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第三章 ~『審査会と公国最強の騎士』~


 強者を探すための審査会は城下町の中央広場で開催されていた。会場には玉座に座る公爵と、傍に控える銀色の鎧を身に纏った騎士、そして取り囲むような民衆の姿があった。


 公爵は獅子のような金色の髪と鋭い眼つきが特徴的だった。彼は民衆を威圧するように視線を配らせる。


「これより審査会を始める。腕を確かめたいものは名乗りをあげよ」


 白銀の騎士が一歩前へ出ると、鞘から剣を抜き、それを天高く掲げる。すると様子を伺っていた民衆がヒソヒソと騎士に対する言葉を交わす。


「ケインズに挑む奴がいるのかよ……」

「公国最強の騎士だぞ……」

「公爵は秘薬を渡す気はないらしいな」


 民衆は誰もがケインズには勝てないと諦めていたため、名乗り出る者は現れない。しかしただ一人、山田だけは民衆を掻き分けて、前へ進む。


「俺が挑戦する」


 山田が姿を現すと、勇気ある挑戦者に拍手が送られる。民衆の中から「あいつどこかで……」と疑問の声が挙がるが、まさかエスティア王国の国王がこんな場所にいるとは思わず、疑問を押し殺した。


「勇気ある挑戦者よ。よくぞ名乗り出た。だが私の力を知り、世界の広さを知るといい」


 ケインズは消えたように高速で動くと、山田に剣を振るう。峰打ちの一撃は命中しても死ぬことはないが、山田は受けるのも癪だと、その剣をギリギリのところで躱す。


「おい、あいつ今……」

「ケインズの剣を躱したぞ!」


 民衆が歓声をあげると、その声に釣られて野次馬たちが集まってくる。もしかすると大番狂わせが起きるかもしれないと、二人の戦いに期待の視線を向ける。


「名乗り出るだけの実力は備わっていたということか……だが私が本気になれば――」


 ケインズが山田を認め、本気の一撃を放とうとした瞬間、彼の額に強い衝撃が奔る。山田はケインズの目に映らないような速度で近づくと、強烈なデコピンを放ったのだ。


 ケインズは吹き飛ばされて、商店の壁に激突する。再起不能だと証明するように、彼は白目を剥いて気絶していた。


「嘘だろ、ケインズが負けたぞ!」

「あいつが負けるなんて信じられない!」

「新しい公国最強の騎士の誕生だ!」


 勝利した山田を称えるように民衆は歓声をあげる。その歓声を上機嫌で聞いていた公爵は玉座から立つと、秘薬を手に、山田の前に立つ。


「新たなる勇者よ。私も公国で新たな戦力が見つかり嬉しいぞ。まずは我が王家に伝わる秘薬を授けよう」

「どうもな」


 山田は赤い液体の詰まった瓶を受け取ると、それを『空間魔法』で作り出した異空間に収納する。


「これだけの実力者だ。是非とも我が軍に欲しい」

「それは無理だ。俺はこの国の人間ではないからな」

「旅人でも構わぬ。移住先はこちらで用意し、望むだけの報酬を与えよ――」


 公爵は途中で言葉を詰まらせて、ジッと山田の顔を見つめる。


「やはりどこかで見た顔だ……」

「俺とエドガーの決闘放送を観たんだろ」

「エドガーとの決闘で……ま、まさか、お前は、エスティア王国の――」

「国王だ」

「なっ!」


 山田の正体に民衆はざわめき始め、公爵も青ざめた表情を浮かべた。


「すまないな。自国の人間でないと知り、落胆させ――」

「エスティア王国の国王よ。お主に資金援助を頼みたい!」

「え?」


 戦士としてではなく、銀行員としての山田への期待に、公爵は目を輝かせるのだった。



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