準備完了
打撃武器の基本は鋳型よりはじまる。そのため鉄製の打撃武器を作る際、鍛冶師に必要なものは、『いかにして持ち手に衝撃が伝わらない形状を作るか?』それを考える知恵と、何度も試行錯誤を繰り返す忍耐力じゃと、リリベル婆は語った。
「妥協はいけないよ。そんなものは鍛冶師にとっては、最も邪魔なものだ。妥協を許さず、何を最善とするかを考えられた奴こそが、一流の名を冠する鍛冶師になるのさ」
「了解じゃ」
今回ワシは時間がないということで、リリベルが使った鋳型を使わせてもらい、大まかなウォーハンマーの形状を整える。
素材は鉄より柔らかくなっている粗鉄。できるだけ衝撃はすべて頭部で殺し、柄には衝撃吸収と打撃威力増加のために、ある程度柔軟性があるように形状を整えていく。
とはいえ所詮は鉄の塊。整形でえられる柔軟性なんて本当に微々たるものじゃが……。
「魔族との前線に行くと技術も進んでいるうえに、魔族の魔力を浴びて変質した《魔法金属》が使えるんだけどね。反射衝撃全吸収とか、触れた相手を発火させるとか滅茶苦茶な金属が勢ぞろいだよ。だが、今のアンタの腕じゃ鉄くらいが限界だろうね」
「言ってくれるわい」
鍛冶スキルはもう中盤越えとるんじゃが……。と、先日20の大台に乗ったワシのスキルの中で一番伸びておるスキルを思い出しながら、ワシは顔を引きつらせる。
じゃが、鉄から目を離しはしない。
どろどろになった粗鉄がそのまま排出口から流れ出て、口を開けとった鋳型の小さな穴へと流れ込む。この穴にきれいに液体化した粗鉄を入れるためか、量の調整のためか、リリベル婆が使っておる溶鉱炉の排出口は、ランベルダが使っておるものよりも小さかった。
それによって細く流れ出る赤く光る液体粗鉄は、狙いたがわず鋳型の中に流れ込み、数秒後にはあふれかえった。
ここから数分、鋳型の中の鉄が冷えて固まるまで放置。その間にワシは、固い鉄の成型に挑む。
「完成度の高いこの鉄の整形には、細心の注意を払いな。不用意にたたいて炭素をたたき出すんじゃないよ。そんなことをしたら鉄がもろくなるからね。炎の中で赤く輝く鉄の光を見極め、整形の際は極力叩く回数は抑えるんだ」
「了解じゃ」
ワシはそう言いながら、いつものように鑑定スキルをつかい、鉄の状態変化をウィンドウの中で見極める。
アイテムの内容欄の中の鉄が『熱された鉄』から、『半融解した鉄』になるのを見極めて、炉の中からだし、ハンマーの打撃面に合うよう、形を整える。
六角形のソコソコの厚さをもつ板。それがわしの求める鉄の形状じゃ。
それを目指すために、ワシは槌を振り降し、極力最短でその形状に近づけるように、熱された鉄を打つ。
カン。と鉄同士がぶつかり合う甲高い音が響き渡った。同時に少し形が変わる半融解した鉄。
よし、これならっ! と、ワシが思った瞬間、
「何してんだい、このバカたれがっ!!」
「ぶっ!?」
リリベル婆からとんでもない速度の右ストレートを食らい、ワシは思わず吹っ飛んだ。
な、なに? 何故怒られたのワシっ!?
「どこ見てんだい、このすっとこどっこい! スキル20も持っているくせに、《冶金の目》を使わないなんて、正気かアンタはっ!」
「や、《冶金の目》?」
なんじゃそれは……。とワシが殴られた頬を抑えて立ち上がるのを見て、リリベル婆は盛大に舌打ちをしながら、冷えてしまったワシが成形しておった鉄をふたたび炉の中に放り込んだ。
「その様子じゃ本気で知らないらしいね。いいかい? 《冶金の目》っていうのは、鍛冶スキルが20を超えたやつに現れる、《スキルアビリティ》だよ」
「ほう!」
スキルアビリティとは、ゲームなどではよくあるアシスト能力のことじゃ。たとえばメインスキルである武器スキルなど戦闘で使うスキルでは、攻撃を行う動作のアシストなどをしてくれる。
つまりは武器を握ったことでもないド素人でも、はじめのアクションをちょっとしさえすれば、体が勝手に動き、まるで剣の達人のような攻撃が、オートで発動してくれるのじゃ。
そのほかにも、視力がちょっとよくなるといった微妙な能力しかなかった《千里眼》スキルなどは、レベルが20を超えると《望遠》というスキルが発現。ある対象に焦点を合わせて、まるですぐ目の前にいるように見ることができるようになる、素で望遠鏡のようなことができるようになると、最近確認されたらしい。
有効範囲は100メートル前後。この世界での最大射程を誇る弓矢の射程距離が80~100メートルなので、千里眼スキルの《望遠》アビリティは、遠距離攻撃手段を持つ人々にかなりありがたがられていた。
さて、どうやらそのアビリティが鍛冶にもあったらしく、それをなぜ使わないとリリベル婆は怒っているらしい。
いやだって知らんかったもん……。
「気づかんかったわい。20に上がったのは仕事の最中で、そのまま忙しいと流してしもうたしな。確認も忘れておった……」
「はぁ……まったく、ボケでも始まってんじゃないのかいっ!」
正解じゃ。とよほど言いかけたが、話の腰が折れてしまうのは確実なので、ワシは自制心を総動員して黙っておいた。
「《冶金の目》は、鍛冶師にとっては有用な補助アビリティだよ。もっとも成形しやすい温度になった鉄を教えてくれたり、鉄を目指す形に成型する際、ここを叩けば《クリティカルヒット》になるといった場所を教えてくれる、便利なアビリティさ。私たち古い鍛冶屋は『鉄が教えてくれるようになる』なんて言って、このアビリティを持った奴を一人前だって認めたもんさ」
「クリティカルヒット? 鉄を叩くにもクリティカルがあるのか?」
「あたりまえじゃないか! 対象を殴っているんだからね! その打撃が、より強く力が伝達し、望みどおりの形状に整えられる一撃になったら、それがクリティカルの判定になるんだよ。そして、そのクリティカル判定が多ければ多いほど、作り上げられた武器は、同じように作った武器と比べて性能が上の物が出来上がるんだ。一流になりたいなら覚えておきなっ!」
リリベル婆はそういうと、再び半融解した鉄になった紅い鉄を炉の中から取り出し、ワシに席を譲った。
「アビリティは、名前を頭の中で思っただけで発動するからね。念じてみな」
リリベル婆にそう促され、ワシは頭の中でアビリティの名前を唱える。
《冶金の目》と。
すると、
「っ!?」
ワシの視界に移っておる赤い鉄に、緑色のサークルが複数あらわれ、そこを叩けとワシに指示を出してくる。
ワシはそれに合わせて鉄槌をふるい、紅く熱された鉄を打ってみた。
キーン! と、ランベルダがよく響かせておった、ワシのものと比べて数段すんだ金属音。どうやらクリティカルヒットが出ると、この音が響き渡るみたいじゃった。
なるほど。こういうところでわかりやすく、ただ鉄を打つのとは別の事象が起こっておると、明確に示しておったのか……。と、前からはっきりと教えられていたヒントに、ワシは少し苦笑いをしながら、次々と場所を変えて現れる緑のサークルに合わせて鉄槌をふるっていく。
見る見るうちにワシの望む形になっていく鉄。普段の数倍効率がよく、普段よりもはるかに槌を振る回数が減っていくのがわかった。
じゃが、それでもクリティカルが出せたのは5割程度と言ったところ。常に温度が下がっていく鉄は、その温度状況によって硬度が変わり、叩くべき場所も数秒単位で変わっていくからじゃ。
正直年寄りの反応速度にはつらいものがあるが、所詮ここはゲームの世界。実際の体を動かしているわけではないと、ワシは必死に緑のサークルに食らいついた。
そして、何とか出来上がる打撃部分に着ける、六角形の黒金の板。ワシはそれを見てフーッとため息をつきながら、いつのまにか浮かんでおった滝のような汗を、アイテムボックスから取り出したタオルでふき取る。
「確かに効率は良くなったが……これは相当集中力がいるのう」
「その割には成功五割かい。筋がいいっていうのは本当だね」
リリベル婆はそういうと、ワシが作り上げた六角形の板をしげしげと見つめ、ひとまずのオーケーを出してくれた。
「よし。この板と鉄槌の合成は明日やるから、今日はもう休みな。すっかり外も暗くなっちまったからね」
「そうか。助かるわい。ちょうど飯時じゃしな」
ワシはそんなリリベル婆の指示にほっと安堵の笑みを浮かべながら、現実の時間で7時過ぎを指しておる時計に線を走らせ、「ちとはまりすぎたわ……」と反省。即座にログアウトボタンを押し、夕食をとるためにTSOから一時退場をした。
◆ ◆
その後、ダンジョンに行くまでの数日間。ワシはリリベル婆のもとでひたすら鉄槌をふるい、自分のオリジナルの鋳型を作ってはダメ出しを食らいつつ、打撃武器の制作に励んだ。
途中、ランベルダとリリベル婆が合同で、モンスター素材の武器の作り方とか教えてきたが、あれはほとんど工作の域なので、ワシとしては何とも言い難い……。
いくつかの金属でモンスターの外殻や鱗をまとめて、武装の形にするわけだが……今のフィールドモンスターの素材では、大した武器は作れないとのこと。
せいぜいアーマーライノスの外殻が、棍棒にしたら結構な威力になったというくらいだろう。
そうこうしているうちに、鍛冶Lv.も22へと上がり、
「ようやくできたか……」
ワシはわしオリジナルのウォーハンマーの制作に成功した。
とはいっても、リリベル婆が作ったリラベル・ハンマーに比べるとやはり性能は落ちるのだが……。
「彫金も前に比べたら結構いいものができているね。うん、このくらいだったら売りもんになるだろう」
「これ以下じゃと売りものにならんというのか……」
これでも前線のウォーハンマーの比べると結構な性能なんじゃぞ。と、ワシは顔をひきつらせながら、そのハンマーを担ぎ、
「さて、孫たちの武器も仕上げに入るかのう」
あと明日、一度孫たちにあっておかねばならん。と、ワシは孫たちにチャットメールを送った。
明日はダンジョン行きの前日じゃった。
武器をプレゼントして、実戦までに使い方に慣れてもらうには、十分な時間がとれるじゃろう。
◆ ◆
翌日。久々に帰ってきたランベルダの店で、ワシはのんびりと自分の家事用の鉄槌を作っておった。ここ数日は武器ばかり作っていて、こちらに手を回す余裕はなかったからのう。
大まかな整形をする重量、硬度ともにトップクラスの鉄槌を一つと、細かな生計をする釘打ち用のハンマーのような鉄槌を一つ。
そのほかにもちょっとのってしまい、鏨やら何やらを作ってしまったが、そのへんはご愛嬌かの。
「まぁ、有って困るものでもないしのう。作ってしまっても構わんじゃろう」
「かまうわ。まったく盛大にうちの店の素材使いやがって……」
今店にはワシとランベルダしかおらんかった。リアルでは学生のYMブラザーズはもう寝なければいけないとログアウトし、社会人のTomoは「明日は仕事だから」と残念そうにログアウトしておった。
孫はネット世界のアイドルということで、ぜひともサインをもらっておいてくれと三人には念押しされておる。
どこで生産したのかは知らんが、色紙まで押しつけられてしもうたし……。
「んで、その孫って本当にまともな奴なんだろうな? 店荒らされたらたまらんぞ?」
「そこは安心せいっ! なんといってもワシの孫じゃぞっ!!」
「だから心配なんだよ」
「どういう意味じゃそれっ!?」
と、ワシはランベルダとそんな言い合いをしながら、煤のついた鉄槌を磨いて、実用用にきれいに形を整えている時じゃった。
「あの~すいません。ここのGGYって人いますか?」
店の入り口から、ひとりの少女が顔を出した。
見覚えのある金髪で、現実の彼女を知っている者なら違和感を覚える立派な胸部装甲をつけた美女が、顔を見せた。
というか、ワシの孫じゃった。
「おう、待っておったぞ」
「おじいちゃんっ!!」
久し振りの再会で、元気にしておる姿を見せたからか、感極まって飛びついてくる孫。
ワシはそれを優しく抱き留め、
「おじいちゃん! 心配していたんだよっ!! あんなことがあって……私嫌われたんじゃないかって」
「馬鹿者。孫を嫌うジジイがどこにいるんじゃ! お前のことを嫌いになったりするわけないじゃろう!」
「ほんと、おじいちゃん!」
「もちろんじゃとも」
うふふ! あはは! と抱きついた孫を回りながらゆっくりとスイングし、ワシは久しぶりの孫成分を補給し、
「店の中で暴れるな、ばかたれがっ!」
「ぎゃぶっ!?」
「お、おじいちゃぁあああああああああ!?」
ランベルダの金鎚投擲を頭に受け、思わず悶絶。それを孫の後から入ってきた三人が、驚いたような様子で見ていて、
「あ、あれがネーヴェのおじいちゃん?」
「ネーヴェも大概のジジイ好きだと思っていたが、あの爺さんも爺さんで大概だな……」
「こらこら二人とも。あまり人様の趣味にケチをつけるものではありませんよ」
と、それぞれ好き勝手なことを言いながら、彼らはワシを助け起こした。
◆ ◆
パーティ《ゴールデン・シープ》のメンバーは、思っていた以上に気さくな奴らじゃった。
「ゴールデン・シープのリーダーをさせてもらっています。ヤマケンっていいます。メインスキルは片手剣で、シールド装備のタンクです。副リーダーのネーヴェにはいつもお世話に」
「あぁ、いやいや、こちらこそ。不肖の孫が何かご迷惑御おかけしてないでしょうか?」
礼儀正しく頭を下げてきてくれたのは、良識のありそうな犬獣人の中年男性――ヤマケンじゃった。初期で選べる種族――ヒューマン・ドワーフ・エルフ・獣人と四つの種族のうち、獣人は素早さと腕力が他の種族に比べて高い種族じゃ。そのため、軽戦士として最も才覚を発揮するのだが、それでもなおタンク役重戦士を選んで、トップパーティーを引っ張れるプレイヤーになるとは……多分何か他のプレイヤーが知らない情報を隠しておるのだろう。
単純にプレイヤースキルが高いという可能性もあるが……。
「エルフでメイジをやらせてもらっている、クリムゾンフレイムである。ところで老人。お孫さんを我にくれんか?」
「なんじゃ孫よ。このストーカーを潰してほしいならそう言わんか」
「おじいちゃん!? 軽い冗談だからねッ!! 即座に戦闘態勢に入らないでっ!!」
と、信じられないことを言いワシの逆鱗に触れたのは、エルフにしては珍しい真っ赤な髪を逆立たせて、赤黒い皮鎧の上に、紅い毛皮のローブを羽織った、全身真っ赤な少年――クリムゾンフレイムじゃった。ロールプレイでもしておるのか、実に言動が中二臭い。
話を聞くとなんでも孫が巻き込まれた事件で、いろいろ駆けずり回ってくれた人間の一人じゃとか。
それに関しては礼を言うが、だからと言って孫はやらん!
「あははははは……。スイマセンおじいちゃんちょっとクリムの言動は、ああいうロールプレイですので我慢してあげてください。私は、このパーティーの回復支援役をやらせてもらっている、リナリナって言います。お孫さんとは前のゲームからの長い付き合いを……」
「なんとそうでしたか……ということはあなたもあの事件に?」
「ちょっとお手伝いをさせていただいたくらいですよ。実際助けたのはクリムですから」
そう言って頭を下げてくるのはこちらも長い耳が特徴的な、緑の髪をもった神官服を装備するエルフ――リナリナじゃ。穏やかな雰囲気を放つ女性キャラクターで、今の孫と同じくらいの胸部装甲をしとることに驚く。
なんでもこちらは天然だとか……。孫が殺気立った視線でそれを見つめておった。今はおぬしもそのくらいあるじゃろうが……。
「ご丁寧に挨拶をありがとう。しっとると思うが、リアルで孫の祖父をしておるGGYじゃ。こんな老いぼれのためにダンジョン行きを計画してくれて、ありがたく思う」
「いいえ。ご謙遜を、こっちも優秀な武器職人とつなぎを作ることができれば、ありがたいですから。打算は二割ぐらい含んでいますので、そんなに気を使わないでください」
「ふむ……」
こちらに気を使わせないようにする気づかいに、相手の第一印象を良くする爽やかな笑顔。
「ちなみにちょっと聞きたいんじゃが……ヤマケンさんはリアルでは?」
「いや、しがない商社サラリーマンでして」
「やはりっ! いや、ワシも若いころはサラリーマンでしてな」
「おやおや……会社はどちらの方で?」
「○○○といった会社なんじゃが」
「あぁ、そちらとの取引はこちらもよくさせていただいています。私は□□□の社員でして」
「やっぱり! どことなくあそこの社風が現れている、人を不快にさえない会話運びだと思いましたわっ!!」
正直言って安心したわい。孫がゲームの中とは言え、妙な男にひっかかったんじゃないかと心配しとったんじゃ。こんなにしっかりした社会人ならば、安心して孫を任せられるわい。とワシはちょっとだけ安堵する。
その後ろで孫が、
「あのヤマケンさん……。あなた社員じゃなくて社長だったんじゃ」
「ははは。余計な情報を与えてお爺さんを委縮させる必要はないでしょう」
とそんな話をしとったのじゃが、その時のワシは気づかんかった。
クリムゾンフレイムとやらはいささか気にくわんが、孫との関係も良好のようじゃし、保護者その二といった立場っぽいリナリナも、優しげないい人じゃ。
この人たちなら信頼して孫を預けられる。ワシはそう思い一つ頷くと、
「では、ダンジョンに行く前に一つ、孫が世話になっていることと、ワシを今回ダンジョンに連れて行ってくれることの礼として、ワシからあなたたちに一つ贈り物差し上げたいのじゃが、かまわんか?」
「これはこれは、そんなに気にしなくてもいいのですが」
「えぇ、お気遣いなさらなくても」
「ただなのか? くれ」
最後のクリムゾンフレイム……言いにくいわ。今後クリムで……の発言で、クリムには武器を渡してやる気がちょっと失せたが、これから世話になるのじゃしと、ワシは必死に自分に言い聞かせて、アイテム一覧から武装を取り出す。
孫はアクロバットスキルや、素早さ加算+増加上昇をスキルスロットに入れている、バリバリの速度型軽戦士じゃ。
そのため、動きを阻害しないため、武器は小型の方が望ましいと、ワシが制作したダガーと、話題になった防御用短剣マインゴーシュを渡す。ダメージディーラーという側面もあるらしいので、その二つの重量をあげようかとも思ったのじゃが、それでは速度にマイナス補正がかかる可能性もあるため、今回は見送った。
ヤマケンは、盾と片手剣のタンク役じゃが、どうやら真正面から敵の攻撃を受け止めて封殺するタンクではなく、小さなタテで敵の攻撃をピンポイントで受け止め、それをつかって受け流すようにして敵の攻撃をそらす、技術タンク的な戦士らしい。
そのため、送る武器は盾と片手剣。盾は最高硬度を誇るが面積は小さいラウンドシールドを採用。受け流しやすいように、普通の盾よりも傾斜を激しくしており、より敵の攻撃を受け流しやすいように設計した。片手剣に関してはいつも通りだが、普通より少し高め身長に合わせて、もうちょっと長い武器の方がいいだろうと、一般の片手剣よりも少し刀身を伸ばしている。
クリムはその名前の通り、超火力に重点を置いたダメージディーラーメイジじゃ。ステータス補正スキルも魔力一点張りで、基本的に戦闘中は後方に下がり、敵に大ダメージを与える魔法を詠唱し続けているらしい。
なので、今回作った武装はワシが携わっていない木製の杖じゃ。こちらで鉄の杖を制作してもよかったのじゃが、やはり木製武器の方が魔力の伝達がよく、魔力に対する補整が高いらしい。エルに頼んで最近腕を伸ばして来とる木工職人に頼んで作ってもらった。
平原の先にある森からとれた樫素材の杖で、まるで生きているかのような蛇が杖に巻き付き敵を睨み付けている。
彩色は黒色で、なんと名前までついておった……《ゲヘナ・バジリスク》という名前が。
この名前を教えたときが、一番クリムの受けがよかったのはご愛嬌じゃろう。
最後にリナリナは、回復魔法をスキルスロットに入れておる、根っからの回復支援職じゃが、後方防衛の要もしておるらしく、現在装備しておるメイスも木製ではなく鉄製じゃった。唱えて殴れるシスターを目指しているらしい。
ということで、ワシが彫金を施して何とか魔力補正を上げた、十字架型の鉄片手打撃棍棒を渡しておいた。少しでも魔力補正をもらおうと、十字架中央に天使の像を彫金で作り上げたのがよかったのか、自分でも驚いたほどの魔力補正がついておる。
すべてがすべて今のワシにできる、最高の仕事をした武装じゃ。孫が今まで世話になった礼としては、まずまずの物が送れたと思う。
「すごい! すごいよ、おじいちゃん!! こんなすごい武器初めて見た!!」
「あぁ、さすが義祖父様だ。なかなかの作品を用意してくれる」
「おぉ、そうかそうか、ネーヴェや。もっと褒めてくれてもええんじゃぞ?」
何より、孫の子の顔が見れただけでも、十分頑張ったかいはあった! と、ワシは孫の喜んでもらい、思わず相好を崩してしまう。「見てられんな……」と後ろからランベルダの揶揄が飛んだが無視じゃ、無視。
あとクリム、誰が義祖父様じゃ!!
「こ、こんな性能のいい武装をもらっていいのですか?」
「ただダンジョンに連れて行くだけなのに……。明らかに過剰報酬です」
さすがの良識組であるヤマケンとリナリナは遠慮しているようじゃったが、
「そういうセリフは、ダンジョンで性能を確かめてから言うてくれんかのう?」
「あぁ……」
「なるほど」
ワシの言葉で、このプレゼントは、ワシの武器が実戦でどこまで使えるのか、調査することも兼ねていると気付いてくれ、ひとまず断わりの言葉は飲み込んでくれた。
そういうわけで、ひとまず孫の仲間との友好な関係を築けたところで、
「では、明日はよろしく頼みますわい!」
初めてのダンジョンとやらにっ!!
キャラクター名:GGY(マインゴーシュ制作時)
種族:ドワーフ
筋力:111→165
防御力:7→10
魔力:1→3
器用:59→101
素早さ:5→13
メインスキル:《ハンマーLv.19》
サブスキル:《鍛冶Lv.22》《鑑定Lv.17》《採掘Lv.15》《器用超上昇Lv.3》《筋力超上昇Lv.5》
控え:《彫金Lv.10》《染色Lv.8》
超上昇入ったステータスは順調に上がっていますが、魔力を使う調金とかはやってもステータス上昇が微々たるもの過ぎて悲惨な感じ……。
一応始まりの町周辺の草原で、スライム乱獲をできる程度の戦闘能力はついています。
今回伏せさせてもらった武器の詳細な性能はまた後日。