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オレガノが『ランドオブグローリー』のメンバーと出会ってから7日経ち、ようやく目的地の1歩手前である49階に辿り着いた。
5~6人のパーティーが49階まで到達するのに、平均して10日かかるので驚異的な速さといえる。
これは、商業ギルド『ストーチカ』で販売している地図の通り迷いなく進めたというのもあるが、アニスの類まれなる能力によってオレガノとクローブ達が上手く連携して戦えたというのも理由の1つだろう。
彼らが居るのは50階へと続く階段がある部屋、そこへ入る手前の通路だ。
部屋の前には屈強そうな冒険者が立っており、彼とオレガノ達が会話しているところだった。
「なるほど。お前達もレイドバトルの話を聞いて来たのだな。
レベルもあまり下げることなくここまで来られたのなら、実力は十分だと言えるな」
あ、言い忘れてた。
塔のモンスターは「一定より上のレベルの者は襲わない」という習性がある。サーベルウルフのような例外も存在するが、レベルが高ければ高いほど、低層階を自由に歩きまわれるのである。
後付けじゃないよ。ほんとだよ。
「戦闘が始まるまで8日ある。それまで不便だとは思うが、中でゆっくりしていってくれ」
「ういーっす」
「ありがとうございます」
クローブとアニスが返事をし、部屋へと入っていく。
この部屋は冒険者達の間で『フリールーム』と呼ばれており、モンスターが近寄らない、出現しない、安全な場所だ。
中ではちらほらと冒険者が見え、武器の整備をしたり寛いでいたりと思い思いのすごし方をしている。
「あと8日か…随分と早く来ちゃったね」
「暇ねー」
「ねーっ」とサフランに返答するアニス。あれから随分と打ち解けたようだ。
「うふふ。じゃあトランプでもすればいいんじゃないかしら?」
「お、トランプやっちゃう?クローブさん、ちょーつおいよ?」
「トランプ?なにそれ?」
「トランプはこのカードの事ね。これを使っていろんな遊びができるのよぉ」
1セットのカードを取り出し答えるエシャロット。これはつい最近王都で作られたもので、あまり知名度がないためアニスが知らなかったのも無理はない。
「とりあえずババ抜きからやってみましょうか?」
「お、ババ抜きなんてしちゃっていいのかなー?クローブさん激つよだよ?」
「はぁー、そんなこと言って、あんた大概2位ばっかじゃない…」
「なんだかおもしろそう!オレガノさんも、一緒にやりましょうよ!」
「いや、俺は…」
「もうっ、いいから早く!」
オレガノの腕を引っ張っるアニス。かなり彼の扱いに慣れてきているみたいだ。
こうして一行は暇をもてあますことなく8日間を乗り切ることができた。
ちなみに周りの冒険者も興味を示し連日トランプ大会が開催されたことは、また機会があれば話すとしよう。






