第11話 正式な契約
優と平天が屋上に着くとそこには一人の茶髪の少女が本を読んでいた。
少女の背は優とほぼ同じぐらいだった。
優は彼女の近くまできたのだが彼女は一向にこっちを見ない。
「失礼しますが、少し聞きたいことがあるんですが」
優は失礼そうに言ってみても彼女は何も言わなかった、彼女は本に集中しているみたいだった。
しばらくすると彼女は言った。
「いつまでいるんですか、ワタシは本を読むので忙しいんですけど」
少女は優がいたことに最初から気がついていたのだ。そして、無視をしていたのだ。
「ごめん、聞きたいことがあるんだけどここで本を読み終わるのを待っていてもいいかな」
優は少女を怒らせないように慎重に言ってみた。
「絶対に嫌です。早くここからいなくなってください」
だが、優の問いに彼女は早くここから出て行けという空気を出しながら目を本から離さずに否定した。
「ふざけんなよ、混天。あたいのパートナーになんて言い草だ。それに一度ぐらい本から目を離してこっちを見ろ」
少女の態度を見て、平天はついに顔を真っ赤にして怒っていた。
優は平天が怒っているのを見なくても分かった、声がいつもと違いドスをこめていたからだ。その声がした瞬間、平天の恐ろしさを感じた。
だが、優は平天が怒ったことに驚いた。平天はいつでも笑って楽しんで、怒らないイメージがあったからだ。それなのに、たかが態度でここまで怒るなんて考えてはいなかったのだ。
「おまえら、ワタシの正体をなぜ知っている」
少女は怒りながらこっちを向いた。
だが、少女は平天を見ると急に顔を青くして汗を大量に流していた、まるで蛇ににらまれた蛙そのものだった。それを見て平天は怒るのをやめて笑顔になった。
「もしかして、お姉」
少女は平天に向かってそう口にした。
「そうだが」
平天は自信満々に言った。どうも彼女が平天が言っていた義妹らしかった。
「なんでお姉がここに」
少女は不思議そうに平天に聞くと、平天は笑いだした。
「あたしはそこにいる優に呼ばれてここに来た、そしてあたしは優と契約を結んだ。条件はあたしの義妹を探し契約を結べってね。その条件を呑んであたしはそいつと契約を結んだ。混天、おまえも優と契約をしろ」
平天は少女に向かって言った。優は驚いた、まさか平天から契約の話しが出るとは思っていなかった。
実は平天はいままで、優の事をずっと観察をしていた。最初は優が義妹の情報を手にいれたら、すぐに裏切って逃げようとしていたのだが、優の事を見ているうちに優のことを気に入ってしまっていたのだ。
「お姉がそこまで認めるなんて」
少女はまるで信じられない物を見たような顔していた。
「どうすんだ、ここで優と契約をするか?」
「お姉が認めた相手だ、ワタシも契約を結ぶよ。ワタシは混天だ、これからよろしく」
混天は優の方に近づいた。優の背中を服越しで文字を書いた。文字を書き終わると背中が凄く熱くなったのだが、優は今回は気絶をしなかった。
「優これであたしとも正式に契約だ」
平天は笑顔だった。
優は契約を結べたことが嬉しかった、なぜならこの学園の生徒は大体がすでに正式な契約を結んでいる。だから優はついに彼らと同じ所まで来たような感じがしたからだ。
「あたしと混天の事を教える、だから一度部屋に戻ろう。この学校ではパートナーの事はあまり教えない方が良いらしいからな」
『はい』
二人は平天に返事をした、二人の息は合っていた。
「平天さん、ミカも呼んでもいいですか」
優は平天に聞いた。
「あたしもあいつは呼んだ方がいいと思う。あと、あたしの事は平天じゃなくてモルと呼んでくれ、敬語もいらない」
「わかったよ、モル」
優は言われた通りに呼ぶとモルは顔を赤くした。
そして、三人は学園室にミカを呼びに行った。
学園室の前に行くとアキラが立っていた。
「おまえ、気をつけろ。この学校にはまだ化け物と呼ばれている人間が沢山いるからなぁ」
アキラは優に忠告をするとそこから離れて行った。
優はアキラの忠告を心にしまって、学園室のドアを開けた。
「きゃぁぁー」
そこにはクルミが下着姿で立っていた。
「これは勘違いなんだ」
優は顔を真っ赤にして否定したのだが、クルミは一向に信じなかった。
「覗き魔め、あたいがやっつけてやる」
クルミは優の方に下着姿のまま向かっていたのだが、クルミは何かにつまずき優の方に倒れた。優はクルミを助けるつもりで手を出したら間違って胸を触ってしまった。
「これは違う。ごめんなさい」
「ヘンタイ」
優はクルミに殴られその場に倒れた。