職人の戦場
『愚かな人間ども。何度も死んでなお私に挑むか』
『いいだろう。己が無為な行いをなお続けたいというのなら止めはしない』
『せいぜい私の前で無様に踊れ』
『我が名はロード・オブ・ペイルライダー』
『疾病の女帝である』
『死を想え』
(イベント《死病の女帝》におけるボスモンスターの台詞より抜粋)
◆ ◆
城の中は、少々大人数で移動するのは手狭だということ以外は普通のダンジョンじゃった。
次々と城の廊下に湧き出すモンスターたちを、前方に並んだ騎士たちが押さえつけ、動きが止まったところに後方から飛来する魔法などが直撃。モンスターを蹂躙する。
そんなわけですっかりやることがなくなったパワーアタッカーであるワシらは、後方にて集合しボス戦での位置取りの最終確認を行っておった。
「よう、きたかGreatGero|Yariyagatta!」
「……人の名前勝手に改造しとるんじゃないぞ覇王龍」
「《グレートゲロやべぇよマジ》の方がよかったか?」
「本気で反省しとるから、これ以上名前弄りはやめてくれんかのうラクライ!?」
さきほどの事ですっかり定着しつつあるワシの新しいあだ名をおもしろげに連呼する覇王龍や、にこやかな笑顔の中にせっかくの攻略の雰囲気を台無しにされた怒りをひめたラクライ。
そんな二人に出迎えられたワシは、思わず赤面しながら反省の言葉を吐きだした。
まったく、炊きつけられたからって調子のって馬になんか乗るんじゃなかったわい……。今後絶対に馬には乗らん。
「まぁ、いいだろう。じいさんのおかげで被害が最小限に抑えられたことも事実だし、公衆の面前でゲロ吐いて一番ダメージを受けたのは爺さんだろうしな。今回はこれで許す」
「感謝しろよグレートゲロやりすぎ」
へらへら笑いながら、全然ラクライの仕切り直しを聞いておらん覇王龍。ワシは「覇王龍あとで締める」と心に誓う。
話の腰を折られたのが気に入らなかったのか、ラクライも何かを決めたように頷いておった。
どうやらこのワールドボス攻略戦の後は荒れそうじゃのう……。
「話を戻すぞ。とにかく、攻城戦が思った以上に早く終わったおかげで、各種アイテムの温存と、プレイヤーたちの体力温存がかなった。ワールドボス攻略の際には、この体力温存が大きな意味を持ってくるはずだ。でだ、これからいどむそのワールドボスについてだが。敵の姿は女の巨人型。時折虚空から召喚した馬を乗り回してこちらをひき殺そうともくろんでくる、騎士系ボスモンスターだ」
「もういろんな意味でスッゴイデカいらしいぞ。身長も五メートルくらいあるし、パイオツもタユンタユンだそうだ。おまけにビキニアーマーだから絶景が拝めるらしい」
「まじかそれ!?」
「お爺ちゃん?」
「はっ!?」
思わず食いついてしまったワシの背中に、前線で戦うヤマケンの代わりとしてやってきておった孫の冷たい視線が突き刺さる。
だ、だって仕方ないじゃろ!? 男はいつだってあの二つの球体に惹かれるものなんじゃって!?
「とはいえ、騎士突撃型の戦略はデュラハン戦でキッチリ学んだでしょうから、特に注意点はありません。強いて言うならば、油断して突撃をよけ損ねないように注意することといったところでしょうか。馬上から装備している大鎌をふるってくることもありますが、そちらの攻撃はタンク職連中がうまく処理できる程度らしいので、それほど攻撃力が高いモンスターでもありません。ですが」
「問題は前に話題になっていた石化と、その後放たれる即死級攻撃だな?」
ダメージディーラーだったがゆえに、ワシと同じく待機を命じられたスティーブの言葉に、ラクライは首肯した。
「《冷化ドリンク》を運用することによって石化攻撃の発動を抑制することは成功しましたが、即死級範囲攻撃はいまだに健在。周囲にいるエンチャウンターや、各種バフを操る支援系プレイヤーからの支援を切らしてしまうと、恐らく一撃で死んでしまいます」
「といっても、発動頻度はそれほど高くにゃいんだろ?」
手を上げて発言したのは、ネコ耳をぴくぴく動かすみーにゃんじゃ。
傍らには先ほど共に突撃しておったニコりんが、たおやかな笑みを浮かべてたたずんでおった。
どうやら仲良くなったらしいが……あの変わり者が心を開くとは珍しい。と、ワシは独りごちる。
ワシの店に装備を買いに来ても、ほとんど無言で品物を物色した後、「こ、これくだしゃい!」と盛大に咬みながら品物をカウンターに置くのが一連の流れになっておるニコりん。
その知名度とは逆に、どうやら極度の人見知りらしく、ニコりんがまともに会話を成立させているシーンをワシはいまだに見たことがなかった。
「発動回数は最短で10分間に一回。確かに頻度は高くない」
「ならば対策はせいぜい気を付けるくらいしかあるまい。何をいまさら話すというのじゃ」
「ふふふふ。そうですねぇ。私たち攪乱チームは極力距離をとる予定ですから、範囲攻撃の範囲外にいる可能性の方が高いですし」
次に発言したのはコスプレ会場から抜け出してきたかと思ってしまう奇抜な格好をした連中じゃ。
まるで女帝のような豪華絢爛なドレスに、バラの意匠を施したワシ謹製の鞭をパシパシと鳴らす《独り女帝》エリザベス。
気の強そうな吊り上った瞳に、他者を見下す不敵な笑みが作り物めいた美しい顔を凶悪に飾り立てる、まさしく女帝といった風体をした女性プレイヤー。
もう一人は仮面に、紅く丸い付け鼻をつけた胡散臭い恰好をしたピエロ。
大型支援クラン《絢爛道化》のクランマスターを務める、キラー・ゲイシー。
某殺人鬼の名前を自身のキャラクターに拝借した変人で、TSOでは珍しい《幻惑魔法》の使い手として有名なプレイヤーじゃ。
「俺たちが問題としているのは、今回攻略するに当たって、あいつの激怒状態を誰も見ていないことだ」
そう発言したのは、武骨なフルフェイス兜を、わざわざワシに頼んで球状に変形させに来たことがある、攻略クラン《爆走一族》クランマスター――ゴーイングマイウェイ。
寡黙な奴は、ヘルメットにしか見えない兜のバイザーから、わずかに覗く目を光らせながら、自身が指揮した斥候部隊と、ワールドボスとの戦いを振り返った。
「いろいろな可能性を試すために、かなりバリエーションに富んだ編成で何度も奴に挑んだが、どうやってもあいつのHPを三割以下にすることができなくてな。現状、俺達は誰もあいつの激怒状態を見ていない。だからこそ、奴が激怒したときに何が起きるのかはほぼ未知数といったのが現状だ」
「とはいえ、先ほどの騒動からわかるように我々の攻略引き伸ばしも限界が来ていた。激怒状態の情報がないままというのは痛いが、我々は今日この時に打って出るしかなかった」
だからこそ、とラクライはそこで言葉をきり、
「本当の勝負はワールドボスのHPが三割を切ってから。場合によっては、メーカーズの方々にもボスと正面切って戦ってもらうことがあるかもしん。今回はその場合の位置取りの相談をとおもって」
「基本的に爺さんたちには専門盾が少ないからな。『盾もできる』ってだけであって、本職程ではないだろうから、こっちの攻略組から盾職を何人か回して……」
前方で轟渡る轟音をBGMに、ワシらは攻略組のメンツと共に、ワールドボス攻略のための会議を進めて行った。
そして、それがちょうど終わるころに、ラクライに通信チャットが届いたアイコンが着いた。
「はい、ラクライです」
『クラマス。殲滅成功です』
「ん? もう終わったのか」
ラクライがそう言いながら立ち上がり、前方を見るのを見てワシらも同じように立ち上がる。
そして、ワシらの視線の先には薄暗かった城の廊下に差し込む光と、その中に見える巨大な白い門。
ボスがいることを表すその巨大な門に、ワシらは思わず息をのみ込み、体が震えるのを感じた。
とうとうワシらは、この世界最後の関門へと到達したのじゃ。
◆ ◆
「ダメージが回復しきっていないものは、回復職の前に集合しろ~。各パーティーリーダーは、ラクライさんのもとに集合。ワールドボス攻略戦の作戦の最終確認を行うからな~。事故って死に戻りした奴がいたらすぐに報告しろ~」
ということで、ワールドボス手前の安全地帯へと到達したワシらは、ワールドボス攻略戦の前に一休みすることになった。
とはいえ、ワシらメーカーズの面々は、ココこそが本当の戦場だといっても過言ではない。
なぜなら、
「爺さん! 武器の整備よろしく~」
「エルさん、私の装備耐久度がえらいことになってるから何とかしてぇ!!」
「Alice氏~。拙者の杖もう耐久度がレッドゾーンでござるよ~。修復、修復を所望~」
「くんなっ、改造!? お前は絶対くんな! お前に渡すと鎧の背中にブースターつけられるからっ!!」
「何を失礼なっ! 背中にブースターなんぞ付けるかっ! つけるならガントレットに付けてロケットパンチができるようにするわっ!!」
「俺に近づくんじゃねェ! この魔改造厨がっ!!」
戦いのさなかで耐久度が減った武器の修復を、ワシらが請け負うことになっているからじゃ。
攻城戦に城内戦と、今回は激しい戦いの連続じゃったからのう。武装の耐久度もそれ相応に減っており、このままワールドボスに挑むのは心もとないといったメンツが多く、簡易制作キットを持ってきておったワシらの前には長蛇の列が出来上がった。
約一名ほど客から逃げられておる奴がおるが……。
武装関係の生産スキルを持っておらん連中も、かなり大忙しじゃ。
「なに? 回復薬がもうない? バカ使いすぎんなって言っただろうがっ! ちょっとまってろ、この料理作り終わったらササッと調合するからっ!」
「スティーブ。から揚げ定食追加」
「あいよっ。ったく、こんなことなら事前に注文取っておくんだったぜ……。しばらく待ってろって伝えろっ!」
「了解。がんばれよ~」
料理人と調薬師であるスティーブは、料理をふるまい攻略メンバーに長期バフを与えるのと、足りなくなってしまった薬品アイテム各種の補充にてんてこ舞い。
同じように消耗品の製造を生業にしているケンロウも、スティーブの臨時屋台のウェイターをやりながら、いたるところでプレイヤーに呼び止められ、各種アイテムの販売をしていた。
まさしくここは生産職の戦場。戦うメンバーたちの足元を支える、裏方仕事の本領じゃ。
戦闘ではさほど活躍できない以上、ここで手を抜くわけにはいかん。と、ワシも気合を入れて次々と持ち込まれる武器のメンテを行っておった。
そんなとき、
「おじいちゃん大丈夫?」
「ん? 孫か」
ワシ謹製のナイフのメンテを頼みに来たのか、孫ことネーヴェがワシの顔を心配そうにのぞきこんだ。
「忘れているかもしれないけど、おじいちゃん現実では結構大変な状態にあるのよ。あんまり無理して張り切り過ぎちゃだめだからね?」
「わかっておるさ。そう心配するな。いよいよワールドボスと戦えるわけじゃから、現状は今までにないほど絶好調じゃぞ?」
「だから不安なんじゃない」
良いことの後には悪いことが起きるんだから。と、どこか暗い影を落とした孫の言葉に、ワシは苦笑を浮かべることしかできなんだ。
たとえこの戦いが最良の結果に終わったとしても、かなりの無理を押してゲームをしておるんじゃ。ワシの命は孫が心配するように確かに長くはないじゃろう。
じゃが、
「それでもお主は、同じゲーマーとしてワシを見守ってくれるんじゃろう?」
「……………」
孫は決して肯定の言葉を言ってはくれなんだ。代わりに孫は、腰にぶら下げてあった鞘からナイフを取出し、
「整備お願い、おじいちゃん。おじいちゃんにかっこいいところを見せたいから。そして、万全の態勢で戦いに臨むために」
「わかっておるさ。完璧に仕上げておいてやるわい」
孫はそれだけ言ってワシから離れていき、ワシも孫にはそれ以上の言葉はかけなんだ。
言葉はなくとも、あいつならわかってくれると心のどこかで信じておったから。
◆ ◆
そんな風にワシがひたすら武器の整備をしておる時じゃった。
人の気配を感じふと視線を上げると、そこには仲間に引きずられてワシの前へとやってきた、苦々しい顔をしているLycaonがおった。
「……なんじゃい?」
「別に。ようなんかねぇよ」
お前から話しかけてくるとは珍しい。と首をかしげるワシに対し、Lycaonは苦虫を百匹ほどかみつぶしたような顔をして、すぐにそっぽを向く。
じゃぁ何しに来たんじゃ? とあきれるワシをしり目に、意地を張るLycaonの脇腹にカリンちゃんの肘鉄がめり込んだ。
「ぐっ! カリン、テメェ!?」
「何くだんないことで意地はんってんの! いいからさっさとお願いするっ! ごめんね、お爺さん。こいつ相変わらずばかで。ちょっとコイツの剣が耐久度限界迎えちゃったから、お爺さんに見てほしいんだけど」
そういって、Lycaonから奪い取った剣をワシに投げ渡すカリンちゃん。
一応念の為にワシはその剣が鞘から抜けるのか確認する。
プレイヤーが今回のように他人に武器を盗られた場合、最終安全装置としてその武器は鞘から抜けないようにロックがかかるのじゃ。
じゃからこそ、こういった武器の手渡しを成功させるためには、窃盗専用の能力である《収奪スキル》を持っておくか、職人にメンテナンスをお願いするため本人が特別に武器の譲渡設定をONにしておくしかない。
みたところカリンちゃんは収奪スキルを持っておるようには見えんかった。そのため最後の最後ではLycaonがセーフティーをかけ、ワシには武器が抜けんようにしておるのではないかと疑っておったのじゃが。
「ほう、あっさり抜けるか……」
「……なんだよ?」
喧嘩売ってんのか、アァ? と言いたげにガンを飛ばしつつも、ワシが言いたいことはしっかり把握しておるのか、苦々しい表情はいまだ残ったままのLycaon。
そんな若いコイツの態度を、ワシはほんの少し、
「ふん」
「てめぇ!!」
羨ましく思ってしまい、それを隠すためにあえて「わかいのう」と鼻で笑った。
そう……Lycaonはまだ若い。まだまだ先があり、多くの未来の選択肢を持つ若者じゃ。
じゃからこそ、何度失敗してもいい。何度間違えてもいい。
それは確かな経験となって、こやつの血肉となっていくじゃろう。
じゃからこそ、もうここから退場するワシが、いつまでも意地を張っておるのは、こいつのためにはならんか。
せっかくひねくれ者のコイツが、自らの愛用武器をワシに預けるという信頼を見せたのじゃったら、ワシの返すべき答えは一つのはずじゃ。
「承った。10分後にとりにこい」
「……は?」
「え……え、あの! それって、Lycaonの武器をメンテしてくれるんですか」
「今は仕事を選んでいいような時ではないじゃろう。誰の武器であろうと、直せるなら直してやるわい」
「あ、ありがとうございますっ! ほら、Lycaonもっ!」
「な、なんで俺がっ!」
そんな言葉を吐きつつも、Lycaonはカリンちゃんが頭に置いた手を拒まず、無理やり頭を下げさせられるのも抵抗しなかった。
まぁ、それが答えなんじゃろうと、ワシはそっと笑いながら、
「まぁ、お主とワシの関係はこのくらいが落としどころじゃろう。ワシはおぬしが嫌いじゃし、おぬしはワシを目の敵にしておる。じゃが、利害が一致したのなら、今度からは仕事をしてやるさ」
「上から目線が気に入らねぇが、あんたがそう言うなら俺も譲歩してやるさ」
互いに素直な言葉は決して言わなかったが、これがわしとLycaonの長きにわたる因縁の、ちょっとした決着になったのじゃろう。
頭を上げたLycaonの瞳からは、ワシにいつも向けていた苦々しげな色が消えておった。
◆ ◆
そして、時は満ちた。
ゆっくりと、ワシらの目の前で巨大な門が開く。
ワシらは固唾をのんでそれを見守っておった。
先ほどまでの戦いでのダメージはすべて抜け切り、スティーブたちがふるまった料理によって、長時間バフも完璧じゃ。
ワシらは現在万全の状態。
じゃがそれでも、目の前にいる奴の威圧感の前では、体の震えが止めることができなかった。
門の向こうから現れたのは、蒼い炎による照明によって照らし出された、広大で豪奢な王の広間。
石畳の上に敷かれた巨大な紅い毛氈。その両脇に並ぶ燭台がまるでワシらを死へといざなう道のように、その毛氈を彩っておる。
その先にいるのは、骨と皮で作られた不気味なソファー。
そこには一人の巨大な女がだらしなく横たわり、門を開き部屋に侵入してきたワシらをニヤニヤした顔で見つめておった。
『懲りん奴らだ。私に何度殺されても、またこうしてあらわれる。人間とは真度し難い』
「ん? こやつ……ワシらを倒し続けた記憶が残っておるのか?」
「妙な設定があるのか、ワールドボスだけは特別扱いみたいだ。ちなみにこいつに倒された回数によって、イベントの発言は変わるらしいぜ」
「ちなみにこのイベントボイスは、今回の様に殺された回数が各プレイヤーでバラバラな場合、パーティー内で一番あいつに殺された回数が多い人の物が出るみたいですね」
一番ワールドボスに殺された回数が多いプレイヤー……。ラクライのその発言に、ワシは思わず後ろを振り返る。
「ん? なんだよ爺さん」
「いや……」
「にしても、最近マンネリだよな。この台詞55回目と234回目の時にも聞いたぜ?」
さすがの運営も、お前みたいに殺され続ける奴が出るとはおもっとらんじゃろうよ。と、どうやらもう台詞のレパートリーがなくなり、セリフのパターンがループし始めておるらしい、カイゾウに白い目を向ける。
そんなワシらの態度など知ったことではないのか、ワールドボスは寝ころんでいたソファーから立ち上がり、背後に置いてあった大鎌を手に取った。
『何度来ようと同じことだ。死を想え。死を想え。貴様らにまた、死を与えてやろう』
ワールドボスがそう言うと同時に、暗い部屋の光源であった青い炎たちが一斉に火炎放射器から吐き出される炎のように吹き出し、蒼い炎の柱となって部屋の天井に直撃。
ワシらの頭上が青い光で満たされ、雪のような青の火の粉が部屋一帯に降り注いだ。
同時にワールドボスの頭上には先ほどまではなかったHPバーが浮かび上がり、その上には名前が記される。
『我が名は、《ロード・オブ・ペイルライダー》。疾病の女王である』
瞬間、攻略組に紛れ込んであった戦闘向けソロプレイヤーたちの中からこんな声が上がる、
「な、なまえかぶった……」
いや、お主のはあだ名であって名前じゃないじゃろ。とワシが《状態異女》ニコりんに、内心でツッコミを入れると同時に、
「全軍、最後の戦いだ! きばれよっ!!」
ワールドボスの大喝を切り裂き、ラクライの声が轟き渡った。
同時にワールドボスの体が突如消失し、次の瞬間にはワシらの前に現れた!
デュラハンと同じ瞬間転移のアビリティ! 持っておるとは聞いておったが、実際見ると厄介すぎるのう! と、ワシは内心で舌打ちしながら、手に持った鉄槌を構え、
『終われ。人間』
「御免こうむるのう。まだ死ぬには早いわい」
周りにいたプレイヤーごとワシを薙ぎ払おうとした大鎌を、鉄槌の一撃で弾き飛ばした!
それが号砲になったのか、ワシのインターセプトによってわずかに体勢を崩したワールドボスに、無数のプレイヤーたちの攻撃が叩き込まれる。
ワールドボス討伐戦の火ぶたが、今切って落とされたのじゃ!
おくれてすいませ~んT―T