた。

「むっ、無茶です!人で辿り着けるような深さじゃないですよ!?」

「そうです!たとえ守護獣様でも海底に潜るなんて・・・!」

ウルメに続くように声をあげたユキナの言葉に、ウルメは「えっ?」という声を漏らした後に私に向けて信じられないものを見るような視線を向けた。

「大丈夫、大丈夫。魚のようにエラ呼吸すればいいんでしょ?昔リンちゃんと泳ぐ時にやったから楽勝だよ」

「えっ――ええぇぇぇぇっ!!?」

ウルメは驚いた表情を浮かべて、大きな声をあげていた。



「そういえば自己紹介してなかったね、私はラーナリア国で守護獣をしているソフィ。それでこっちが巫女のサナエだよ」

「よろしくね、ウルメ。同じ巫女同士仲良くしましょうね?」

ある程度落ち着いたウルメに対して今更ながら自己紹介をした私たちに、ポカンとした表情をしていたウルメはハッとしてすぐに返事をしてくれた。

「こ、こちらこそよろしくです!巫女の先輩に会えるなんて光栄です、っということは背中のコレも見えるですか?」

ウルメがそう言って私たちに背を向けると、うねっている姿のリヴァイアサンの紋章が刻まれていた。

「うん、見えるよ。でも巫女と守護獣しか見えないから、ユキナとロズダには見えてないと思うけど」

「たしかにそうですね、綺麗な背中だなぁ・・・としか」

ウルメはサナエの言葉に嬉しそうに頬を緩ませて、ユキナの言葉に照れくさそうに頬を朱に染めていた。

「若いですねぇ・・・アハハッ!」

「年寄り臭い言い草だな・・・年相応で可愛いものだ」

「アナタの台詞も年寄り臭いですよ?」

ほっとけ・・・あれ?ウルメの背中に紋章があるってことは、サナエの背中にもあるのかな?

「ソフィの考えてる通りだよ?私の背中にはソフィの姿を模した紋章があるの、この紋章があるってことは巫女と守護獣が深く繋がっている証なの」

へぇ・・・そうなんだ、じゃあ愛の結晶みたいなものなんだね!サナエのワンピースの襟から背中を覗くと確かに紋章があった。

「紋章があるということは可能性は十分あります、後はリヴァイアサンを海面に引きずり出すだけですね」

ロズダがそう言ったことで視線が私に集まるのを感じたので、私は胸を軽く叩くと大きく頷いて口を開いた。

「ふふんっ!任せといて、リンちゃんを連れて戻ってくるからさっ!」




灯台を出てすぐの岸から私は飛び込んで海底を目指す、少し潜って海面から見えない位置で元の獣状態に戻った。

って言っても海面は濁ってるから見えないだろうけどね、そう思いながら首付近に魚のエラを作って尻尾を仰ぐようにして潜っていく。

水深数百メートルを越え始めると、濁っていた水が徐々に澄んできていることに気付いた・・・リンちゃんが近いってことかな?


――しかし随分深くに潜ったものだ、それだけ国の者を想っているのか・・・はたまたウルメのためか


多分後者な気がするなぁ・・・リンちゃんって案外真面目だし、っと噂をすればかな。

相当深く潜ったらしく周りは光の届かない暗闇になっており、崩れ落ちた洞窟や朽ちた建物が沈むその中から青く光る双眼がこちらを真っ直ぐ見つめていた。


――さて、連れ戻しにきたぞ・・・リンちゃん


私の声を聞いた双眼は驚いた様子で見開かれたが、すぐさま細めてこちらを睨むように鋭さを増した。

そして薄暗い闇からその姿を覗かせたリンちゃんは、全長十メートル以上のスラッと長い青く透き通った身体をうねらせながら、少し前に見た竜よりも縦に長い顔をこちらに向けて鋭い牙が並ぶ口を開いた。


『っ―――貴様は・・・何の用だ、我は今貴様に構っている暇はない。即刻立ち去れ』


私が立ち去ろうとせずに徐々に近づいていくと、無数の水の弾を撃ち出した。

それを身体を捻ることで回避し、避けきれないものは爪で切り裂いた。


『立ち去れというのが、分からぬかっ!!』


――連れ戻しに来たと言ったはずだ、海の支配者(リヴァイアサン)・・・大人しく海面に顔を出せっ!!


リンちゃんの怒号に怒号で返すと三本の尻尾を一気に動かして、距離を一気に詰めて前足を突き出して身体を掴もうとしたが、リンちゃんはそれ以上の速さで私の後ろに回り込むと尻尾を私の背中に打ち付けた。


――ぐっ・・・!?


『ここは我の領域(テリトリー)だ、貴様が勝てる道理も無い―――むっ?』


たしかに遠距離で攻撃されていたら私でもリンちゃんを捉えるのは無理だったかもね、けど直接攻撃してくれる分には私にも勝機があるのさっ!


――この方法は初めて戦った時にしたはずなんだけど、リンちゃんは忘れていたのかな?


『しまっ―――そうか・・・!貴様は身体を自由に変えることができたのだった!』


リンちゃんが私の背中に尻尾を打ち付けたと同時に、背中にタコの吸盤を作っておいたのだ!これでリンちゃんは私から離れることはできない!


――さぁっ!一緒に来てもらうぞ、リンちゃんの大事な人が待ってるんだからねっ!


吸盤で引っ付いたリンちゃんの身体を引っ張り寄せて抱き締めると、そのまま海面へと一直線に向かった。

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