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第四章 ~『キルリスの兄、シーザー』~


 手分けして探すことになった山田は賭博場を虱潰しに回っていたが、そこで大きな問題点に直面する。


「赤髪の男が予想していたよりも多い……」


 赤髪の女性はキルリス以外一人も見かけていないほどに珍しいが、赤髪の男は数百人に一人の頻度で目に入る。山田は手当たり次第にキルリスの兄かと確認してみるが、まだ正解を引き当ててはいなかった。


「本当……どこにいるんだよ……」

「これはお兄さん。お久しぶりです」


 山田は闘技場の映像を映し出す鏡台の前で途方に暮れていたが、そんな彼に恰幅の良い男が声を掛ける。その男に山田は見覚えがあった。


「確か賭博士の――」

「リゼロです。以前も闘技場賭博の興行でお会いしましたね」

「エスティア王国以外でも仕事をしているんだな」

「はい。賭博場あるところにリゼロの姿あり。私はどこへでも出張しますよ……お兄さん、いや国王とお呼びすべきですかね」


 リゼロは出世しましたねと、揉み手で彼の機嫌を伺う。山田はうんざりとした顔で「好きにしろ」と言い放った。


「お兄さんは、今日もまた賭博で大儲けをするためにこられたので?」

「残念だが賭博は目的じゃない。実は探している奴がいてな」

「どのような人をお探しで?」

「フォックス家の男で、髪の色は赤、キルリスという妹がいるんだが、どこにいるか分かるか?」

「残念ながらそれだけの情報では……」

「そうだよな……付け加えるならとんでもないクズだそうだが……これだけの情報で分かるはずがないよな……」

「いえ、赤髪のクズなら心当たりがありますよ」

「ほ、本当か?」

「お兄さんの目の前。ほら、あそこにいる男です」


 リゼロは鏡台の傍にいる男を指差す。色黒の肌に赤髪の男が外れた賭博券をビリビリに破りながら、神はいないのかぁと叫び声をあげている。


「お近づきになりたくないタイプだな」

「なにせお兄さんの望んだ正真正銘のクズですからね」


 だからこそキルリスの兄である可能性が高い。山田は面倒事に巻き込まれる覚悟を決めて、話しかける。


「よぉ、随分と息を荒げて叫んでいるようだが、何かあったのか?」

「……あんたは?」

「俺は山田だ」

「俺はシーザーだ。これで俺たちは知り合いになれたわけだ」

「あ、ああ、そうだな」

「なら俺を救うために、援助してくれ」

「仕方ないな」


 息を荒げるシーザーに、山田は『空間魔法』から取り出した飲み物を手渡す。『空間魔法』に収納されたアイテムは時間経過の影響を受けないため、容器には霜が浮かんでいた。


「ありがてぇ。キンキンに冷えて……じゃねぇよ。俺が欲しいのは金だよ。なぁ、頼むよ、金を貸してくれよ。一生に一度の頼みだからよ」

「出会って三秒で一生の一度の頼みを使われたのはさすがに初めてだぞ」

「な、なんなら土下座しても……」

「兄さん!」


 シーザーを兄と呼んだのは山田と合流するために現れたキルリスだった。傍にはイリスの姿もある。


「兄さん、恥ずかしいから……やめてよね……」

「誤解だ。俺は一発当てるための軍資金を得るために……」


 二人のやり取りを横目に、山田は無事兄が見つかってよかったと安堵するのだった。



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