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2・いきなり美少女と決闘ってテンプレ?

 ――魔術特区《イザナミ》。


 突如、現れた《魔敵エネミー》という異生物に対抗する『魔術師』を育成するために設けられた特区だ。


 この《魔敵エネミー》という侵略者は奇怪な技を使った。

 時には物理法則をねじ曲げて物体を操作したり。

 時には何もないところから火を生んだり。


 この世の理から外れた現象を引き起こし、人間達を襲い続けた。

 そのような《魔敵エネミー》が使う奇怪な技のことを、人々は魔術と名付けた。


 最初の数年は世界中の軍隊が相手にしても、《魔敵エネミー》に防戦一方だったらしいな。


 しかし――人類を舐めてもらっては困る。

魔敵エネミー》が使う魔術を分析し研究し――とうとう自分達でも使えるものにしてしまった。


 その魔術師を育成するための特区《イザナミ》はどんどんと拡張していき、今では人口十万人を超す。

 魔術師以外で、近未来的な都市風景に惹かれたアホが入居してくるためだ。

 さらに面積は四十キロ平方メートルに達する巨大都市だ。


 もっとも面積の殆どが訓練場として使われているため、人口は局所的に密集しているんだがな。


 さて――このような、巨大都市となった《イザナミ》には魔術師を育成するための学校。魔術学園が三つ設立されている。


 ――魔術北学園《ウィズダム》。

 ――魔術中央学園《センター》。

 ――魔術南学園《サーフェス》。


 俺が今年から通うことになったのが魔術学園《センター》である。


 魔術学園に入学出来る生徒は、中学を卒業したばかりのもの。

 俺達はこれから三年間で魔術の基礎を学び、国を代表するような立派な魔術師となるのだ!


 ……のはずだったが、まさか入学初日。


 こんなことになるとはな。


  ■


「俺は……ここで……何をしているんだ?」


 俺の目の前には、先ほど下着姿を見てしまった少女がいる。

 俺と少女は丸いステージの上に立たされていた。


 ちょっと右を見ると大きな電光掲示板がある。

 電光掲示板の右側には『竜頭司朝斗りゅうとうじ あさと』と俺の名前と顔写真が貼られている。


 さらに左側には『桜乱華玲菜おうらんか れいな』という名前と、不機嫌そうな少女の顔写真が。

 その顔写真と目の前にいる少女の顔は一致している。


『早速、桜乱華の天才の戦いっぷりを見れるとはね』

『桜乱華さん……ちっちゃくて可愛いね。後でデートに誘ってみようかな?』

『桜乱華の天才は、ウチ等の学園の首席候補や。お手並み拝見としよか』


 俺達を取り囲むようにして作られている観客席。

 そこから好奇な視線を飛ばし、口々に言葉を交わしている観客達。


「お前……結構、人気者みたいだな」

「わたし『お前』っていう名前じゃないのよ。ちゃんと名前で呼んでくれる?」


 ゴゴゴゴゴ、と少女の背景で火炎が踊っているように見えた。


「おうら……いやレイナ。もうこんな無駄な戦い止めにしないか? 一応、進言しみっけど」


『桜乱華』という苗字にはあまりに良い印象を抱いていないので、少し躊躇しながらも下の名前で呼ぶ。

 それに対し、少女――レイナは特に気にする様子もなく、


「嫌よ。それにこれは無駄な戦いじゃないわ。あんたを消し炭にする大事な決闘よ」

「俺が消し炭になることは確定なのかっ?」

「当然。まあ決闘自体は強制じゃないから、止めてもいいのよ。嫌だったら、始まってすぐに降参すればいいし」

「降参す――」

「光の速さで降参しようとしないで! ただし、あんたが負けたら覗きの容疑で自警団に突きだしてやるんだからっ」


 クッ……つまり敗北しても社会的に死を、敗北しても消し炭になるってことなのか! どっちかにしてくれ。


 さて――魔術学園は《魔敵エネミー》と戦う魔術師を養成する施設、という側面がある以上、机上の空論ばかりを勉強するだけではなく、しっかりとした実戦経験が必要となる。

 といっても、学園の生徒が魔術隊から要請を受け、《魔敵エネミー》の討伐に行くという事態は殆どない。あったとしても、一部の超成績優良者のみだ。


 そこで《イザナミ》では『決闘』制度というものが用意されている。

 ここでは決闘を承諾した生徒二人が、決められた場所・ルールの下で魔術を使い試合をするのである。


「いくら決闘中でも人殺しは犯罪だろ? お前も裁かれるじゃねえか」


 軽口を叩く。


「安心してください」


 と――俺とレイナの間に立つ、存在感の薄いメガネをかけた教師――もとい、この決闘の審判役がメガネの位置を直しながら言う。


「ここの決闘場では、魔術によって結界が張られております。

 この結界の内で戦う分には、いくら戦って傷ついても、一歩決闘場から外に出れば元通りになります。

 といっても戦いの際の痛み等の刺激は、全て現実世界と遜色のないものですので、あまりの痛さ・熱さによって精神をやられてしまい、廃人となる生徒もいるのですが」

「ご説明ありがとうよ。メガネ猿」

「ですが、そうならないために勝負の決着が付いたとこちらが判断すればドクターストップをかけますので存分に戦ってくださいね」


 一定のリズムで刻まれる審判の言葉。

 眼前のレイナはもう勝った気でいやがっているのか、腕を組んで不敵な笑みさえも浮かべてやがる。


 糞っ……! 舐めやがって!

 俺もこの魔術学園に入学したんだ。ほら、今だって観客席から黄色い歓声が聞こえ……、


『竜頭司……朝斗……? 誰だ、あいつ』

『何でも桜乱華さんを押し倒して、服を引っ剥がしたらしいよ』

『な、なんて破廉恥な! ……それにしても、竜頭司っていう苗字、何処かで聞いたことがあるような……?』


 変に話が脚色されているっ?


「人気者じゃない」

「そうだろ。スーパーの半額弁当並の人気だろ」


 ……まあ、分かっていたことであるが、観客の中で俺のことを知っているものはいない。

 それも当然のことなのだ。入学早々、名前が知られているレイナの方が異常なのである。


「さあ……そろそろ死ぬ覚悟は出来たかしら? さっさと始めるわよ」

「ああ。さっさと始めようぜ。ほら、ハイシャの予約があるからな」

「敗者の予約? あら、準備がいいじゃない」

「歯医者だ!」


 嘘だけど。

 こうやって息をしているだけでも面倒臭くなって頭を掻く。


『試合開始――!』


 審判が手を下げると同時に、ブザー音が鳴り響き戦いが開幕した。

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