表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/35

24・復讐

「復讐?」

「ああ――レイナは元々《四大財閥フォースサミット》はもう一つを加えた《五大財閥フィフスサミット》だった、っていうことは知っているか?」

「……聞いたことはあるわね。でもそうだったのは一瞬だけ。すぐに《五大財閥フィフスサミット》に名を連ねた一族は滅びたんじゃなかったの?」

「その幻の一族の名は――竜頭司」

「竜頭司……え、まさかあんたっ!」


 驚愕によってレイナの瞳孔が開いた。


「そうだ。俺は元々、《五大財閥フィフスサミット》の一つだった」


 だからこそ――レイナやむすびのことを家名で呼びたくなかった。

 この感情は嫉妬心かもしれない。

 元々は竜頭司も《五大財閥フィフスサミット》として、名を連ねていた、という誇りからだったかもしれない。


「それで……どうして、竜頭司が財閥から抜けることになったのか。その理由について知っているか?」

「……確か理由は不明のはず。だけど新興の財閥だったからね。どうせ《魔敵エネミー》か何かにやられて、一族が壊滅したんでしょ?」


 それこそ、今の桜乱華みたいに。

 とレイナは皮肉げに続けた。


「《魔敵エネミー》にやられた。成る程。それは部分的には正解かもしれない」

「どういうこと?」

「竜頭司一族は一人の男によって滅ぼされたんだ。その一人の男とは――俺の兄貴。名を竜頭司夜枷りゅうとうじ よかせと言う」

「夜枷? 何処かで聞いたことがあるような……って」


 レイナの声がさらに大きくなった。


「夜枷ってあのヨカセっ? 現在、関東魔術軍で最年少で師団になったヨカセ師団長? 一人で《魔神》レベルの《魔敵エネミー》とも張り合えるとも言える、生ける伝説ヨカセ師団長っ? それがあんたのお兄さんって言うの?」

「そうだ……信じられないのも無理はない。何故なら兄貴は過去を全て消したからだ」

「ヨカセ師団長の経歴は全て謎に包まれている、と言われているわ。唯一分かっているのは、学園《センター》に在学したことがある、ってことだけらしいけど……まさか、竜頭司一族で、アサトのお兄さんだなんて……とてもじゃないけど信じられないわ」

「だけど――真実なんだ」


 レイナの目を見て言葉をぶつける。

 透き通ったキレイな瞳に背後の三日月が浮かんでいた。

 そんなレイナは俺の言葉を信じてくれたのか、


「まあ良いわ……ここで嘘を吐いても仕方ないから信じてあげる。でも、どうしてヨカセ師団長が一族を滅ぼさないといけなかったのよ?」

「それは――分からない」

「分からない?」


 十年前を思い出す。

 今まで優しかった兄貴。


 しかし突如、牙を向いて屋敷を魔術で全部焼き払った。

 さらには俺以外の父さんや母さん――皆殺しにしたのだ。

 あの時の血液と火炎の赤色だけが今でも瞳に焼き付いている。


「その時に、兄貴が俺だけを殺さずに聖剣《オルファント》だけを渡したんだ」

「だから、聖剣で魔術が消滅される理由もよく分かっていないのね」


 腰に差してある聖剣の柄を握る。

 こうしていると、冷静な自分に戻れるからだ。


「兄貴がどうして一族を皆殺しにしたのか。どうしてこんな聖剣を持っていたのか。そして――何故、こんな貴重なものを俺に渡したのか。全ての行動原理が不明だ。

 そうするためには、兄貴に問い質さなくてはならない。だけど兄貴は遠い場所に行ってしまった。

 だから俺は関東魔術軍に入隊してやる、って決めたんだ。遠い場所に行ってるなら、その高みまで俺が行ってやればいい」


 そんな決意を秘めて――魔術師としての才能が伽藍としたまま、俺はここ《イザナミ》に入区することになったのだ。

 全てを語り終えると同時に、ティーカップ内の紅茶がなくなった。


「そう。あんたにも辛い過去っていうのがあったのね」


 全て嘘だって断定することも可能だっただろう。

 だけどレイナは信じてくれた。

 真摯な表情で話に耳を傾けてくれていた。


「アサト――やっぱりわたしの盾はあんたしかいないわ」


 レイナの顔がさらに近付いてくる。

 レイナが俺の体に覆い被さるようにして、床に手を付いた。


「ちょっと、レイナ?」

「だってわたし達似てるじゃない。わたしは《魔敵エネミー》に。アサトはお兄さんに大切なものを殺された。

 だからわたし達、きっと良い《盟友チーム》になれると思うのよ。だからアサト……わたしの手を取って」


 ――唇がどんどん接近していく。


 静謐の空間。

 まるで時間が停止しているように感じられて。

 ただ近付いてくる唇を見ていることしか出来なかった。



 ――だってわたし達似てるじゃない。

 ――わたしの手を取って。



 ……ダメだ。やっぱり俺は……っ!


 唇と唇が触れ合おうとした瞬間。

 俺はレイナの両肩を掴んで引き離した。


「……ごめん。やっぱりレイナの気持ちには応えられない。

 俺はきっと失うことが怖いのだと思う。失うことが怖いから臆病になってしまう。そういうもんがあるヤツは、きっと弱いし兄貴には辿り着けない」


 俺が魔術的《無神経》であっても、可愛がってくれた兄貴。

 そんな兄貴でも俺のことを裏切った。

 兄貴、という大切な人間を――その瞬間、失ったのである。


「何よ!」


 そう言うと、レイナが怒り立ち上がった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ