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GGY鍛冶を覚える

 さて、そうこうしているうちに職人街に戻ってきたわけじゃが、


「施設に関しては職人街の職人さんに、話は付けてあるそうだから、好きな店の工房を間借りさせてもらえばいいらしい」

「ほう、意外と用意周到じゃな……」

「素材集めもさせられましたから、てっきり工房も自分で探せと言われるかと……」

「流石にそこまで鬼畜じゃねーよ……」


 喫茶店にやってきたワシらが、どこで作業をすればいいかと聞きに来た食堂は、昨日訪れた時とは違いえらい盛況じゃった。客がきちんとついているという町長の話は真じゃったらしい。もっとも、かれらの頭の上についているカーソルは緑じゃから、NPCしかおらんようじゃが……。

 そんななか、カウンター裏にある厨房でフライパンをあおって何かを炒めていた町長が、ワシらの感想を聞いて顔を引きつらせる。


「まぁ、一番厄介だと思っていた素材集めが終わったなら、さっさと生産に移りな。もっとも、またすぐに素材集めに出ることになると思うが」

「おっと、町長? それはもしかして俺たちが失敗するとでも言いたいのかい?」

「当然だろう」


 町長はそんなことを言いながら、炒めていた料理を鉄のフライパンから皿に移し替え、ウェイターをしている少年に手渡す。


「生産職は一朝一夕でどうにかなるもんじゃねぇ。テメェらが鍛冶や、裁縫をやったところで、せいぜい鉄っぽい何かで作られたオブジェと、貧相な兎皮のハンカチ一枚が関の山だろうよ。まぁ、料理に関してはさすがになれているかもしれねぇから何とも言えんが……俺の料理を超えるってことはまずないだろう」


 大体の初心者はここで躓く。と、不敵に笑う町長は、


「そして、たいてい躓いた奴らは大したこともしないまま『俺に生産職は向いていなかったんだ』なんて腑抜けたことを抜かして、どっかいっちまうのさ」


 お前らもそうならなきゃいいな。と、そう言いたげな町長の挑戦的な笑みに、ワシらのゲーマー魂に火がついた。


「よかろう! あとでほえ面をかくのではないぞっ!!」

「が、頑張ってぎゃふんと言わせてみせますっ!」

「OKだ、爺さん、エル。その意気だぜ!」


 スティーブはそんなことを言いながら、どこからか取り出した飾り装備のバンダナを頭に巻き付け、料理制作キットから包丁を取り出し手に取る。


「そして町長、俺が借りる工房は……ここだっ!」

「ほう? 俺にはりあおうってか?」


 スティーブがなにをするつもりなのか、同じ料理人として瞬時に見抜いた町長は、スティーブの戦意に燃える瞳を受け止めながら、新たな料理を作るために包丁を手に取る。


「いいだろう。来い、若造。その高く伸びた鼻っ柱、先達としてへし折ってやる!」

「上等っ!!」


 そして、カウンターを飛び越えスティーブが厨房を入るのを合図に、ワシらも自分の工房を抑えるために、出口を目指して走り出す。

 そんなワシらの背中に、


「じゃぁな爺さん、エル。俺達のこと舐めているこの町の奴ら、ギャフンと言わせてやろうぜっ!!」


 スティーブの励ましの言葉がぶつかり、ワシらはそれに親指を立てることで返事を返すのじゃった。



              ◆         ◆



「たのもぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 あれから職人街を駆けまわること数分。ワシが工房に選んだのは、『ランベルタ刃物店』。剣から包丁まで、すべての刃物を鍛造する刃物のスペシャリストじゃ。実際ここで買った刃物は、ギルド周辺で流通している量産品よりも質がいいらしく、鑑定でステータスを見ても、一般的な量産武器の攻撃力が『筋力+10』なのに対し、この刃物は『筋力+20』という数値を出しておった。

 商品名も『高品質な初心者用の剣』じゃったし(この名前はどうなんじゃろうとは思うが……)、まず間違いなくこの町では最高峰の鍛冶屋のはずじゃ。

 それに、やはりこの世界で最も需要が高い鍛冶屋というのは、武器として有効な刃物じゃろうからのう。先ずはここからノウハウを学び取ろうと思ったのじゃが……。


「あぁ? 誰だ、騒がしいな……」


 ワシの訪問の声に返事を返し奥から出てきたのは、職人の気迫なんて微塵も感じぬ、無精ひげを生やしたオッサンじゃった。

 背が低く、手足も短いことから、恐らくはわしと同じドワーフ(といっても、体格の不一致は現実での行動に支障が出るということで、プレイヤーのドワーフは皆、現実の体系よりの連中ばかりじゃが)。冶金の種族として知られるから、一応鍛冶も得意なんじゃろうが……なんというか、第一印象からしてだらしない。

 本当にこやつがあの商品を売ったか職人なのか? と、ワシが疑っていると、相手の方がワシの目的を察したのか、


「あぁ、そういえば町長が言っていたな。今のご時世で俺達に教えを請いに来た奇特な奴らがいるって。まさか爺さんとは思わんかったが……。老後に手に職つけるにゃ、ちとおそいんじゃないのか?」

「大きなお世話じゃ!?」


 いきなりとんでもないことを言ってくるオッサンドワーフに、ワシは思わず怒りの声を上げる。

 だが、オッサンドワーフはそんな怒声に耳を貸すことなく、再びあくびをしながらぼりぼりと体をかいたあと、


「まぁ、どうせこの店にゃ、包丁ダメにしちまった主婦ぐらいしか客がこねぇんだ。溶鉱炉と溶鉱炉の取扱説明書はそっちにおいてあるから、適当に使えや」

 そんなことを言って再び店の奥に引っ込むドワーフ。ワシはそんなオッサンを呆然と見送りながら、

「え? 仕事はせんのか?」


 と、ちょっとだけ今の自分の状況が絶望的なことを悟る。

 仕事をしているのを盗み見ながら、技を盗もうと思っておったのに……。

 当然、一般的な商社に勤めて定年退職まで働いたワシが、鍛冶の仕方など知るわけもなく、火のついていない溶鉱炉でワシは途方に暮れることとなった。



              ◆         ◆



「って、呆然としておっても先には進まん!」


 それから数分後、何とか精神的な復活を果たしたワシは、溶鉱炉に火を入れ、鍛冶キットを取り出す。

 同時に、素材となるアーマーライノスの甲殻を取出し、溶鉱炉の中に放り込んでみる。

 見る見るうちに赤くなり、形を崩していく甲殻たち。

 そして、


「しまった……どうやって粗鉄と不純物をより分けるのかがわからん!?」


 溶鉱炉の中でドロドロに溶けた甲殻から、何とか鉄だけを取り出そうとワシが四苦八苦していると、


「ん?」


 溶鉱炉から延びる二つの穴から、真っ赤になった液体が流れ落ちてきて、その下に置いてあった受け皿にたまっていきよる。

 片方は瞬く間に冷えて固まり汚い何かになったが、もう片方はしばらくたっても真っ赤に光り輝いておる。どうやらこれが鉄で、冷えて固まった方がそれ以外の不純物らしい。


「ふむふむ……。『この溶鉱炉は、自動で鉄と不純物をより分ける機能があります。素材はそのままぶち込んでくれて構いません』ほほう……異世界の溶鉱炉意外と高性能じゃのう」


 ま、まぁこれで第一段階は終了かの? と、取扱説明書を片手にワシは考えながら、穴から鉄が出なくなり冷えて固まりだした、受け皿の中の鉄を検定してみる。


『アイテム名:粗鉄のインゴット

 解説:安物溶鉱炉を使ったせいで、不純物を多く含んでしまった鉄のインゴット。武器の生成にも使えるのだが、作った武器は柔らかく折れやすくなってしまう』


「ぬぅ……」


 いくら鉄と不純物を分ける便利機能があっても、やはりこの町にある溶鉱炉はあまり性能がよろしくないらしい。

 まぁ、この町では粗鉄性の武器がソコソコ使えると流通しているせいで、これで武器を作っても、市販の製品とは同じ性能の物を作れるのだが……。


「クエストはその市販を超える性能をもったものを作れ……じゃしのう」

 もうちっと工夫をしてみるか。と、ワシは受け皿から出来上がった鉄のインゴットを取出し(驚くほどあっさりとれた。この受け皿何か細工がしてあるのか?)錬成の準備に移った。



              ◆         ◆



 刃物店の店主、ランベルダは半ば死んだような目で、部屋に寝転がりダラダラしていた。

 理由は簡単。客が来ないからだ。

 入り組んだ場所にあるこの職人街は、職人街を探すという意思を持って訪れないと、なかなか見つけることができない立地になっている。昔はそれでも冒険者の客が来たのだが、ランベルダたちが破門した弟子たちが噴水前に作った『職人ギルド』なるもののせいで、ぱったり冒険者の客足は途絶えてしまった。

 どいつもこいつも、行きやすいというだけで、昔破門した弟子どもが作るソコソコの製品で満足して、それを買っていく。

 この店にはそれをはるかに上回る性能の武器があるというのに……。

 ふざけてやがるとランベルダは呟いた。冒険者の連中も見る目がないと。

 本当は冒険者のほとんどが、レベルが上がると同時にさっさとほかの町へといって、この町のギルドよりも、性能がいい武器を他の町で買うから、初回のフィールドでわざわざ性能のいい武器をそろえる必要がないというだけなのだが……そんなゲーム的常識はさすがのランベルダも知らなかった。

 まぁ、そんなこんなでランベルダは今やる気を失っているところだった。

 昔のなじみの客は来てくれるし、日常生活で使う刃物なら売れ行きもそこそこだ。

 だが、やはり彼は剣を打つ人間として鍛えられた刃物鍛冶だ。その腕が認められない現状が、よほど耐え難い苦痛だった。

 腕が悪いわけでもなければ、商品が粗悪なわけでもないのに、立地などというくだらない理由で認められない。

 やる気も失って当然と言えた。

 だが、そんなときだった。

 彼の工房から、カンカンと、鉄を叩く澄んだ音が響きだしたのは。

 どうやらついさっきやってきた老人が、粗鉄を使って武器作りに入ったらしい。


「どれ……ちょっとくらい腕を見てやるか」


 ランベルダはボーっとするのもいいかげん飽きてきたので、久々にきいた鉄を打つ音に引かれて店の奥からちょこっと顔をだし、工房の中を覗く。

 そこには、


「ぬぅ……やはり打つのが正解か? とはいえ、時間がかかりそうじゃのう……」


 真っ赤に焼けただれた粗鉄のインゴットを見て、難しい顔をする老人の姿だった。

 インゴットは武器の形になるように成形されていない……。まさか、


「粗鉄のインゴットを鉄のインゴットにするつもりなのか?」


 バカな。うちの安物の炉をつかって、何の技術も知らない初心者が、そんなことをできるわけがない。

 不純物の叩きだしというのは、だいたいが完全な科学と魔法の力による産物だ。鍛冶用のハンマーで殴ったところで、鉄から追い出せる不純物がなど微々たる量。粗鉄の段階でそれを始めるなど、気の遠くなるほどの回数ハンマーをふるわなければならなくなる。


「あほくさ……。鍛冶のかの字すら知らんじゃねぇかあのジジイ」


 ありゃ大成は無理だな。と、ランベルタはひとり呟きながら、再びゴロゴロするのに戻った。



              ◆         ◆



 一心不乱に、紅くなった粗鉄を打つ。

 火花が飛び散り不純物がなくなっていくのがわかる。

 もっとじゃ。もっとなくなれ。

 常に使っている鑑定スキル。

 それによって、粗鉄からだんだん不純物が抜けていくのが目に見えてわかった。

 とはいえ、その不純物がなくなる速度は遅々としたもの。

 500回近くハンマーをふるって、ようやく粗鉄の素材品質を表す☆が、一つ増えるといった感じじゃった。

 素材の品質を表す星の数は全部で☆10。

 今の評価は☆2。経過した時間はすでに3時間を超えておる。

 じゃが、


「だからどうした……」


 知識も、技術も得ておらん状態で、品質を上げる方法がわかっただけでもありがたいのじゃ。効率的な方法を覚えるために妙な足踏みをするよりもまずは、実行可能な、確実に成果の上がる方法で!!

 効率主義の今の時代では嗤われる、呆れるほどアンティークな考え方かもしれんが……。


「ワシは年寄りじゃ。アンティークで何がわるい」


 ワシはひとり開き直りながら、延々目の前の鉄を打ち続ける。

 虚仮の一念。大いに上等! 石の上にも三年じゃ。年寄りの執念舐めるなよ!!

 ワシは内心でぶつぶつつぶやきながら、ひたすら鉄を打ち続ける。

 冷めたらふたたび炉に入れ、叩くのに最適と鑑定スキルが告げる、鉄の灼熱の色を見極め取出し、ハンマーで打つ。

 この時ワシは、気づいておらなんだ。

 粗鉄インゴットを打ち、その品質が上がるのだけを注視しておったから、自分のステータスの変化に気付いておらなんだ。

 ハンマーをふるって鉄を打つという作業をくり返すことによって、ハンマー使いの経験値が上がるのは、まぁいい。武器スキルじゃなかったんかいと言ってやりたいが、内心ちょっと期待しておったのは事実じゃし……。

 だが、それよりも驚くべきことは、ワシが鉄を一心不乱に打っていて、まったく気づかんうちに出ておったシステムメッセージの方。

 重いハンマーをひたすらふるいまくったせいで、システム的に鍛えられたと認識され、いつのまにか筋力値が50を超えておった。その時に《筋力上昇増加》が、


『システム:上昇増加系スキルのみで、ステータス一項目を50以上にしたことにより、隠しクエスト《己が体を鍛え上げよっ!! 水増しなんてしてんじゃねぇよっ!!》を達成。スキル《筋力上昇増加》を《筋力超上昇Lv.1》にランクアップさせます』




              ◆         ◆



 何故じゃろう……。やたらとハンマーが軽くなった気がする。不純物もさきほどよりすごい量で抜けて言っておる気が……。

 ん? もう、朝か? よしよし。品質が☆10を超えて、《粗鉄のインゴット》が《鉄のインゴット》品質☆1になったぞ!!

 ふわぁ……。今日は疲れたわい。

 もう寝よう……。



              ◆         ◆



 部屋に差し込む朝日の光が顔に当たり、ランベルダは目を覚ました。


「ふわぁ~あ。さて、店開けるか。あ! そういやあの爺さん結局どこまでいったんだ?」


 途中でまったく進まん不純物の取り出しに飽きて、放り出しただろうが、品質はソコソコの粗鉄のインゴットができているかもしれない。

 敢闘賞として、それを買い取ってやるのも悪くはないか。と、一応健闘をたたえる準備くらいはしてやるかと考えていたランベルダだが……。


「なっ!?」


 火が消えた炉の前に鎮座する、明らかに粗鉄とは比べ物にならない光沢を放つ、金属のインゴットを見て息をのんだ。

 鑑定スキルを使うまでもなく、長年の職人としての勘が訴えている。あれはまぎれもない《鉄》だと。


「冗談だろおい! まさか一晩かけて本当にやっちまったのか!?」


 信じられず、思わず鑑定スキルを使ってみても、やはりそれは鉄だった。

 品質は☆1と低いが、これをハンマーで打つだけで作り上げたといわれると、ほとんどの鍛冶師が度肝を抜かれるだろう。

 いったい何万回ハンマーをふるい、何度粗鉄を焼き直したのか。

 とてつもない体力と忍耐力……そして集中力。

 老人とは思えない、極限までのそれらの力が合わさってできた作品・・を見て、そのインゴットの傍らで眠るGGYという名前の冒険者を見下ろし、ランベルダは思わず笑った。


「GGY、無理しやがって」


 だが、あんたのガッツは見どころがある。と、ランベルダは鉄のインゴットを持ち上げながら、新たな鍛冶師になる老人に、自分の技術を教えることに決めた。



              ◆         ◆



 キーン! キーン! と、金属と金属がぶつかり合う、昨晩聴いていた、ワシが鉄を打つ音とは明らかに違う音が聞こえる。

 それに驚きワシが目を開けると、そこには昨日までのだらしなさを一切感じさせず、するどい瞳で炉の中を見つめるランベルダがおった。


「よぉ、爺さん。無駄な苦労をご苦労さん。正直そこまでやるかと、そのインゴットを見たときは驚いたぜ」

「む……。悪かったのう、愚直にしかできなんで」


 ワシが昨日作った粗悪な鉄のインゴットを指差し、苦笑いを浮かべるランベルダに、ワシは思わず眉をしかめながら、鉄のインゴットを抱える。

 なんと言われようと、このインゴットはゲームをして初めて、鍛冶師らしいことをして作ったものじゃ。バカにされると不快じゃった。

 じゃが、無駄な苦労とはいったい?


「本来不純物を取り出すのに、爺さんみたいにひたすらハンマーで殴るみたいなことはしねーんだよ。もっといい設備があるところならそのまま炉に放り込んだだけで鉄ができるし、うちみたいな貧弱な設備のところでも」


 そういって、ランベルダが懐から取り出したのは、青い金平糖のような結晶じゃった。


「あ、それスライムのドロップアイテム!?」


 確か名前は、《純化の結晶》。……ん? 純化?


「これを鉄と一緒に放り込んで打てば」


 そう言いながらランベルダは、真っ赤になった鉄の上に純化の結晶を放りなげた。

 そして、純化の結晶は灼熱した鉄の上に落ちると同時にはじけ飛び、青い光を炉の中に撒き散らした。同時に、鉄の中からどろりとした液体が垂れ流され、不純物の排出口からそれが出てくる。

 そしてランベルダが炉の中から鉄を取出し、それを水で冷やすと、


「こういう風にあっという間に不純物がなくなるんだよ」


 ワシは慌てて鑑定スキルを発揮し、ランベルダが作った新たな鉄のインゴットを見る。


『アイテム名:鉄のインゴット

 内容:熟練の職人によって生成された適度に不純物を取り除かれた鉄。これで作った武器は最高の品質を持つようになる。

 品質:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆』


「……………………………………………………………」


 き、昨日のワシの苦労は!? と、空いた口がふさがらんワシを、ケケケと笑いながら、


「あんたにゃ、物を作る前にまず知識が足りなさすぎる。今日は一日俺の仕事を観察して、適当に武器を作るための技術を盗んでいけ」

「い、言われずともそうするわい!!」


 完全にへこまされたワシが、精いっぱいの憎まれ口を叩くのを、ゲラゲラ笑いながら聞き流し、ランベルタは仕事に戻る。

 ワシはそんな職人の一挙手一投足を、見逃さないようじっと見つめながら、武器を作るのに必要な工程を、しっかり頭に焼き付けるのじゃった。



              ◆         ◆



《攻略掲示板》

スレッド名:鍛冶職人スレpart31

1:魔改造武器が作りたい転生者さん(**/**/**/………)○○○○○

 鍛冶について情報を共有しましょう。

 面白い企画があれば載せましょう。

 みんなで楽しい鍛冶ライフを送りましょう!!


2:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○

 魔改造って、おいwww


3:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○

 たしかに憧れんわけではないが……。今の現状ではな……。


4:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○

 確かに。ギルドで教えてもらった鍛冶って、なんか弄りようがないくらい完璧な気がするんだよな……機能的っていうか。画一的っていうか


5:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○

 まぁ、まだ初心者の段階だからな。創意工夫はもうちょっとLv.が上がってからってことじゃねぇの?


6:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○

 クッソー! 自由度が高いって聞いたからいろんな武器作りたかったのに!! 十手とか、ソードブレイカーとか!!


7:魔改造武器が作りたい転生者さん(**/**/**/………)○○○○○

 おまいら。久々に始まりの町に行ったらちょっと信じられんものがあったんだが……。つ【画像】


8:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○

 なん……だと!?


9:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○

 『高品質な初心者用の剣』だと!?


10:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○

 筋力+20とかまじかwww

 これもっているだけで前線でも結構戦えるぞ? いや、シャレや冗談じゃなく。


11:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○

 今出ている片手剣で一番攻撃力がいいのが筋力+21だからな。製作者一体だれよ?


12:魔改造武器が作りたい転生者さん(**/**/**/………)○○○○○

 不明。というかNPCメイドらしくてさ。製作者の欄が空白なんだよ


13:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○

 つまり、この武器を作ったNPCが始まりの町にいるってことだな。


14:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○

 ガタッ。俺ちょっと始まりの町に用事思い出したわ


15:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○

 ふはははは! 残念、俺まだ始まりの町にいるわ!! チョット探して弟子入りしてくる。

 怪しいのはおそらく職人街かっ!!


16:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○

 ちょ、抜け駆けはなしだろうがっ!?


17:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○

 どの口がwwww


18:魔改造武器が作りたい転生者さん(**/**/**/………)○○○○○

 おまいら、慌てるのはまだ早い。実はこういう武器の情報もあるんだが

 壁|д ̄) チラッっ【画像】


20:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○

 なっ!? こ、これは……!?


21:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○

 マインゴーシュだとぉおおおおおおおおお!?

 筋力+25に防御力+10まであるじゃないかっ!?

 誰よっ!? 誰が作ったの、こんな二刀流への夢を切り開きかねない、浪漫溢れる武器!!


22:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○

 せ、製作者の名前……載っている。載っているんだが……。


23:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○

 あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!

『おれたちはGGY無理すんなと言っていた

 だがいつのまにかGGYがマインゴーシュを作っていやがった』

 な、何を言っているのかわからねーと思うが、おれも何をされたのか、わからなかった(ry

 もっと恐ろしいものの片鱗を 味わったぜ……。


24:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○

 俺ちょとGGYに弟子入りしてくるわ


25:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○

 おう、俺も俺も!


26:魔改造武器を作りたい転生者さん(**/**/**/………)○○○○○

 お、おれはGGYならきっとこのくらいやると初めからわかっていたからねッ!!


27:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○

 おまえらwwwwww



              ◆         ◆



 そのころ、職人街のランベルダの店では、


「てめぇ、コラじじいっ!! 誰があんな愉快短剣つくれっつた!! 包丁作れっつったんだよバカ野郎っ!! そうすりゃ町長のクエストはクリアになっただろうがっ!!」

「アイディアがわいてしまったんじゃから仕方ないじゃろうがっ!? それより結構な高値で売れたと聞いたぞっ!! ワシにも分け前よこさんかいこの若僧がっ!!」

「ただ飯食らって、勝手に技術盗んでいっているやつが何抜かしてやがるっ!! 若者に教育費払う度量もねェのか、クソジジイっ!!」

「なんじゃと!? こんな年寄りを虐めるような奴が何をぬかすっ!! というか、誰が若者じゃ!? どっからどう見てもただのおっさんじゃろうがっ!!」


 3日間、ランベルダの店でひたすら鍛冶の腕を磨いていたGGYが、師匠であるランベルダと取っ組み合いの喧嘩をしていたことなど、掲示板住人の鍛冶屋たちはまだ知らない。


キャラクター名:GGYジジイ(インゴット制作時)

種族:ドワーフ

筋力:13 → 51

防御力:4

魔力:1

器用:7 → 31

素早さ:1

メインスキル:《ハンマーLv.10》

サブスキル:《鍛冶Lv.9》《鑑定Lv.5》《採掘Lv.1》《器用上昇増加》《筋力超上昇Lv.1》

控え:《彫金Lv.1》《染色Lv.1》


                ↓


キャラクター名:GGYジジイ(マインゴーシュ制作時)

種族:ドワーフ

筋力:51 → 111

防御力:4 → 7

魔力:1

器用:31 → 59

素早さ:1 → 5

メインスキル:《ハンマーLv.13》

サブスキル:《鍛冶Lv.15》《鑑定Lv.10》《採掘Lv.7》《器用超上昇Lv.1》《筋力超上昇Lv.2》

控え:《彫金Lv.3》《染色Lv.5》


 インゴットからマインゴーシュまでのLv.上りが低いのは、初心者帯を抜けたから。このエリアではスキルLv.が30までしか上がりませんから。


 ちなみに現在のトッププレイヤー連中のスキル平均Lv.は20。いくらなんでも早すぎね? と運営がドン引きしているランク。


 超上昇系スキルに関してはまた次回あたり。何か知っていそうだったスティーブあたりに話させます。

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上昇増加系スキルは水増しじゃない……?
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