プロローグ
……ある日を境に、世界の変質が始まった。
それは国際情勢が著しく変わったわけでも超巨大隕石が近付いてきたわけでもない。
いや、作り替えられてる最中だと言うべきなのかもしれない。
それが周知されたきっかけは、生物のステータス化、自分の体力やスタミナ、力が等がすべて数値として表示されるようになった事だ。
幸い、ほんの3日でその事態は収束されたそうだが不思議なことはそれだけに留まらなかった。
あるときは人々が魔法を使えるようになったり人生の様々なタイミングで選択肢が出る、言葉が捻り曲がる。などなど様々な出来事が発生した。
幸いなことにいずれの事態も、いずれは解決する類いのものらしく人々がパニックから回復する頃にはさりげなく元に戻ってたりしている。
迷惑な事だ。噂ではこの事変の際の能力が消去されずに残っている人もいるらしい。
そんな人達の事を……何て言うんだったっけ?
まぁ、そんなことで正直な話人々は異変というものに慣れきっていた。
俺もそのうちの一人だ。
もちろん世には世界滅亡の予兆だとか危機だと言う人もいるが個人的には違うと思う。
これは世界が成長する証なのだ。幼虫が蝶になるためにサナギになるように、人が成長するために混乱期を迎えるように世界が成長するための準備が行われているのだ。
俺はそれを見ていたいと思っていた。世界が準備を終えて、大人に成長するその瞬間を待ちわびていた。そのためなら世界にどんな変化が起きてトライ&エラーを繰り返していても見守りたいと
そう。思っていた。
しかし、それはある日を境に叶わないであろう夢となる。
もしかしたら他人事だと思っていたのかもしれない。世界は自分には大きな影響を与えないと自分に特別なことは起きないだろうと鷹を括っていたのかもしれない。
所詮人は巻き込まれる存在。どうあがこうと、こうなる運命から逃れられなかったのだろう。
それは唐突に起きた。
魔方陣が浮かんだ訳でもなく異界への門が開いたわけでも小さな命を救うためにトラックに引かれたわけでもない。
気付けば俺は、異世界に誘拐されていた。