第8話 チーム
優はロキの悲しそうな顔を見た。その時のロキの表情を優は見覚えがあったのだ。それはこの世界の全部が信じられないような感じだった。そして、それは異世界に来る前の優の表情によく似ていたのだった。
優自身も小学生のときはクラスでも一番の人気者だった。だが、中学生のときにクラスで調子に乗ってしまい、クラスでいじめられて、不登校になった。
そして、優は思った。優はこの世界に来て、エリやミカに会って救われた。ロキにはそんな存在がいままでいなかったのだ、優は自分がロキとチームを結んで彼女を救いたいと思った。
「僕とチームを組んでくれませんか」
優は大声で言った。ロキは信じられない顔をしていた。
「私でいいの」
ロキは不安そうに言った。
「僕はロキさんがいいんです。ロキさんと一緒にチームを組みたいんです」
優は真剣な顔をしていた。
「優さんは優しい人だわ。私以外の人とチームを組んだほうがいいわ。それじゃ、私は失礼させてもらうわ」
ロキは席から立ち部屋から出て行った。優はロキを出て行くのを見て、時計を覗いた。優達が話し始め四時間も経っていた。もう夕方になっていた。
優は自分の部屋に戻った。
優は疲れていたのでベットに寝転んだ。
そのころ
ロキは自分の部屋で泣いていた。まさか、今日会ったばかりの少年にチームを組んでくれと頼まれたのだから、チームを組むということはその人物を学園で最も信頼をするということなのだ。
「あの子は私と組んでいいはずなんてない。私なんかよりいい子がいるはず」
ロキは優のことを気に入っていた。だからこそロキは自分なんかと組むとこの学園で例外を除いた友達しかできないと考えていた。
「やっぱり、あの選択は正解だわ」
ロキはベットに寝転んだ。
優はそれから毎日ロキに会って、頼んだ。だが、ロキはいつも断っていた。
優の気持ちは変わらないでいた。
そして、対抗戦の締め切りまでのこり一週間前のことだった。
「なんで私なんかを毎日誘うのかな」
ロキは一人で屋上にいた。
「私なんか」
「その子、なんか可哀想」
ロキの後ろから声が聞こえたので、声の聞こえる方を向くと、ドア付近に桃色の髪をした、赤い服の背が高い少女が立っていた。
少女はロキの方に行った。
「なんだフーかぁ」
フーと呼ばれた少女は笑顔をしていた。
フーはロキの事を唯一信用している友達だ。本名はフーベン・トルテ、学園では竜の姫と呼ばれている少女だ。体格はバストを除きロキと同じだった。
「たぶん、その子はロキの裏面を見ているんだよ。私のようにね、だからこそ私はその子の気持ちがなんとなく分かるなぁ。一度理由でも聞いてみてあげてもいいんじゃないかな」
ロキはフーベンの話しを聞くと屋上から降りた。すると、優が階段の下にいた。
「僕とチームを組んでください」
優はロキを見ると、いつも通りロキに頼んだ。いつもならロキはすぐ断って離れるけど、今回は違った。ロキは優に聞いた。
「今日でもう二週間も毎日頼んで、なんで私なんかとチームを組みたいの」
ロキは優に聞いた。
「ロキさん、僕はロキさんと一緒に対抗戦に出てみたいんです。僕はこの学校に来て知り合った人のなかでロキさんが一番強い人だからです。どれだけ、みんなに嫌われいても耐えて頑張っているロキさんだから、僕はチームを組みたいんです」
優はロキに覚悟をこめて言った。ロキは優の言葉を嘘だとは思わなかった、それほど優の目は真剣だったから。そして、ロキの目から塩辛い水が流れた。
「私でよかったら、どうぞよろしくおねがいします」
ロキは涙を拭いて笑ってみせた、優はロキのことをやっぱり強い人間だと思った。ロキさんの魂は強い、優は自分と重ねそう思った。
そのころ、学校の裏側では一人の少年が来ていた。
「おまえがシルク・オルストラルかな」
少年の前に三人の白いマントに全身を隠した人間が立っていた。
「そうだが、自分になんか用があるのかな、これでも自分は忙しいん」
少年が話していると後ろから衝撃がきた。
実は、白いマントの人間は一人では無かったのだ。それに少年は気がつかず、胸を剣で刺されて、前かがみに倒れて気が失った。
だが、少年は聞いたのだ。少年が気を失う直前に白いマントは何かを言ったのだ。
それから、しばらくすると、少年は学園の先生に発見されて保健室に運ばれた。
少年が目を覚ましたのはそれから何日か過ぎた日だった。
その次の日、学園では漆黒の魔女が初めてチームを組んだことが話題になっていたのだが、午後もう一つ新しい話題でもちきりになった。