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守護獣な私と巫女と呼ばれる彼女と、のんびり過ごす獣愛物語。  作者: にゃんたるとうふ
帝国で――― ~終~
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決戦!異形の大狼VS帝国の守護神 ~前~

光の柱が雲を突き抜けて彼方に消えるのを一瞥しつつ、風圧で崩れた態勢を整えてから背中に乗っているサナエへと声をかける。


――サナエ大丈夫っ!?


振り落とされないようにしがみついていたサナエは、ゆっくりと顔を上げると頷いて口を開く。

「うんっ。大丈夫だよ、ソフィ!ソフィが咄嗟に私の身体を押さえてくれたおかげでね、ありがとうっ!ソフィ、大好きっ!」

サナエの愛を含んだ返事に高揚感を覚えた私はヤル気に満ち溢れて雄叫びを上げる、その行動に警戒したのか前方から無数の熱線(サナエ曰くレーザーというらしい)が降り注いできたがそれがどうしたっ!


――サナエ、しっかり掴まっててねっ!


「もちろんだよ、ソフィ!絶対離さないからねっ!」

私の身体にしがみつくようにして抱き着いたサナエを確認してから翼を羽ばたかせ、レーザーに向かって一直線に突き進む。

次々と迫るレーザーがついに私に触れるかという刹那、獣の姿から人の姿へと変化した私はサナエを抱き締めるようにして身体を丸くする。

サナエも私の意を汲んでくれたように強く抱き締め返してくれる、そのことに頬を緩ませながら擦れ擦れで周りを通り過ぎるレーザーが消えると獣の姿へと戻る。


――サナエ!


「うんっ!・・・『始祖の炎刻』!」

再び私の背に乗ったサナエに声をかけると大きな返事と共に力を使う、それを感じた私は口の中に熱を込める。


――すぅ・・・ガアァァッ!!


口から漏れ出る炎が普段の数倍の勢いを持ち、さらに吐き出した熱線は数倍の太さと熱量を持って狙った相手へと突き進む。

しかしその熱線は今までの攻撃同様見えない壁(サナエ曰くバリアというらしい)に阻まれて方々へと霧散する、そのことに軽く舌打ちしてから迫るレーザーを回避するべく意図的に翼を引っ込める。


――サナエ、辛くないっ?


「ソフィの温もりと匂いを感じてるから、全然平気だよっ!ん~っ♪」

柔らかな口調でそう告げるサナエは落下しているにも拘らず嬉しそうに私に頬擦りする、そんなサナエも可愛いねっ!

最愛の人の愛しい姿を眺めながら頬を緩ませていたが、耳障りな音が近付いていることに気付いて再び翼を生やすと旋回するように飛び立つ。


――それにしても厄介だね、マリアに鍵が届くまでの辛抱だけど・・・


そう口にしてから上空へと視線を向けて歯を剥き出しにして吠える、サナエも頷きながら私と同じ方向を見て眉を顰める。



上空では最初に目にした時と同様にこちらを見下ろす守護神がおり、その目は私とサナエを捉えて離すことなく、そしてこちらを仕留めるために緩めることなく攻撃をし続けている。

眼下に広がる帝国にレーザーの雨が降るのもお構いなしにである、それだけサナエを欲しているんだろうけど・・・


――生憎サナエを誰にも渡す気はない、大人しく諦めろっ!!


私の叫びに背に乗ったサナエが照れ臭そうに笑みを零すのを聞きながら、天上から見下ろす守護神が不機嫌そうに唸りをあげるのが耳に入る。

「べー、っだ!私の身も心も魂も、全部ぜーんぶっ!ソフィのモノなんだからね!」

私に続くように叫んだサナエは可愛く出した舌を守護神に向ける、それを目にしてさらに苛立った様子で唸りをあげる守護神を一瞥してから爆発する鉄の塊(サナエ曰くミサイルというらしい)を躱しつつ眼下を見下ろす。

視線を下ろした先には高い壁に囲われた帝国の街並みが広がっており、上空でこれだけの騒ぎを起こしているにも拘らず平凡に日常を謳歌している。

「帝国の住民なんて気にしなくてもいいよ、ソフィ。どうせもう自分の意志すら残っていない機械人形しかいないから、兵士は帝国を守ろうと動いているみたいだけど・・・こんな上空まで手出しはできないし、っていうかソフィの相手にならないもの」

同じ帝国出身だけどサナエの声色はとても冷たく興味がないことが窺える、まぁ私もサナエ以外に興味はないから同じだね。


――でもマリアから気を逸らすためにこうして出張ってきたけど、こんなにあっさり行くとは思わなかったね


「それだけ巫女として私を求めてるってことなんだろうけど・・・正直迷惑、私にはソフィがいるっていうのに。本当に目障りっ」

吐き捨てるようにそう口にするサナエに同じ気持ちの私は頷きで返し、追尾してきていたミサイルを尻尾で叩き落とす。


――ユキナがいつ鍵を集めきれるか分からないけど、これなら持ち堪えられそうだねっ


「うん、だけど油断しちゃダメだよ?ソフィが傷付くなんてあっちゃいけないんだからっ!」

そう口にするサナエに頷きで返しながらさらに迫るミサイルを尻尾で薙ぎ払い、降り注ぐレーザーの合間を掻い潜りつつ帝国の上空を旋回する。

「っ・・・ソフィっ!」

突然のサナエの呼びかけに驚いて視線を向けた直後、帝国を囲う壁の一角から黒い飛来物が私の翼を貫いた。


――っ、ぐ・・・!?


貫かれた傷口から黒く浸食するように(もや)が広がるのを目にした私は、咄嗟に翼を切り落として新しく生やす・・・切り落とした翼は黒い靄に包まれると腐り落ちてただの肉塊へと変化する。

「っ、あのガラクタ・・・!『始祖の刺在』!!ソフィ、大丈夫!?ゴメンね、護ってあげられなくてっ・・・!」


――サナエのせいじゃないから大丈夫だよっ、まさか帝国兵が魔槍を大砲で打ち出してくるなんて気づけないよ・・・っ!


必死に私に縋りつくサナエに気にしないように伝えてから、すぐに人型へと変化してサナエを包み込むように抱き締める。

「ソフィ・・・?―――っ!」

私が突如抱き締めたことに疑問符を浮かべたサナエだけど、私の肩越しに見えた光景を見て息を詰まらせる。



その光景とは、今まさにソフィとサナエを飲み込もうとする眩い輝きを放つ光の柱が迫る光景だった。

背後から迫る光の柱に対して、私は前回のように身体をマグマスライムと同じ特性にしてサナエを護るために覆い隠す。

「ソフィ、ソフィっ!無茶しないで、ソフィは私が護るからっ!『始祖の―――』」

サナエが力を使う前に私たちは光に飲み込まれ、私は来たる痛みと熱さに耐えるべく身体に力を込めた――――











――――っ?光の柱は一度受けてるからその威力は知っているけど、全く衝撃も熱さも感じない・・・?

そのことを不審に思った私はゆっくりと瞼を開けると、私にしがみついて悲しげに顔を歪めるサナエの姿と・・・妙に周りが赤くなっていることが目に入る。

「これは・・・?」

「・・・?あ、あぁ・・・!ソフィソフィソフィっ!どこも怪我してない?痛いところとか違和感を感じるところとかない?よかったぁ、見た感じ傷付けられてないみたいっ!よかったよぉ、ソフィ・・・」

ギュゥッと強く私に抱き着くサナエに頬が緩むのを感じながら、周りの赤い景色が急降下しているのに気付いたと同時にドスンッという大きな衝撃を受ける。

「そりゃ飛んでないから地面に落ちるか、でもなんか緩衝材を挟んだように衝撃が弱い・・・やっぱりこの赤いのが理由かな?」

そう口にして少し経ってから赤いのが動き出して景色が元の色彩を取り戻す、そして抱き合ったまま立ち尽くしていた私とサナエは背後に振り返る。

そこには大きな赤い半透明な球体がポヨンポヨンッと小さく跳ねていた、しかしそれはすぐに形を変えて大きな人型へと変貌する。


『大狼――逢いたかった――――』


「ソフィ、知り合い・・・?」

ムスッと頬を膨らませる可愛いサナエに思わず口付けを交わしてから、口元が緩むのを必死に抑えて不機嫌そうな顔を維持する可愛いサナエの疑問へと返事をする。

「間違ってなければ、昔あったマグマスライムだと思うよ。たしか喧嘩売ってきた蜈蚣を叩き潰した時に近くにいたはず、合っているか?」

私がそう問い掛けると、大きなマグマスライムは首を縦と横交互に振ってから口を開く・・・その反応はどっちなんだ?


『合ってる―――けど間違ってる――大狼―ソフィから―――名前貰った――――キングサイズ――とても気にいってる―――そう呼んでほしい――――』


名前・・・?いやそれはお前の大きさを見て呟いただけだと思うが、そう口にするのは簡単だけど無駄にキラキラした目を向けられると言い辛い・・・!

「そうか、そうだな・・・礼を言うぞ、キングサイズ。お前のおかげで光の柱を受けずに済んだが、どうしてお前がここにいる?」

「それは、私が連れてきたからなのだっ!」

バーディング国の山に住んでいるはずのキングサイズがいることに疑問を投げ掛けると、後ろからそんな声が聞こえてきたので振り返る。

「お前はたしか、メルティ?どうしてお前までここに・・・いや、お前がいるということはっ」

私が言わんとしていることを察したのか、妖精の姿のメルティは胸を張って口を開く。

「既に役目は果たしたのだっ!今ユキナちゃんは不本意ながらっ!ロズダと二人っきりで、鍵をマリアに届けに行ってるよ!私は道中で鉢合わせたキングサイズを届けるために先に来たの、まさか山から下りてきてるとは思わなかったけど・・・おかげで運ぶのに苦労したよ」

疲れた表情を浮かべながら手に持ったカバンを地面に降ろすメルティ、それってユキナが背負ってたカバンだよね?

「それで運んだのか?明らかに入りきらないと思うが・・・」

「うん?あぁ、それはねー・・・収納魔法と空間魔法を組み合わせてちょちょいとねー、だから少し魔力を使っちゃったけどねー」

そう口にしながらカバンの中を見せるメルティ、中を覗くと外側に比べてかなり広くなったカバンの中が見える。

「あぁ、そうだー!私はユキナちゃんの頼みで早めに来たけど、たぶんそろそろ―――」

メルティが何かを思い出したかのように口を開いたが、言い終える前に何かが落ちてくるような風切り音が聞こえたので顔を上げると・・・大きな塊が私たちのすぐ近くに着地し、地響きと砂埃が舞い上がる。

「なっ、なに・・・?ひゃっ――」

砂煙の先から伸びてきた尻尾に気付いた私はサナエを抱き寄せてキングサイズの影に移動する、それに気付いた尻尾は周りの砂埃を吹き飛ばして先の姿を現す。

「っていうかいきなり掴もうとするのはどうかと思うよ、やーちゃん」


『ソフィと会えない時間が長かったのがいけないのじゃ!つまり妾に会いに来ないソフィが悪い!抱かせろっ!』


「いや、ダメだからね?第一そんなことをしに来たんじゃないでしょう、八岐大蛇様」

背に乗っていたレッグによって八つある内の一つの頭を叩かれたやーちゃんは不服そうな声を漏らしながらも何も言わず、周りに視線を向けて七つの口を開いてそれぞれ違う色の炎を噴き出した。


『大体の話はそこの妖精から聞いたぞ、ソフィのために妾も手を貸しに来たのじゃっ!』


「そういうことだから、地上の帝国兵は僕たちに任せてほしい。君たちは守護神を倒すことに集中してくれていいよ」

そう口にしてこちらに微笑みを向けたレッグに頷きで返し、空を見上げると無数のミサイルを放つ守護神の姿が目に入る。

「あれを躱すのは苦労しそう・・・?」

呟いたと同時に迫った着ていたミサイルが一斉に空中で爆散し、ポカンと上空を眺めていると空を旋回する存在に気付く。

「あれは、グリフォンか」


『はーっはっはっはっ!!この程度の攻撃で俺様を落とせるかってんだぁ!!』


「グリフォン様カッコイイ!そしてつよーいっ!」


『はっはっはっ!そうだろうそうだろう!もっと俺様を好きになってもいいんだぞ、ピューイ!』


「うんっ!いっぱい好きになるーっ!(もうこれ以上ない程好きで尊敬してるけど、他の雌が寄ってこないようにしとかないとねー)」

なんか高笑いしながら背中に乗せたピューイに話しかけている、風を纏いながらすれ違いざまにミサイルを斬り裂いているのか・・・おかげでミサイルが来なくて楽だが、なんか腹立つな。

「実はここに来るまでに各国の守護獣と巫女に協力をお願いしていたのだー、だから他にも集まってくると思うよー!」

そうメルティが告げると帝国の周囲を囲む壁の一角に黒い二つの影が現れる、アレはケルベロスとオルトロスか。

二体は頷き合うと地上の帝国兵と守護神に狙いを定めて口から黒炎の弾を撃ち出す、守護神はバリアで守られているが帝国兵はやーちゃんの炎も相まってみるみる数が減っていく。

「これで少しは楽になるか・・・」

「っ・・・!ソフィ、あれっ!」

サナエが指を差した方向へと顔を向けると何やら大きな戸が上にせり上がり、その奥から大勢の帝国兵が聖剣や魔剣などを携えて姿を現した。

「守護神は帝国の人たちの魂を握っているの、それにあの身体は私と同じ機械で出来てるはず・・・もしかして地下に生産工場がある?どれぐらいの規模かは分からないけど、そこをどうにかしない限り無限に帝国兵が出てくるかも・・・」

サナエの言葉が正しいなら、いや正しいのはわかってるけど・・・どうにかして地下に行かないとジリ貧ってことか、かといってそんな簡単に守護神が行かせてくれるわけないよね。

「さて、どうするか・・・むっ?」

一旦獣の姿へと戻った私はサナエを背に乗せながら考えを巡らせて唸る、いい打開策が浮かばず声を漏らしていると突然大きな音が聞こえてきた。


『何―――っ?――――』


『うおぉっ!?帝国の四方に立つ塔が動き出したぞ!?何事じゃ!?』


皆が驚きの表情を浮かべる中、やーちゃんが言ったように帝国を囲う壁と一体化していた四本の塔が動き出し・・・凄まじい音を立てながら塔の中から何かが飛び出し、守護神に絡みつくように喰らいつく。

「あれは・・・鎖だね、しかもかなり大きい」

塔から伸びた鎖は守護神に繋がると大きな音を立てて引っ張りはじめる、それと同時にケルベロスとオルトロスが撃ち出した黒煙が直撃するのが確認できた。


――っ!守護神を護るバリアが消えている、ユキナがマリアの元に辿り着いたのか!


「ソフィ!守護神もなりふり構っていられなくなったみたいっ、光の柱を撃とうとしてる!」

サナエの言葉に頷いた私は目を開けて光を収束させている守護神に向かって翼を羽ばたかせて飛び立つ、それと同時にキングサイズが私にしがみつくように身体にへばりついてくる・・・ちょっ、何事!?


『ソフィ――護る――――』


そう口にして私とサナエを包み込んだキングサイズ、たしかにこれなら光の柱の熱にも耐えられる・・・このまま突っ込むぞっ!

「『始祖の羽衣』!これで衝撃を無くせるよ、遠慮なく突っ込んで!ソフィっ!」

サナエの力と応援を受けて力がみなぎるっ!とりあえずお前はこのまま地に落ちろ、守護神!


私は内心でそう叫びながら、光が収束する守護神の口へと全速力で突っ込んだ――――

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