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守護獣な私と巫女と呼ばれる彼女と、のんびり過ごす獣愛物語。  作者: にゃんたるとうふ
海の国で―――
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海の国の巫女は、褐色ビキニ

聞き込みを終えて戻って来て早々、とんでもないことを大声で言い放ったユキナの口を塞いで抱えるとその場をあとにした。


あまり人通りの多くない路地へと滑り込むようにして移動した私たちは、ユキナに優しく注意した。

「ユキナ、もう少し言葉を選ぼうか。おかげで私たちは針の(むしろ)になるところだったよ?」

「は、はい・・・すみません」

しょんぼりとして俯いてしまったユキナだけど、このままじゃ情報を聞けないので落ち着いてもらうことにした。

「でも話を聞いてきてくれたことはとても嬉しいよ、ありがとね」

「はっ、はい!」

俯いていたユキナを褒めてあげると、顔を上げてとても嬉しそうに頬を緩ませていた・・・なんだか、犬っぽい。

「それで?どんな話が聞けたの?とんでもないこと口走ってたけど」

「はい!えっと、実はこの国の守護獣である『リヴァイアサン』の加護を受けて漁業は盛んに行われていたそうなんですが・・・一月前から急激に加護の力が弱まったらしくて、今では加護を受けられておらず海が濁ってしまっているそうなんです」

・・・えっ!?リヴァイアサン(リンちゃん)って守護獣だったの!?そのことの方が驚きだよ、でも彼女がそんな契約をしているのなら破ることなんてないと思うけど・・・

「それと、この国の巫女を務めている方が病で伏せられているそうなんです」

「十中八九関係がありそうですね、アナタはどうしますか?別に無視して次の国に行くこともできますが・・・」

そんなの最初っから決まってるよね。

「リンちゃんを救う、そのためにはまず巫女と会う必要があるな・・・サナエもそれでいい?」

「うん、ソフィがしたいのなら私も付き合うよ。ソフィの側にいるって決めてるから」

嬉しいことを言ってくれたサナエの頭を優しく撫でてから強く抱き締めた後、巫女がいるという場所へと移動を開始した。


「ところでリンちゃんって・・・?」

「リヴァイアサンだから最初のリと最後のンを取ったあだ名だよ?昔一緒に暮らした時に付けたんだ、懐かしいなぁ」

「へぇ・・・そうなんだぁ・・・リヴァイアサンとは、少しオハナシしなきゃね」

ブツブツと何かを呟くサナエだったけど、私の視線に気付くと微笑みを浮かべて私の腕に抱き着いた。




この国の巫女がいる場所は先ほどの市場でユキナが聞いていたらしく、お城ではなく港の隅にそびえたつ灯台の中にいるとのことだった。

「何でそんな所にいるのでしょう?医者の元で安静にしていた方がいいと思うのですが・・・」

ユキナがもっともな疑問を口にした、理由は考えれば何個か出てくるけど・・・それは本人に会って確かめた方が早いしね。

「それにしても広い港だね、船も無数に泊まってるし・・・でも本当に海は濁ってるね」

「その原因も巫女に会えばわかるのかな?」

私の言葉にサナエは首を傾げながら問いを投げ掛けた。

「少なくとも関係はあるだろうね、私とサナエみたいに親密な関係かもしれないからね」

「ソフィ・・・えへへっ♪」

サナエは嬉しそうに笑みを浮かべて、抱き着いていた私の腕に絡めていた腕に力を込めてさらに強く抱き着いた。

「はいはい、イチャついてないで早く行きましょう?そんなことされると私もアナタに抱き着きたくなってしまいます」

「貴様など、お断りだ」

しっしっと手であしらう仕草をすると「んふぅっ!」と肩を抱いて悶えていた、とりあえず無視してサナエとユキナを連れて止めていた足を動かした。


「置いていくなんて酷いです・・・はっ!これが、放置プレイ・・・?」

灯台の入り口に着いたと同時に、そんなよく分からないことを口にしながら現れたロズダを無視して灯台の中へと続く扉を開いた。

中は螺旋階段が頂上の光る所まで繋がっており、目の前は色々な荷物が山積みになっていた。

「この上に、巫女さんはいらっしゃるのでしょうか?」

「恐らくは、だけどね」

私たちはゆっくりとした足取りで一歩一歩階段を踏みしめていく。

頂上に出る為の入り口は板で塞がれていたが、私にかかればこの程度造作もない!というわけでドーンッ!


バキャッ!!


殴ったことで粉々に吹き飛んだ板は頂上の床へと散らばった、開いた入り口から顔を出して様子を窺うと褐色肌の少女が呆然として立ち尽くしていた。

「君がこの国の巫女?」

そう問い掛けられた褐色ビキニの少女は、ハッとして正気に戻ったようで耳付近のヒレをピクピク動かしながら大きく頷いていた。


「えっと、粗茶ですが・・・どうぞです」

褐色魚人少女ことエビルタイ国の巫女・ウルメは、私たちを備え付けられていたテーブルの周りに置かれた椅子に案内するとお茶を淹れてくれた。

「ありがとう、それで君は何でこんな所にいるの?病で床に伏しているって聞いたんだけど」

私がそう言うと少し肩を震わせたあと、こちらを窺うような視線を向けてからぽつぽつと声を漏らした。

「実は、病気ではないんです・・・いえ、健康ということでもないんですけど・・・」

「もしかしてその腹部の紅いひび割れが原因?」

私がそう尋ねると、ウルメは元から大きな目を見開いて驚いた表情をしていた。

「そっ、そうです!この傷のせいでリン様が苦しんでいて、街の人に言ってもそんな傷は無いって言われて・・・リン様が一方的に悪者だと決めつけられてしまって困っているんです!どうか、どうかリン様を救ってくださいですっ!」

興奮したようにテーブルに両手をついたウルメは、大きく身を乗り出しながら深々と頭を下げた。

「傷が見えない・・・?それはどういう・・・」

サナエは傷を見つめながらそう呟いたが、ふとその視線をユキナへと向けた。

「ユキナ、彼女のお腹を見てどう思う?」

「・・・え?わ、私にそんな趣味はありません!誤解されるようなこと――」

「違うから、彼女のお腹に傷があるかって聞いてるの」

「傷?いいえ、とても綺麗でシミ一つありませんけど・・・それがどうかしたんですか?」

ユキナの表情には嘘は見えないから本当にそう見えてるんだ、っということは見えるのには何か条件があるのかな?

「傷の形状からして短剣の類ですね、おそらく呪い付きの魔剣でしょう。巫女は守護獣と一心同体といいますからこの国の守護獣であるリヴァイアサンは、ウルメさんが受けるはずだった呪いを彼女に受けさせない為に全て自分が受けて苦しんでいるのでしょう」

「そっ、そんな・・・!リン様っ!どうしたら、どうしたらこの呪いは解けるのですか!?」

ロズダに詰め寄るようにして席を立ったウルメに、ロズダは気圧されて仰け反りながら口を開いた。

「の、呪いの大元である魔剣を壊すか・・・あるいは、いえこれは可能性が低いでしょう」

「魔剣で刺されたのは一月前です・・・もう持ち主は近くに居ないと思うです、もう一つの方法を!可能性が低くてもそれに賭けたいですっ!」

ウルメの決意に満ちた瞳に見つめられたロズダは、小さく息を吐いてからゆっくりと口を開いてこう告げた。

「最愛の者からの口づけ・・・要は、リヴァイアサンとウルメさんがキスすることです」

ロズダの言葉を聞き終えたウルメは、「ふぇっ!?」と可愛らしい声を漏らして顔をリンゴのように真っ赤にした。

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