20
オレガノは打ちひしがれていた。
事の発端はつい先ほどのことである。
オレガノがフロアボスを倒し宿へと戻ってから数日、それまではよかった。
彼は筋肉痛で動けないのをいいことに、妹からの甲斐甲斐しい看病を受けていたのだから。だらしなく顔を緩めて。あーんもしてもらっていた。
つまり彼が落ち込んでいるのは、筋肉痛が治まったこの日に原因がある。
「今までありがとう。筋肉痛はもう治まったようだ。
だから、その、きょ、今日はどこかへ出かけようか…?」
酷く緊張した様子で妹を誘う兄の図。
「あっ、ごめんなさい。さすがにそろそろ教会へ行かないといけませんから…」
「えっ…」
「また今度いきましょうねっ!」
「あ、ああ…」
という一幕があったのだ。
彼はいつも通りに妹と一緒にいられるものだと思っていたらしいのだが、彼女にも当然予定というものがある。その日は教会に出勤する日だった。
むしろ教会へはほぼ毎日行かなければいけないのだが、兄のために数日休みを貰っていたのだから彼女の兄想いも相当である。気付かないのは兄だけか。
オレガノは打ちひしがれていた。
いつも兄の後ろを付いてきていた妹に、兄よりも優先することがあったと知って落ち込んでいるのか。それとも妹の成長を素直に喜べない自分を憂いているのか。割とどっちでもいい。
妹のこととなると途端に精神が不安定になる男である。
「これが兄離れというものか…」
違うと思う。
「はあ…俺も出かけるか…」
◆◆◆
ふらふらと覚束ない足取りで島の北西、その名も『北西ブロック』と呼ばれる冒険者に必要な物を売っている店が多いエリアへと移動する。
彼が向かう先はメモリーズコアを販売している店だった。前回の塔挑戦前に立ち寄った店である。コアを販売している店は他にもあるのだが、ここが彼の行きつけの店なのであろう。
「いらっしゃー…どしたのー?今日は特に怖い顔だぞー?」
この男はどんな時でも怖い顔をしているらしい。
「…なんでもない。それより新しく入荷していないか?」
「んー…新しいコアはないなー」
「そうか…」
「おー。またどうぞー」
特に収穫はなかったようで、次は奥まった場所に位置する店へ向かうようだ。
そこは冒険者なら必須と言われているポーションを販売する店だ。こちらも別のところに同じような店があるのだが、彼なりにこだわりがあるのかもしれない。
店の看板には『RuINeS』と書いてある。大昔の言葉で破滅を意味する言葉と発音が似ているが、全く関係はないらしい。
「いらっしゃい!」
「初級8に中級1つあるか?」
「それはー…?
……ジャカジャカジャカ……あるよーっ!」
なかなか個性的な店である。
一応説明しておくと、ポーションには初級、中級、上級、最上級と種類があり、一般的な冒険者や騎士の収入なら中級であっても高級品である。
塔に挑戦する冒険者は一般的なそれよりも収入は上であるが、それでも初級が大半で、緊急用に中級をいくつか所持しているくらいだ。
上級、最上級にもなると塔でもトップを争っているような者でないと高価すぎて手が届かない程だ。だがその効果は高く、特に最上級は回復魔法でも治せない深い傷でも治すことができると言われている。
とはいっても普通の街にこのような物を置いている店はない。売れないのだから当たり前だろう。最上級まで取り揃えている店があるのは、王国の中でもこの島くらいだ。あとは王宮に備品があるくらいか。
買い物を済ませて店から出たオレガノは、何かに気付いたのか足を止める。
「しまった…時間を潰すのを忘れていた…」
普段どおりに手早く買い物をして困る人物を始めて見た。
そのままふらふらと彷徨うオレガノ。彼の足が向かう先には『ストーチカ』が経営している店が見える。『ストーチカ』が持つ店は他にもあるのだが、この店は町を作り始める当初からある、島でもっとも大きく歴史のある店だ。
この大きな店は、中にギルドと関係のある店がいくつも収まっている、王国内でも珍しい構造をした店である。
品揃えが豊富であることもさることながら、塔に近い場所に位置しているため冒険者からアイテムの買取も受け付けている。この店が出来て以降はずっと、冒険者にとって重要拠点と言えるだろう。
ここならポーションは勿論、メモリーズコアや武具までも揃っているので時間を潰すにはもってこいだ。彼の最後の頼みの綱がここだったというのも頷ける。
彼は商品を見て回って暇を潰すのかと思いきや、視線の先にあるのは商品ではなく窓の外であった。彼の目に映っているのは店の向かい側に建っている教会、そこの受付にいる1人の少女であった。そう、シナモンだ。この男、無意識に妹が見える場所へと足を運んでいただけだった。
「ククク…運がいい。今日は受付だったか…
ああ…シナモン可愛いなあ」
もはや立派なストーカーである。
馬車が通らないとはいえ、それなりに大きな通りを挟んでいるので彼とシナモンとの間には結構な距離があるのだが、冒険者は総じて目がいいのでよく見えるのだろう。能力を大いに無駄遣いしている。
「あら?オレガノ君じゃない。塔から戻って…じゃないわね、その格好じゃ。
それとも、まさか今度は篭手と脛当てまで外して行ってるとかじゃないでしょうね?」
オレガノに話しかけてきたのは、以前彼がアイテムを換金したときに対応していた受付嬢だった。
この店の受付で働いている者は美男美女が多く、彼女も例外ではない。そんな美人に名前を覚えられるなんて羨ましい奴め…!
…とは、周りの冒険者の感想だ。
彼がこの店に寄るのは塔から戻って換金する時だけなので、彼の装備を見た受付嬢が勘違いするのも無理はないだろう。
彼女に詰め寄られてオレガノは焦り、視線を彷徨わせながら否定している。女性に対する免疫がない初心な反応に見えるが、これは『妹のことが気になるが彼女を無視するとさらに怖い目に遭う』ことを知っているため、無視できなくて焦っているだけである。酷い葛藤の仕方があるものだ。
美人に言い寄られるなんてふざけやがって…!
…とは、周りの冒険者の感想だ。
「違うの?…珍しいわね。あなたが換金以外でここに来るなんて。何か探しているの?部署は違っても商品は大体把握してるから案内できるわよ?」
「いや、いい」
「そうなの?じゃあ気が変わったら言って。忙しくない時なら案内してあげる」
「わかった」
受付嬢と話すことで強くなっていく周りの視線が気になるのか、いい加減シナモンのことが気になるのか、おそらく後者だろうが、いそいそとその場を後にするオレガノ。
そのまま大通りを横切り、教会へ近づいていく。妹に会いに行くのかと思いきや、教会の隅に移動し、隠れながら彼女の様子を伺うことにしたみたいだ。
どうやらまだストーキングを続けるらしい。
ストーカー自体を取り締まる法律はまだないとはいえ、良識のある方は真似しないで頂きたい。
「シナモン…まるで天使だ…」
物陰に隠れて、でれっと緩みきった表情をするオレガノ。道行く人々は彼を指差しひそひそと話しているのだが、気が付いていないようだ。
「む、冒険者か…
……はあ?なにが「今日も可愛いね」だ?ウチの妹に色目使ってんじゃねーぞ…!」
教会に近づいたとはいえまだ距離がある。その上、辺りでは客を呼び込む声や人々の話し声にかき消されて、シナモンと冒険者のやり取りを聞き分けるなどできそうにもないというのに、彼は正確に聞き取れているようだ。ここにきて限界以上の聴覚を発揮しているというのか。
変なところで限界以上の力を引き出さないで欲しい。
「なんなんだ、あいつは。鼻の下を伸ばして、いやらしい目でシナモンを見るな…!」
彼も同じことをしているのには気が付いているのだろうか。
「…何をしてますのよ、あなた…」
声をかけたのはローリエだった。虫を見るような目をオレガノに向けている。
彼女はいつか見た騎士団の制服を着用していた。
大きいと踏んでいたのだが、そうでもなかったようだ。
「ローリエ?何故ここに?」
「はあ、会う度いつもそれですわね…
それより、こんなところで何をしてますの?不審人物にしか見えませんわよ?」
「なに馬鹿なことを…
!!!そんなところで突っ立っていないで、お前も隠れろ!」
「きゃっ!な、何するんですの!?」
「危ない。もう少しで見つかるところだった…」
「見つかるって…あら?シナモン?あなたまさか…
はあ…相当暇ですのね…」
「自分が『そう』だと思うなら、どこまでも信じてやる。そうだろ?
グフフ…」
「…前はいい言葉に聞こえたのに、今は何1つ響きませんわね」
にやけ面を晒すオレガノに、ローリエは虫を見るような目からゴミを見るような目に変える。
「こんなところで見てないで、シナモンに会いに行きませんの?」
「用事もないのに会いに行って追い返されたら、生きていけなくなる」
「なら何か用事を作ればいいじゃない。怪我をするとか…」
「それは無理だ。あそこにはチーフさんという化け物が棲んでいる。お前も見ただろう、あれは物の怪の類だ」
「物の怪って…確かに怖かったですけれど…」
以前こっぴどく怒られたのを思い出したのか顔を青ざめる2人。
教会に潜む化け物の話はこの島では有名なのだ。
「…じゃあ、チーフさんに止められないような傷を作ればいいじゃない?」
ローリエの口調から、めんどくさいという声が聞こえてきそうだ。
「そんなことをすれば、シナモンを悲しませてしまうからダメだ」
「…めんどくさいですわね」
とうとう声に出して言ってしまった。割と早かった。
彼女はこれ以上ないくらい冷ややかな視線をオレガノに浴びせている。
「こうするしかないんだ。くっ…!」
「はあ…まったくもう…
あなたが暴走しないとも限らないし、わ、私が付き合ってあげますわ。
いいこと?これはシナモンが心配だからであって、あなたのためなんかじゃありませんのよ!?」
テンプレ頂きました。
言い訳がましい言葉を投げかけながらオレガノと同じように物陰から顔を出すローリエ。
冷ややかな目を向けていたというのに、付き合いのいい人物である。
「む、また冒険者か。あいつもいやらしい目つきをシナモンに向けやがって…!
…なあ、あいつに石投げてもいいと思うか?」
「やめなさい。シナモンに気付かれたらきっと怒られますわよ」
「そ、それは困るな…
だが…くそっ!愛想笑いに決まっているだろ。なに顔を赤らめているんだ、あいつ…!」
「はあ…なんでこんな男を私は…はあ…」
深い深いため息を吐くローリエ。当の本人は、シナモンと冒険者のやり取りに夢中で彼女を気にする素振りすら見せない。そのことに対してまたため息。
現在、ローリエの中でオレガノの株が大暴落していることだろう。ざまあ。
「…しばらく見ないうちにシナモン、成長しましたわね」
その後も2人でストーキング、もとい護衛している最中、ぽつりとローリエが呟いた。
「せ、成長?それは本当か!?」
「断じてあなたが考えているものとは違いますわ。人間的に、という意味です。
あの子、王都にいる時は私かオレガノの後ろで隠れているような子でしたのに、今ではああして自分から何かしようとしているみたい」
「ああ…俺も驚いたものだ」
「直接は聞いてませんけど、あの子は多分――」
「む、また冒険者か…
ん?あれは…アニス?」
オレガノの意識はシナモンと彼女の元へ向かう者にしか向いていないのだろうか。ローリエが青筋を浮かべて鬼のような形相をしている。この男は少し自重というものを知って欲しい。
「…なんだか仲良く話していますわね」
「そうだな。知り合いだったのか…」
「特に用はなさそうな感じですわね」
「そうだな」
「…用がなくても、追い返されたりはなさそうですわよ?あなたも会いに行きませんの?」
「そうだな…い、いや、今はよそう」
何故か言いよどむオレガノ。
そんな反応を見て、ローリエは顔を歪める。その表情の意味するところは不安や恐れだろうか。
「……聞いてもいいかしら?
あの時、何故自分が怪我をしてまでアニスを庇ったんですの?」
「…なんでだろうな」
「ちゃんと答えてっ…!」
ローリエの真剣な声に感じるものがあったのか、オレガノはシナモン達から目を離しローリエへと向き直る。
彼女の真面目な顔を受け、彼も多少驚きながらではあるが緩んでいた顔を引き締め口を開く。
「……よく、分からない。気付いたら体が動いていた」
それは、捉え方によってはふざけているようにも聞こえる言葉。だが彼の表情を見れば、当時のことを思い出しながら考え抜いた答えだというのが分かる。
分かるからこそ表面には出てこない彼の想いを想像してローリエは俯いてしまう。
「…じゃあ、もし、私がアニスのように窮地に立っていたら、助けて、くれますか…?」
「それは…分からない」
「…っ!…そう、ですの…」
それはいったいどういう意味なのか。少なくとも彼女が願う答えではないのだろう。オレガノの言葉を聞き、そこに隠れている意味を見出しローリエは背を向けてしまう。
オレガノは今にも泣き出しそうに肩を震わせているのを受けてなのか、先ほど一瞬だけ見えた彼女の涙を思い出しているのか、困ったように顎に手を添える。
「いつも言葉が少ない、だったな…」
いつか妹に注意された言葉を思い出しながら、彼は再び言葉を紡ぐ。
「助けられる状況にあるかどうか分からない。フロアボスの時のように離れたところにいれば助けられないかもしれない。
だが間に合わないとしても俺は、助けたいと、思う…」
「くすっ…なんですの、それ。変な答え方…」
「…うるさい」
オレガノは口をへの字に曲げ、不服そうにする。そんな彼がおかしいのか、口では不満を漏らしながらも、くすくすと笑うローリエ。
「まったく…あなたはそんな人でしたわね。私としたことが、すっかり忘れていましたわ」
「その、すまなかった…」
彼女の頬に残る涙の跡を見たオレガノは、自分がそうさせてしまったことを深く反省し受け止めるように優しく、その手で拭き取る。
彼の想いもよらなかった行動に、ローリエは小さく声を漏らし、ボッと音が立ちそうなほど一瞬で真っ赤になった。泣いていたことも、彼へ抱いていた不満も忘れてしまったかのように、恥じらい一色に染まっている。チョロい。
「も、もう結構ですわっ!
…と、とにかく、今のことはもう忘れなさい!」
「もう大丈夫なのか?」
「あ、頭を撫でないでっ!
私は大丈夫ですから、すぐに忘れなさい!…い・い・で・す・わ・ね?」
「あ、ああ…」
「…まったく、どこでこんなこと覚えてきたのやら…」
ローリエは知らない。オレガノが涙を拭いてあげて頭を撫でるという行為は、妹が泣いているときによくしてあげている行為だということを。そして、不器用な彼はこの慰め方しか知らないことも。
いや、知らないわけではない。彼女は過去に何度か目にしているのだから。ただ、気が動転していて現在と過去を結びつけられないだけである。
ローリエにとって特別なできごとは、オレガノにとってそう大したことではないのであった。果たして彼女が真実にたどり着く日はくるのだろうか。
甘酸っぱい一幕を終え、ストーキング、もとい護衛に戻るオレガノ。ローリエはまだ上の空である。
「む、シナモンが出てきたな。ローリエ、置いていくぞ」
「あっ、ちょっと待ちなさいよ!」
夕日で街並みが赤く染まる頃、業務を終えたシナモンが教会から出てくるのが見える。隣にはアニス。どうやら2人でどこかに寄っていくのだろう。
オレガノは当然のように後をつける。それに続くローリエ。
「こ、こういうのってなんだかわくわくしますわね…!」
思い悩んでいたことが解消したためか、晴れ晴れとした顔で囁くローリエ。
いつの間にか、シスコンに毒されているようだ。
「それにしてもあの2人、どこへ向かっているのかしら?」
「さあな…むっ!あいつ今、シナモンにいやらしい目を向けたぞ。
…締めるか」
「…救い様がありませんわね。ちょ、ちょっと!本気で行こうとしない!」
「だが、あんな奴がいると思うと、俺がいない間シナモンが心配で…」
「あの子はしっかりしているから大丈夫ですわよ、まったく…」
シスコンの手綱を握るのは大変そうである。
ローリエの苦労をよそに、アニスとシナモンは島の南西、名前もそのまま『南西ブロック』と呼ばれるエリアへ移動する。
そこには教会の向かい側にあったような大きな店が建っていた。中の構造もほぼ同じでいくつかの店が入っているのだが、北西ブロックにあった店は冒険者をメインに据えた品揃えに対し、こちらは日常生活で必要な物を取り揃えている店ばかりが入っている。
「…普通に買い物していますわね」
「そうだな」
「…特に何も起きませんわね」
「起きたら困る」
「それはそうですけど…」
なんの展開もないとさすがに飽きは来る。未だに熱心な野郎もいるが。それでも途中で帰るという発想はないのか、オレガノに付き合い続けるローリエ。
「そういえばアニスったら、シナモンを妹にしたいなんて言ってましたわね。
ふふっ…こうしてみると、あなたよりよっぽど姉妹らしいんじゃありません?」
「…なんだと?」
「あっ、ちょっと…!」
それは、彼にとって禁句と言ってもいい言葉だ。主に周りが迷惑するという意味で。ローリエもよく分かっているだろうに、気が緩み過ぎである。
気が緩んだ彼女の制止などものともせず、ずんずんとアニスへ向かって行くオレガノ。
「あっ、兄さん!」
「へっ?兄さん…?
ひゃうっ!」
シナモンの呼びかけにアニスが振り向くと、鬼のような、いや、鬼がこちらへと迫ってくるところだった。
「あら、ローリエ?2人もこちらで買い物だったのですか?」
「ああ。ちょっとな」
「兄さんと一緒だったなんて、ローリエが羨ましいです。ねっ、アニスさん?」
「え?あ、うん。そうね……い、いやいや!そんなことないよ!?」
わたわたと手を振りシナモンの言葉を否定するアニス。かなり怪しい動きをしている。
シナモンとローリエはそんな彼女を見て含み笑いを浮かべているが、事情を知らないオレガノはそれどころではないようだ。
怒っているような、むすっとした表情でアニスへ向く。
「俺の妹が世話になったようだな」
「はひっ…!あの、えと、その…」
「(…兄さん、どうしたんですか?)」
「(何も聞かないで。とりあえず、ごめんなさい…)」
オレガノの威圧にビビリまくるアニス。
少し離れたところでは、様子のおかしい兄にシナモンは首を傾げひそひそとローリエに事情を尋ねているという構図だ。
オレガノは普段から(頭が)おかしいのだがそこは妹、違いが分かるらしい。
「…?そうだ!今、夕飯の材料を探しているのですけど、アニスさんもローリエも夕飯、ご一緒しませんか?皆で食べたら、きっと楽しいです!」
「ええっ!?あ、あの、私は…」
チラチラとオレガノを気にするアニス。
何故ここまで睨まれているのだろうと頭に疑問符を浮かべながら、オレガノの強い視線を見るたびにビクビクと肩を竦ませる。そんなに怖いなら見なければいいのだが、なかなかそういうわけにはいかなさそうだ。
「すっごく嬉しいんだけど…用事が、そう!用事があるの!だから、ばいばいっ!」
「待て」
「ひっ…!」
「シナモンの相手をしてくれたこと兄として礼を言う」
「ふええええええん!ごめんなさいいいい!」
アニスの肩を掴み兄という言葉を強調するオレガノに、彼女は顔を青ざめさせ脱兎の如く逃げていく。せめてガンを飛ばすのは止めてあげて欲しい。
何を勘違いしたのか、シナモンは逃げていく彼女の背中に暖かい微笑みを向けている。
「うふふ、アニスさんったら、あんなに照れなくていいのに」
兄のことに関しては鋭いシナモンであるが、それ以外だとこんなもんである。さすがはオレガノの妹。
「ローリエはどうですか?私は久しぶりに3人でご飯を食べたいです!」
「え、ええ。ではお言葉に甘えますわ…
(これ、私がどうにかしないといけませんわよね…はあ…)」
今回は自業自得とはいえ、気苦労の絶えないローリエであった。
作中ではストーカーに対する法律はまだないという設定にしていますが、今の日本ではストーカーは犯罪です。よい子は真似したらだめだぞ!




