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第三章 ~『手に入れた報酬の使い道』~


 ライザックは山田と約束した通り、エスティア王国から引き返していった。ブルースは彼のことを非難したが、魔王領はあくまで集合国家でしかなく、決定権はライザックにあるのだと、その非難を一蹴した。


 ライザックを失ったブルースはエスティア王国への侵攻を躊躇していた。魔王領最強と噂されるライザックさえ撤退したのだ。本当にこのまま侵略を続けるのが正解かを検討していたのだ。


「戦争はとりあえず硬直状態にできた……金貨二〇万枚の報酬も得られたし、満足のいく仕事になったな」


 コスコ公爵から購入したダンジョンを別の資産家に流したことで得た利益の中から、山田に支払われた報酬が金貨二〇万枚だった。結果的に魔王軍の侵略を許すことにはなったが、ダンジョンの購入そのものは間違った判断ではなかった。


「金を手に入れたらすることは一つ。課金しかないな」


 山田は談話室の椅子に背中を預けながら、空中にコンソールを表示する。新しい魔法やスキルを手に入れるべく、項目を順番に眺めていく。


「剣術スキルなんてよさそうかもな」


 山田は剣を扱えない。だが異世界にいるのだから、華麗に剣を振るいたいと願うのも自然な願望だった。彼は剣術の項目を発見すると、詳細な説明欄に目を通していく。


『剣術。手足のように剣を振るうことができ、熟練者になると魔法を切ることさえ可能。また剣を装備していると、能力値に補正が掛かる。補正値は熟練度に応じて異なる』


「ライザックが俺の魔法を弾いたのも剣術スキルのおかげらしいな。だが……」


 剣を持ち歩かないといけないのが面倒だった。山田は剣術スキルの購入を保留にして、他のスキルに目を通していく。だが欲しいと思えるスキルに出会うことはなかった。


「課金ではなく、財テクもありかもな」


 山田は魔法やスキルではなく、株などの資産を手に入れるべきかもしれないと思考を切り替える。


「流動性の高い株を買えば、いつでも現金化できる。買値と売値の差額を得るだけでなく、配当金も手に入るしな」


 配当金は株の持ち主に対し支給される利益の配分であり、一年間に二回支給される事が多い。最も法律で回数が定められてはいないため、一年間に一回の会社もあれば、逆に四回の会社もある。ちなみに日本企業だと年二回が基本だが、アメリカの企業では年四回の配当金を出すのが一般的であるため、どの国の文化に従うかがその企業の配当回数を決めていると云われている。


 なら配当が高い会社の株を購入するにはどうすればいいのか。そのために重要な藩残材料が配当利回りである。


 配当利回りは株価に対する配当の割合で、五パーセントで一〇〇円の株券を購入すれば、一年間に五円の配当金が貰える計算になる。


 つまり配当利回りが高い企業の株券を購入すれば、配当でウハウハの不労所得生活ができるのだ。ちなみに高配当の基準は二パーセントからを指し、アメリカの企業だと四パーセントからを指す。投資家たちがアメリカに資金を集中させる理由の一端が垣間見える数字だった。


「だが単純に配当利回りの高い株券を買えば良いわけでもない……」


 配当利回りが高くなっている場合、本当に利益が出ているのか、それとも株価が暴落しているだけなのかを判断する必要がある。


 例えば配当金を一株当たり五円出す企業があるとする。株価が一〇〇円だと配当利回りが五パーセントに、株価が五〇円だと配当利回りが一〇パーセントになる。つまり株価が下がれば下がるほど配当利回りは大きくなるのだ。


 株価は下がり続ければいずれ終わりがやってくる。底値に達し、会社が倒産すれば株は紙切れになるので、慎重に投資をしなければならない。


「旦那様、少しよろしいですか?」


 イリスは扉を開けて入室する。いつもと変わらぬ柔和な笑みを浮かべる彼女を見て、山田は新婚旅行を途中で中断したことを思い出した。


「魔法やスキル、株を買うより、まずは埋め合わせを優先しないとな」

「旦那様?」

「なぁ、イリス。今度二人で――」


 能力や資産よりもイリスの愛情の方が何倍も価値がある。山田はイリスを喜ばせようと、埋め合わせのプランを考えるのだった。


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