Memory-Diver〜モノが語るコト〜
···私の通う学校には有名人がいる
もちろんテレビなどで有名とか、スポーツ、成績がいいからとか、イケメンだからとかいう良い方の有名人ではない、どっちかというと問題児的な悪い方の有名人だ
その人の特徴としては滅多に喋らず、いつも校舎の端っこの非常階段に必ず一人でいる
こうやって聞くとその人が有名な理由は不良だからなんじゃないかと思われるけどその人は別に不良でもなんでもなく、本当に普通の人だ、普通はそういう人だとまったく目につかないはずなんだけどなぜか有名になっている
あともう一つの理由としてその人にはとある噂がある
それは···
"その人が不意に意識を失う時は近づいてはいけない、もし近づいたらくわれてしまう"というものだ
「···きー、トッキー!!!」
「ふぇっ!?ど、どしたの?」
「"どしたの?"じゃないわよ、何急にボーッとして外なんか眺めちゃって」
「ご、ごめんごめん、それでなんの話だっけ?新生姜の話だっけ?」
「誰も新生姜の話なんてしてないわよ、もう···やっぱり聞いてないし···」
紹介が遅くなっちゃったけど私の名前は辻本喜代美、あだ名はトッキー、華のJK2年生です、なんでトッキーなのかは大体わかると思うけどツジモ"トキ"ヨミの真ん中を取ってトッキーらしい、命名したのが今話してる坂崎美優だから間違いないんだろう
「あれ?そうだっけ?」
「そうよ、ほんとあんた心配だわ···(汗)」
「えー何が?」
「あいつの事よ、また女子が食われたらしいわよ」
「へー」
「ほんと嫌だわ〜あいつ、大体食われるって何なのよ」
「やっぱり食われるって物理的になのかな?」
「そんな呑気に言ってる場合じゃ無いでしょ!!!どうすんのよ自分が食われたら!!!ほんとなんなのよ大神のやつ!!!」
大神─それが奇妙な噂を持っている人物の名前だ、私も直接関わったことも無いし···そもそも1年生だからってのもあるのかな、そんなに顔も見たことないけど、所属してる文芸部の後輩曰く顔は良くも悪くもなく普通の男の子らしい
なぜ1年の彼が校内で有名···悪目立ちって言った方がいいのかな、そうなったのはよくわからないけどいつの間にかそういう噂が流れだしたのは夏休みが終わった時からのはず、最初はなんか違う噂だったみたいだけどそこ尾ひれが付いたりして12月の今に至る
「んー···近づかなきゃ大丈夫なんでしょ?」
「そりゃそうだけど···こっちは顔も知らないのよ?」
「じゃあ大丈夫じゃない?」
「ホンットトッキーってお気楽ね···」
「来年から私達も受験生になっちゃうから今を楽しく生きないと!!!悩んでたらもったいないもん!!!」
「そのお気楽さ分けて欲しいわ···あとそのボディも」
「え?なんで!?あげないよ!?」
「だってあんたバレーやってるあたしから見てもスタイルいいし、何その胸についてるメロンは」
「め、メロンって言わないでよ!!!私これコンプレックスなんだからね!?」
「ほーう、それは持ってないあたしへの宣戦布告かぁ···」
「え?ちょっと何その手?なんでそんなワキワキしてんの?」
「おるぁ!!!その胸よこせェ!!!」
「いーやー!!!?」
···時計の針は既に天と地を指し終えた頃、ちょうど文芸部の活動も終わって···と言っても今年の文芸部でマトモにやってるのは私だけらしく今日も今日とて与えられた部室には私以外誰も来なかった、先週までは後輩ちゃんも来ていたのだが最近は学校にも顔を出さないらしい
「···ふぅ」
「あれ?辻本さん?」
「あ、高藤君」
「なにしてんの?」
「文芸部の活動、···て言ってもちゃんとやってるのは私だけなんだけどね」
「それはお疲れさん」
部室の戸締りをした所に声を掛けてきたのは同級生の高藤勇一、学年で優秀な部類に入る彼は顔もよく人柄もいいからファンクラブも出来てるほど人気者だ
「高藤君も部活?」
「いや、今日は図書館で予習だな」
「へぇー、よくやるね」
「これから帰り?なら途中まで一緒に帰ろうか」
「え、いいの?」
「女の子一人で帰らせるわけにはいかないからね、肉まん奢るよ」
「え、いいよそんな···」
「顔と言ってる事が違うぞ」
「へ?」
···ちゃんと奢ってくれた、学校を出てしばらく歩いたところにあるコンビニで高藤君は肉まんを二つ買いそのうちの一つを私にくれコンビニ近くの公園のベンチに並んで座ることに、季節が季節だからかもうこの時間だとあたりは真っ暗になってる
「···はぁ〜あったまるぅ〜」
「おいしい?」
「そりゃあもちろん!!!」
「それはよかった」
「って高藤君が作ったわけじゃないでしょ」
「まぁね、···ねぇ辻本さん」
「んむ?」
「あ、あのさ···い、今辻本さんには···」
「うっ!?」
「どうした!?」
「きゅ···急に温かいもの食べたからお腹が···ちょっとお手洗い行ってくるね···」
「大丈夫か?」
「う、うん···ちょっと私の荷物見てて···」
「わ、わかった···」
数分後···
「お見苦しいところをお見せしました···」
「いや、それより大丈夫か?」
「う、うん一応···」
「そっか···、あ」
「どうしたの?」
「ごめん、このあと人と会う約束してるんだ」
「あ、そうなの?ごめんね私のせいで」
「辻本さんのせいじゃないって、俺の方こそ一緒に帰れなくてごめん、じゃあお大事に!!」
「気をつけてね」
···人って誰と会うんだろ、それより私も早く帰らないと
そう思って荷物をまとめて公園から出ると···
「···ん?」
···気のせいだよね?道路の真ん中に何か黒い大きなものが落ちてるような···
「···あれってもしかして···人···!?」
夜目が効いてきたところで目を凝らしてよく見ると道路の真ん中に学ランを着た男の子が倒れている
「え!?も、もしかして轢き逃げ!?と、というかあの学ランウチの学校のやつじゃない!?と、とにかく警察に···待って救急車が先!?」
目の前で起きてる状況にパニックになっていると···
「···!!」
猛スピードでこっちに来るトラックが
「どどどどうしよう!!!そこの君今すぐ逃げて!!!トラック来てるから早く起きて!!!お願い!!!」
···呼び掛けに反応は無し、完全に意識が無いみたいだ
「(このままだとトラックがあの子の事轢いてリアル挽肉になっちゃう···)···やるしかない!!!」
目の前で気持ち悪いものを見ないために···というか目の前でそうなって私の事を恨まれないようにするために!!!
「···せーのでっ!!!」
・
・
・
・
・
・
「···ハァ···ハァ···」
なんとか倒れてた男の子を引っ張ってさっき肉まんを食べてたベンチに横にさせることに成功した、···あとちょっとで轢かれそうになってほんとに肝が冷えたけど
「···えっと、こういう時のやり方って防災訓練でやったよね、確かまず呼吸があるかを確認して···」
「···スー」
「···呼吸あるってことは生きてるね、はぁ〜よかったぁああ···」
・ ・ ・
「···え?じゃあ何で倒れてたんだろ」
公園の明かりが照らした男の子の体をよく見ると、女子の中では高い方の私よりも少し小さいその子には目立った外傷は無く、車に当たったような痕跡は見当たらない
「···可愛い顔してるな〜」
そうやって知らない子の寝顔を見ながら和んでいると···
「···てかそんな事してる場合じゃないじゃん!!!今何時!?」
カバンにしまっておいたスマホの時計をみると時刻はテレビでいうゴールデンタイムを迎えている
「嘘でしょ!?早く帰らなきゃ!!!···あ、でもこの子どうしよう···そのまま置いとくわけにもいかないし···、あ、そうだ」
寒空の中を生身で置いとくわけにもいかないのでいつも使ってるブランケットをかけてあげることに、そしてさっきのコンビニにこの子を保護してもらうように頼んで急いで帰路につくことに
「···すいません!!!それじゃあお願いします!!!」
「わかったわ、気を付けて帰ってね」
···コンビニの店長が優しい人でよかった
翌日···
「···っくし!!」
「トッキーいつものブランケットどうしたんよ?」
「あー、今日ちょっとバタバタしてたから忘れちゃって···」
「いつもカバンの中に入れてるのになんで忘れんのよ···」
「あはは···」
昨日はあれから特に怒られることは無くいつものようにネットで小説を読んで文芸の勉強をし、何事もなく一日を終えた、···なんとなく美優ちゃんにはブランケットのことは言わない方かいいかな
「それより聞いた?今度は隣の高校で食われたらしいわよ」
「え、隣?」
「そうよ、ウチだけじゃ足りずに遂に他校にまで手を出したのよ!?夏休み終わってからこれで何人目よ!!!もう大神のやつ絶対退学にさせないとダメでしょ!!!」
「うーん···」
夏休みの終わり頃からウチの女子生徒が何者かに襲われるという事件が多発している、ちゃんと警戒もしてるみたいだけど一向に収まらず犯人はその幅を広げたみたいだ、美優ちゃんは噂になってる大神って子が犯人だと睨んでるらしいけど···
そんな話をしてる時だった
「···あ、ごめん私のだ」
「いいわよ別にそんなことわり入れなくても」
「一応ね、···あ、まただ」
「ん?"また"って何よ」
「あ、いや、今日の朝に私のアカウントにダイレクトメールが届いてね」
「ほーん、どんなの?」
「別に"おはよー!!!今日も一日学校頑張ろうね!!!"とか···」
「待て待て待て待て、え、何そのメッセージ気持ち悪っ!!!誰から来たの!?」
「それが私も知らないんだよね、しぶのフォローさんかフォロワーさんかなって思ったんだけど、しぶの方にそんな人誰もいないんだよね」
「なにそれ怖っ!?今すぐブロックしなって!!!」
「したんだけどさ、今度はまた違うアカウントが私にメッセージ送ってくるの、もう何度もやんのめんどくさいしそのままにしよっかなって」
「今すぐ警察に相談しなさい」
「えー···」
「···うーっす、お前らなんの話してんの?」
「おはよー梨元君」
「あ、和也ちょっと聞いてよ!!!トッキーってば変な人に目ぇ付けられたって!!!」
「なんだそりゃ?」
「あ、うんこれなんだけど」
美優ちゃんの幼馴染みの梨元君にそのメッセージを見せてみる、梨元君も頭が切れる方だからこういう時助言してくれる
「···うわ、これマジのストーカーじゃん」
「あんたコレどうにかできないの?」
「無茶言うなよ、オレだってこんなん初めてだからわかんねーし、···とりあえず辻本お前警察に相談しろ」
「えー···」
「つかお前いつも使ってるブランケットどうしたんだよ」
「あーっと、さっき美優ちゃんに言ったから美優ちゃんに···」
「自分でいいなさい」
「えー···」
「ま、とにかくなんかあってからじゃおせぇんだから気を付けとけよ」
「わかってるって、そんな軽い女に見える?」
『見える』
「えー···」
・
・
・
・
・
・
「···ぃしょっと、ふぅ〜」
あれから特に変わったことは無く放課後はいつものように文芸部の部室で一人寂しく活動をする事に、今日は久々に部室の掃除をして校舎の裏にあるゴミ置き場に掃除して出たゴミを置きに来たところだ
「んー!!終わったー!!···はぁ、みんなちゃんと来て手伝ってくれてもいいのに···」
寒いから早く部室で暖まろうと、踵を返した時だった
「···ん?」
···校舎の非常階段の3階辺りに男子学生が座っているように見える、正直私は視力がそこまでいい方じゃなくメガネも勉強する時以外は掛けないから部室に置きっぱなしだから、顔までハッキリ見えない
「···何年生だろ?···!!!」
校舎の非常階段にいつも一人でいる男子学生···
「···もしかして、あの子が大神···?」
学校の悪い方の有名人の噂、それにすべて当てはまるってことは多分間違い無いだろう
「···ほんとに座ってるだけなんだ···」
そのままずっと見ていると···
ブワッ···!!!
「!!!」
『···クソっ···あのアマが···!!!』
『···いや···もう···やめ···て···!!?』
『あ?テメェが俺とこうなりたいっつったんだろ?』
『こんな···の···ちが···う···!!!』
『まぁ俺にとっちゃテメェなんかただの穴と変わんねぇんだよ、テメェはただの身代わりだ』
『そん···な···!!?』
『そうだな···お前は俺にヤられたんじゃない、大神にやられたってバラまいとけ』
『大···神···!?』
『俺にはなぜか俺を慕ってくれる女共が沢山いる、そいつらを敵に回したくねぇんならそう広めとけ』
『!?』
『俺にやられたなんて一言でも言ってみろ···テメェが今後どうなる知らねぇが、タダで生きられると思うなよ』
『···たす···けて···!!!』
『だったら大神にくわれたって言っとくんだな、わかったな?』
『っ···!!!』
「···な、何···?今の···」
突然頭の中にどこかの茂みで隣の高校の女子生徒が学ランを着た男に強姦されてる映像が出てきた、その女子生徒は泣きながらも男の手によって快楽を与えられ、心と体の矛盾に泣くことしか抵抗ができずにいた
「···今のが"くわれる"って事なの···?」
···でも今の映像でわかったことが一つある、美優ちゃんの言ってる大神が犯人っていうのは違うということだ、本当の犯人は大神の学校での立場を利用している···、大神の噂はウチの高校だけで流れている事だから
「···犯人は大神じゃないウチの生徒ってこと···?」
···でもこんなこと言っても誰も信じちゃくれない、というかまず私に今起きた事を誰も信用してくれないだろう
「···いったいなんなの···?」
···とりあえずその場に留まるわけにはいかず一人部室に戻ることに
「···それにしても、あの視点はいったいどういう視点だったんだろ、当事者にしては低すぎるし、まず男の方は顎しか見えないから···あぁもうやめやめ!!考えるだけ頭がおかしくなる!!!」
結局、私が見たあの映像の事は誰にも言えず、次の日を迎えた
「···あ、まただ···」
「今度は何?」
「"今日もキレイだね!!!あとちょっとで休みに入るから頑張ろ!!!"だって」
「まだ来てんの!?ほんと警察に相談しに行った方がいいって!!!」
「オレもそう思うぞ辻本」
「そうだけどさ···逆に警察に相談して刺激したらヤバくないかなって」
「あぁもう!!!ほんとなんなのよここ最近!!!大神の事もあるってのに!!!」
「あ、美優ちゃ···」
「?どうした辻本」
「あ、いや、やっぱなんでもない···」
「ほんとなんでこうなってんのにウチの職員共は動かないのかしらね、被害者いるんだからとっとと動きなさいよ」
「言うても噂だからな、証拠がある訳でも無いし」
「証拠ならあんじゃない、だって女子生徒が襲われてんのよ?」
「そうだけど、そういうのは証言だけじゃなぁ···信憑性に欠けるからもっとこう···決定的な証拠でもない限り···」
「そうなの?」
「痴漢事件がいい例だろ、アレはやってるとこを目撃して、更にそれを裏付ける決定的なもんがない限り泣き寝入りする事になったり、それの逆で冤罪擦り付けられて人生パーになったりするし」
「ほんっとあんたそういうムダ知識多いわよね」
「うるせぇな···ムダ知識ではねぇだろ」
私に届くストーカーみたいなメッセージ、それと学ランを着た男の子に無理やり犯される女子生徒、多分この二つは関係ないと思うけど、···それでもあの映像を見たあとだともしかしたら···
「···関係ないよね」
「どしたの?」
「あ、いや、今書いてるやつの流れっていうか···」
「お、辻本の新作か」
「あんた意外とそういうの好きよね」
「そりゃあお前幼馴染みの友達のやつだからな、一辺読んでみっておもろいから」
「あたしは長文無理なの」
「頑張れよ少しは···」
「···寒いからココア買ってきてもいい?」
「和也行ってきなさいよ」
「いいよ私ついでに部室寄って来るから」
「朝から?」
「うん、昨日忘れてった本回収したいし」
「じゃあ和也奢りなさいよ、バイトしてんでしょ?」
「えぇ···オレ今手持ちねぇんだけど」
「いいよ無理しなくて、ちょっと行ってくるね」
・
・
・
・
・
・
「···あ、売り切れてる···じゃあいちごミルクでいいや」
お目当てのもの(じゃないけど)を買って部室に向かう、もう文芸部の部室のカギは私が常時持ってるから職員室による事なくそのまま部室に行ける
その時にチラッとだけあの非常階段が見えるけど、昨日のアレがあってからちょっと意識するようになってちょっと目を向けると
「···またいる···寒くないのかな」
昨日と同じ場所に男子生徒が一人ぽつりといるのが見える、また大神って人がいる
「···」
昨日のあの映像は大神に近づいたから見えたものなんだろうか、それともまた別の何かなのだろうか
「···考えても仕方ないし、早く本回収して戻ろっと」
冷たい風が吹き込んだ事で我に返りその場をあとにしようとした時だった
ブワッ···!!!
「!!!」
また昨日みたいな映像が頭の中に流れこんできた、今度は···
「(···私の···スマホ···?誰かがいじってるの···?)」
誰かが私のスマホを操作してアカウントを見ている映像、···でも、私のスマホは今手元にあるから···
「(いったい誰が···暗くてよく手が見えない···)」
『···フッ···これでもういつでも一緒だ···!!!』
「!!!」
男の声が聞こえたと共に映像は消えていた
「···な、なんなのよこれ···」
ふと、非常階段の方に目を向けると、そこにはさっきと変わらず大神がいた
「···」
辺りを見回しても困惑してる人は誰もいなく、私だけが見えてるみたいだ
「···もう、ほんとになんなの···?」
···気味の悪いメッセージといい、私だけに見える謎の映像といい、数日前から私に起こるこの現象はなんなんだろうか···
「···お、おかえりトッキー、随分···ちょっとどうしたのよ」
「え?」
「辻本お前顔色悪いぞ?なんかあったのか?」
「あ、いや、なんでもないよ?ちょっと寝不足っていうか···」
「ほんとに?ちょっと保健室で寝てきたら?」
「え、だったら部室で寝るよ、あそこにちょうどいい寝袋置いてるもん」
「文芸部の部室になんで寝袋があるんだよ···」
「アイデアが詰まった時の仮眠用で昔からあるよ」
「···あたしも文芸部入ればよかったかな」
「今からでも入る?」
「だから長文苦手だっての、とにかく無理そうならどっちか行きなさいよ?」
「はーい、わかったわお母さん」
「あんたのお母さんになった覚えはないわ」
放課後、いつもの通り部室を開けて文芸部の活動を行う、···といっても何をしようと私しかいないわけだから私の自由なんだけど、とりあえず今日は本を読んで表現の研究をして自分の作品に取り入れられるようにする
「···」
···傍から見たらただ本を読んでるだけかもしれないけど、私は真面目にやっている
「···ふぅ、ちょっと休憩しよっかな」
始めてからもう何時間ぐらい経ったのだろうか、本を読む為に集中してると時間が過ぎるのが早い、午後3時から読み始めて今はもう午後5時、さすがに2時間ずっと座ってると体も痛くなってくる、おまけに寒いから余計に体にくる
「···ポットにお湯入れてこよっと」
お茶を飲みながら本が読めるように置いてあるポットを持って近くの水道に向かう、ほんとは天然水の方がいいのかもしれないけれど、そんなお金を払うほど部費は無いから水道水を温めて我慢だ
「···うー、冷たいー···」
「···辻本さん!!」
「ん?あ、高藤君」
「よかった、まだ学校にいたんだ」
「?」
ポットを洗っていると高藤君が走って来た、走って来たからかその顔は赤く火照ってる
「高藤君大丈···」
「辻本さん好きだ、君がよければ俺と付き合ってくれ」
「···へ?」
今私はなんて言われた···?
「え、え?」
「返事は別に今じゃなくていい、俺はいつでも待ってるから」
「え、ちょっと···」
「ごめん、このあと部活なんだ、それじゃあ返事待ってるから!!」
「た、高藤君!!!···行っちゃった···」
私の返答を聞く間も持たず高藤君はその場を去っていった、···それより高藤君が私の事を好き?
「···正直私と関わったのってそんなに多くないのに···どこが好きになったんだろ···うー、私あんまり恋愛小説って読まないからわかんないなー···」
···明日美優ちゃんに相談してみよっかな、あ、でも美優ちゃん絶対ビックリしちゃうと思うけど···まぁいっか
その後は本に集中することができず、その日の下校時間になってしまった
「高藤に告白されたァ!?」
「う、うん···」
「それで···トッキーはなんてったの···?」
「まだ答えてないの、答える前に行っちゃったから···」
翌日、昨日の告白のことを美優ちゃんに相談すると、案の定ビックリされちゃった
「···はー、でもトッキーと高藤ってそんなに接点無くない?」
「部活が終わったあと門まで一緒に帰るくらいかな、あ、この前は肉まん奢ってもらったよ」
「何そのラブコメみたいな雰囲気」
「ラブコメってこんな感じなの?」
「トッキーの方がその手は詳しいでしょ」
「私あんまり恋愛小説って読まないから···」
「それよりトッキー、あんな優良物件絶対に告白されたなんてやっぱトッキーも人気あるわよねー」
「うーん···私本しか取り柄ないのに」
「それはモテないあたしに対するひがみか!!!」
「え!?いやそんな訳じゃ···だからその手をワキワキすんの···きゃああああっ!!!」
「こんにゃろ!!その詰まってるもんよこせや!!!」
「いーやー!!!?」
そんな話をしてると···
「···高藤君どうしたの!!!?」
『!?』
廊下から聞こえてきたのは今話題にしている本人を心配するような声、気になって教室から出て様子を見に行くと、高藤君を中心に女子生徒が群がっていた
「うっわー···相変わらずモテるわねぇあいつ」
「そうだね···」
「···おーおー朝からすげぇな」
「あ、梨元君おはよー」
「あんたと同じ男なのになんでこんなに違うのよ」
「んなもん知るか」
「···あ、辻本さんおはよう」
「!!お、おはよう···ど、どうしたのその顔」
こっちに近づいてきた高藤君の顔には、痛々しい傷の跡や絆創膏などが貼ってあった
「ちょっと考え事してたら転んじゃって」
「転んだって···」
「大丈夫だよ、別にただのかすり傷だから」
「···もしかしてその考え事って、昨日の事···?」
「あ、別にそれは関係無いから」
「ちょっと待って!!!あなた昨日の事って何よ!!!」
「え?」
昨日の事っていうのに食い付いてきたのは確か高藤君のファンクラブを作った子だったはず
「何って、昨日高藤君が私に告白してきた···」
「嘘つかないで!!!あなたみたいな地味な女が高藤君に告白されたですって!?」
「···この際だからみんなに言っておくけど、俺は辻本さんが好きなんだ」
「そ、そんな···」
「嘘でしょ···?」
高藤君が私に告白したことを打ち明けると、その場にいた高藤君の追っかけをやってる女の子達はどよめきだした、それもそうだろう、高藤君が告白した相手は普通の女子よりも身長が高い可愛げの無い女なんだもの、おまけに恋をよくわからない人間なのだから
「···謝って」
「え?」
「今すぐ高藤君に謝りなさいよ!!!あなたが高藤君の告白を有耶無耶にしたから怪我したんでしょ!?」
「え、今違うって···」
「そんなの高藤君が優しいから配慮したに決まってるじゃない!!!」
「ちょっと待てあんた、本人がそうじゃないっつってんだからそれでいいじゃない!!!怪我したのは自分の不注意なんだからトッキーは関係ないっしょ!!」
「何よあんた!!部外者は黙ってなさいよ!!!」
「あんたこそ部外者でしょうが!!!」
「み、美優ちゃん···」
「···おい高藤、お前のその傷は本当に辻本は関係ないんだな?」
「もちろん···あ、でも···」
「···有耶無耶な回答してんじゃねぇぞ!!!それで困るのはお前じゃなくて辻本なんだからな!?」
「梨元君!!!落ち着いて!!!」
高藤君の返答に痺れを切らした梨元君を宥めようとした時だった
「···いっ!!!」
「トッキー!?」
「辻本さん!?」
「···だ、大丈夫···」
「チッ···今辻本に物投げたやつ出てこい!!!」
私の頭に石みたいな硬いものが投げられた、幸い血は出てないみたいだけど···
「トッキー大丈夫!?」
「う、うん···」
「ごめん辻本さん!!!僕のせいで···」
「高藤君のせいじゃないよ···それよりみんなを落ち着かせないと···」
「おいお前らいい加減にしろよ!!!お前らのせいで怪我人が出てんだからな!?」
「うるさいわね!!!だったら早く高藤君に謝りなさいよ!!!」
「黙れこのクソ女が!!!」
「誰がクソ女よ!!!」
今ので更にヒートアップしてしまい、もう収拾がつかなくなってきた時だった
「···」
「あ、おい今行ったら···」
「?」
喧騒が響くその間を私より小さい一人の男子生徒が歩いてきた、周りはまだ気づいてないみたいだけど、その子は私の方に真っ直ぐゆっくりと歩いてくる
「···(誰?···)」
「···」
「···あ、君、保健室から救急箱を···」
「···」
「ねぇちょっと聞いてん···」
その子は高藤君や美優ちゃんの声に反応すること無く私の事を真っ直ぐ見つめると再び踵を返して梨元君とさっきの女子の間に向かった、上履きを見る限りだと1年生なのかな···どうしてここにいるんだろう···
「(···今の子どこかで見たことあるような)」
「!!ちょっと何よあんた!!!」
「おい邪魔すんな1年!!!」
「···」
二人の間に割って入ったその子は右ポケットから何かを取り出してそれを握ったまま地面に手を置いた
「おい聞いてんのか1年!!!」
「どきなさいよあんた!!!」
「···ダイブ」
ブワッ···!!!
『!!!!?』
その子が何かを呟いたかと思うと頭の中にあの時の映像が流れ出した、今度は私だけじゃなくその場にいる全員が見えてるらしい
「···これ···私があの時見たのと同じ···」
「ちょ···何よコレ!?どうなってんの!?」
「···っ···!!!」
「コレこいつがやってんのか···っておいしっかりしろ!!!」
「!?」
梨元君の方に目をやるとその男の子は床に崩れ落ちている、まるで糸が切れたように気絶をしてるかのように···
「···まさか···!?」
「···めろ···」
「高藤君···?」
「やめろ!!!止めろ!!!見るなお前ら!!!」
「ど、どうしたのよ高藤···急に···」
『···おねが···い···大神にって···言うから···やめて···高藤君···!!!』
『!!?』
私がこの前見た隣の高校の女子生徒が犯されてる映像、その映像が流れた瞬間高藤君の顔色が変わり急に態度が豹変した、そしてその女の子の口から出てきたのは今私の目の前にいる人物の名前···
「···高藤···君···?」
「っ···!!!」
「···随分と顔色が悪そうですね、高藤先輩」
『!!!』
場違いなほど物腰柔らかな声で全員が我に返り、その声を発したと思われる人物を見ると梨元君を壁替わりにして立ち上がる男の子が真っ直ぐ高藤君を捉えていた
「お前···なんで知ってるんだ···!!誰だお前は!!!」
「誰って、先輩は知ってるでしょう?あなたの罪を擦り付けられた1年、大神ですよ」
『!!?』
「あんたが大神!?」
「···ぁ」
その男の子の口から出た大神という名、それはこの高校で奇妙な噂を持つ人物の名前だった
「グッ···1年がなぜ···それに何をしにきた!!!」
「何をって、そろそろあなたに着せられた悪名を返しにきたんですよ」
「悪名って···それよりあんたあたし達に何したの···?」
「えぇ、高藤先輩のここ数日の行動を見せたんですよ、これを使ってね」
「?」
大神が右手に持っていたものを高らかに見せる、それはどこからどう見ても学ランに付いている普通のボタンだった
「···なんだそれ?」
「高藤先輩の学ランのボタンですよ、先輩とぶつかった時にくすねたんです」
「え、でも高藤君の学ランにはボタンがついてるじゃない!!!」
「それは本当についてたやつじゃ無い、こっちが用意した別の物です、ボタンなんて学ランを買った時に予備でついてくるじゃないですか、そのうちの1個を渡したんですよ」
「な、何のために···」
「今しがた先輩達も見たじゃないですか、ボタンの見た記憶を」
「···何を言ってる···!?」
「···学校で流れてるオレの噂には色々と解釈が足りない、気を失ったあとに近づいた者がくわれるってのは大きな間違いだ、···オレはモノの記憶を辿ってるだけ、食われるっていうのは高藤先輩があとからつけたデタラメだ」
「!?」
モノの···記憶···?
「···お、おい大神、お前頭大丈夫か?」
「···まぁ、そういう反応が正常でしょうね梨元先輩」
「あ、あぁ···、···オレお前に名前教えたか?」
「なら」
「···お、おいなんだ大神···!!なんでこっちに···」
「···コケたと言うこの傷、この絆創膏がどういった経緯で貼られたのか見てみましょうか」
「お、おい待てやめろ···!?」
大神が指で座りこんでる高藤君の絆創膏を触りもう片方の手で地面を触る、さっきも見た光景だ
「···モノの記憶はヒトと違ってあやふやにはならない、もしこの絆創膏がもつ記憶が正しければ高藤先輩は本当に転んだのかって言うのもわかりますよ」
「っ···!?やめろ!!触るな!!」
「···ダイブ」
ブワッ···!!!
「···!!!」
『···チッ、思いっきり引っ掻きやがって···、まぁでも、辻本さんに似てたな···いつになったらあの人は俺のモノになってくれんだ···!!!クソっ···!!!まだ大神を利用しないとダメなのか···!!!』
『ハァ···ハァ···たか···とうくん···どうして···』
『···テメェよくも俺の顔に引っ掻き傷付けてくれたな···!!!』
『ごめ···なさ···』
『···まぁいい、あの人さえ手に入れればお前なんかもう用済みだ、いい初体験だったろ?好きな男に強姦されるなんてよ!!!』
『っ!!!?』
「···そんな···高藤君···」
「···」
「···これがあなた方2年生が一目置いてる者の本当の姿ですよ」
「···フッフフ···」
「?何かおかしい事でもありました?」
「いや···大神ぃ···お前にまさかそんな力があるとはな···」
ゆらりと立ち上がる高藤君はいつもの人当たりのいい高藤君ではなく、まるで悪魔が取り憑いたかのように目を見開き、口元は大きく歪ませて大神を捉えていた
「高藤君···どうして···?」
「どうして?そんなもん辻本さんが悪いんだよ、早く俺のモノになってくれないからな!!」
「私が···?」
「君が俺のモノになってくれないから、俺は朝からずっと君と一緒にいるっていうのに!!!他の女は俺を見るのに!!!どうして君は俺の方を向かない!!!」
「朝から···って事は、あんたがトッキーにキモいメッセージを送ってたの!?」
「キモいとは心外だな、朝の挨拶ぐらい普通にするだろ!!!」
「···高藤お前···!!!」
「···」
「···やっぱり昨日のあなたの告白、私受け入れられないわ」
「な、どうして!?俺はこんなに君を愛しているのに!?」
「自分の欲望の為だけに他の女子を···、自分の事を慕ってくれる女の子に平気で手を出す人の隣に立ちたくない、それに高藤君は私の事を好きでも私は高藤君の事を好きだって思えないもの」
「···そうですってよ高藤先輩」
「···ぇのせいだ···」
「?」
ドスッ···
「···え···?」
「···っ!!!」
高藤君が微かに呟いた瞬間空を切る音、その直後に鳴り響く鈍い音、まるで何かを刺したような···
一瞬止まった空気は···
「キャアアアアアッ!!!!!!?」
私に突っかかってきた女子生徒の声と···
「···高藤···先ぱ···」
「···ふふふ···ハハハ···ハハハハハハハハ!!!!」
右手に折りたたみ式のナイフを持ち、狂ったように笑う高藤君と···赤い血を流して倒れる大神の音で動き出した
「大神!!!」
「高藤あんた何やってんの!!!」
「···全部コイツが悪いんだ···コイツが何も口にしなければ俺はこの女をモノにできたんだよ···!!!」
「全員高藤から離れろ!!!怪我すんぞ!!!」
「和也!!!」
「オレは高藤を殴る!!!あいつの行動には一発殴んないと気が収まんねぇ!!!」
「高藤···君···なんで···!?」
「あんたもあいつから早く離れなさい!!!」
「で、でも高藤君が···」
「あれは高藤なんかじゃない!!!あんなん高藤の皮を被った狂人よ!!!いい!?あんたの望んでる高藤はもうこの世にいないの!!!わかったらとっとと逃げなさい!!!」
「大神···君···?」
「コイツは辻本さんのせいで···あんたが俺のモノにならなかったせいで死んだんだよ」
「···私の···せいで···?」
「辻本!!!高藤の言葉に耳を貸すな!!!」
「おっと近づくなよ梨元ぉ···近づいた瞬間俺は辻本さんを刺すからな」
「トッキー!!!立てる!?」
美優ちゃんが私を立たせようと触れた瞬間···
ゴッ!!!
「あぐっ!?」
「美優!!!」
「···汚い手で俺のモノ触んじゃねぇよ」
「高藤テメェ!!!」
「···さて辻本さん、君は俺が永遠に愛してあげるよ···死体を永久に保存させてドールみたいにして愛してあげるから···!!!」
「トッ···キー···!!!」
「あ···あ···!!!」
「辻本ぉおおおお!!!」
「俺のモノになれぇえええええ!!!」
···右手のナイフは確かに私に振り下ろされた、···でも不思議と痛みはいつまでたっても襲ってこない、人が死ぬ時ってほんとに痛みを伴わないんだ
そう一人で納得して、閉じてた目を開けると···
「···」
「···お···前···なんで生きて···!!!」
ナイフが私を捉える寸前、倒れていたはずの大神君が高藤君のがら空きだった股下に金的を入れ、ギリギリで空を切った
「···」
「ちっ···クソがァあああああああああああ!!!」
「···クソなのは···!!!」
ガッ!!!
「グブッ···!!?」
「てめぇの方だ高藤ォおおおおおおおおお!!!」
ガンッ!!!
「ガァッ!!!?」
「···人の幼馴染みとそのダチに手ェあげんじゃねぇよクズ野郎が···!!!」
大神君に気を取り乱された高藤君は梨元君に意識が向かず、そのまま顔面を梨元君に殴られ教室の壁に思いっきり当たって意識を失った
「···ナイスです、梨元先輩」
「お前こそ、つか腹大丈夫なのか!!?」
「···あー···無理です···」
「お、おい!!!」
倒れそうになった大神君を···
「···?」
「···大丈夫!?」
私はいつの間にか支えていた
「···ごめんなさいね、辻本先輩···」
「···私の方こそ、疑ってゴメンね···!!!」
「···別にいいですって、先輩が無事なら···」
「諦めちゃダメだよ!!!まだ大神君には···」
「···別にこれくらいじゃ死なないですって、先輩に借りたブランケット、まだ返してないし···」
「···やっぱり、あなただったのね···」
どこかで見覚えがあると思ったら、あの時道路の真ん中で倒れていたあの男の子だったんだ
「···あー···力使いすぎて眠い···一旦寝ます···」
「···うん、おやすみ···」
「···」
「ね、ねぇトッキー?その子もしかして···」
「···大丈夫、ほんとに眠っただけみたい」
「···とりあえず、救急車呼んでコイツをしょっぴいて貰わねぇとなぁ」
「そうね、じゃあんた」
「?な、なんですか···?」
「今すぐ職員室から先生一人呼んで事の状況を全部正しく話してこのクズ野郎にお灸をすえてやんなさい、それがあんたが高藤にできる最後の奉仕よ」
「私が···?」
「···こんなクズ野郎の事を慕ってたことに後悔してんじゃないわよ、どうせすぐにこいつの事なんか忘れて新しい人が現れるって」
「で、でも···」
「···あんたが後悔したってコイツにはなんも響かない、本当に好きな人ってのは後悔した時にちゃんと話を聞いてくれる人の事よ」
「美優、お前怪我はないか?」
「あたしはへーき、伊達にバレーやってないわよ」
「関係ないだろうが、あ、ここ切れてんじゃねぇか」
「え、嘘でしょ!?」
「···もう一発殴んねぇと気がすまねぇなコイツ」
「それはいいから梨元君!!!美優ちゃん!!!大神君の止血手伝って!!!」
「やっべそうだった!!!大神お前しっかり生きろよ!!!?」
「ね、ねぇ美優ちゃん!!!これどこをどう縛ればいいんだっけ!?」
「とりあえず胸元押さえて横にさせなさい!!!」
···それからすぐに先生がやってきて大神君には応急処置を施し救急車を呼んでくれた、なお、高藤君は今回の件と隣の高校の女子生徒から被害報告も重なって退学処分、そのあとすぐに強姦、殺人未遂で逮捕された
「···」
「おーいトッキー、トッキーってばー」
「ふぇ?美優ちゃんどうしたの?」
「全く、あれからもう1週間たつってのにずっとボーッとしてるわね」
「うん···だって大神君まだ帰ってきてないみたいだし···」
あれから時間が流れ、高藤君の事件が既になりを潜めた学校には大神君の噂もいつの間にか無くなっていた
「···にしても大神のあれどうなってんのかしら?」
「モノの記憶を見る事だっけ?」
「何そのSFみたいなの、普通じゃありえないでしょ?」
「ま、まぁそうだね」
「···でも俺達は確かに目の前でそれを見たからな」
「おっすー和也」
「おう、···」
「···なによ」
「いや、顔の傷だいぶ消えてきたなって」
「え、あんたあれからずっとあたしの顔見てたの?怖っ?」
「なんでだよ!!!俺は心配してんだぞ!?お前のその傷が原因で嫁の貰い手が居なかったらどうしようとか···」
「あんたはあたしのお母さんか!!!」
「ふふっ、ほんと梨元君と美優ちゃんって仲いいよね」
『よくない!!!』
「···クシュン!!」
「あんたまだブランケット返してもらってないの?」
「だって、まだ大神君入院してるから···」
「まぁそれもそうか、そんで辻本、新作はできたのか?」
「あ、ちょっと待って、多分今日の活動で出来ると思うから明日まで待ってて」
「わかった」
「···あたしも読んでみよっかな」
「あ、じゃあ短くて美優ちゃんにもわかりやすい本明日持ってくるね?」
「おい待て、それは本を読めないあたしに対する嫌味か?」
「え、違うって、美優ちゃん長文苦手だって言ってたから、だから待って?その手をワキワキすんのやめて?梨元君いるから!?」
「おるぁ!!!あたしを馬鹿にすんのはこの胸かァああ!!!」
「いーやー!!!?梨元君見ないでぇえええええ!!!?」
・
・
・
・
・
・
「···ふぅ、やっと解放された···」
あれから放課後までずっと美優ちゃんは根に持ってたらしく休み時間になる度に美優ちゃんにセクハラされた、···美優ちゃん、多分私が美優ちゃんより大きいのは美優ちゃんのせいだと思う
そう脳内美優ちゃんに問いかけ、私は新作を完成させるために部室まで足を運んだ
「···梨元君には今日完成するって言ったけど、多分今日無理かな···まぁできるとこまでやってみよ」
今日中に完成させることを目標に掲げ、部室を開けようと鍵を差し込み、回す
「···あれ?」
鍵が···開いてる···?
「···私昨日鍵閉めたよね?今日部室に来たのこれが初めてだし···誰か職員室のマスターキーでも使ったのかな?」
不思議に思いながらも、差した鍵を抜いてドアを開けると···
「···え」
「···お、やっと来たんですか、辻本先輩」
「え、大神···君···?」
部室にあるソファには、あの日高藤君から私を庇い重症を負った大神君が学ランを着て座っていた、刺された所は軽く修繕してある
「待ちくたびれましたよ」
「ちょっと待って、どうして大神君が文芸部の部室にいるの?というか学校には来てないんじゃなかったの?」
「学校は今日から復帰です、というか先輩オレの生存を非常階段にいるかどうかで確認してますよね?」
「だってあそこにいるのが大神君なわけだし」
「···まぁもうあそこにいる理由は無くなったので」
「あ、そうなんだ」
「それより先輩、一つ聞いていいですか?」
「なに?」
「先輩って···オレと離れててもオレの見たモノの記憶を見れますよね?」
「···へ?な、なんで···」
「非常階段で高藤先輩のボタンの記憶を見てた時、一応見たあと周りを確認してたんですけど、二回見たあと必ず先輩が動揺してるのが見えたんで、多分見えたんじゃないかって」
「···じゃあゴミを出した時といちごみるくを買った時に見えたのは、あなたが見てたから···」
「···普通じゃ近くじゃないと見せることが出来ないのに離れてても見れるなんて···」
「大神君···?」
「···先輩、オレ文芸部入っていいですか?」
「···え?」
「辻本先輩には迷惑かけないんでお願いします、オレをここに置かせてください!!!」
「え、えーっと···私部長じゃないけどいいのかな···」
「···」
「···じゃあ改めて名前を教えてもらえる?」
「1年の大神陽矢です、以後お見知り置きを」
モノの記憶を見れる男の子と文芸部の私、これが後に二人の運命を変えることになるのは
「···あ、そうだ、辻本先輩ブランケット返します」
「あ、うんありがと」
今の私達は知らない