エピローグ ~『金で買えないモノ』~
「ここは……どこでしょうか……」
「起きたか」
エスティア王国城の寝室で、山田はイリスの看病をしていた。彼女はエネロアとの戦いで傷つき、長い間眠っていたが、ようやく目を覚ましたのだ。
「旦那様が助けてくれたのですか?」
「エネロアや公爵は俺が倒したよ」
「アリアは無事なのですか?」
「ピンピンしているよ。今頃、回復したキルリスと一緒にパンを焼いているはずだ」
イリスはアリアが無事だと知り、安堵の息を漏らす。彼女にとって妹のアリアは山田と同じくらい大切な家族だった。
「ただエネロアは少し強く殴りすぎたせいか、まだベッドの上だ」
「早く治ると良いのですが……」
「俺たちと敵対したとはいえ、キルリスの姉だからな」
エネロアのためというよりキルリスのためにも早く回復して欲しいと、二人は心の中で願う。
「それと公爵は俺に殴られたことがトラウマになったらしくてな。二度と城から出ないとまで宣言したそうだ。公国が俺たちの敵になることはもうない」
公国の脅威が去り、魔王領とも平和的な関係を築けている。しばらく戦争の脅威にさらされることもないだろう。
「平和になれば旦那様とゆっくり過ごせますね」
「だな。平和だけでなく、順風満帆な国家運営ができれば、俺も早期リタイヤして夢の専業主夫生活をスタートできる」
「うふふ、旦那様らしいですね」
「そのためにも軍隊を強化し、財務状況を良好にしていかないとな」
平和は綺麗事で実現しない。武力と財力がなければ、大切な人たちを守ることもできない。
「俺はエスティア王国をより素晴らしい国に変える。そのためには他国の資産を買い叩かなければならない。きっと恨みを買うだろうし、イリスも危険な目に遭うかもしれない」
「旦那様……」
「だがそれでもイリスなら……どこまでも俺に付いてきてくれるよな?」
「もちろんですとも。私はあなたのお嫁さんなのですから」
最高の嫁は最高の笑顔を浮かべる。その笑顔は金で買えない価値あるものだった。
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