最後の決戦……開幕!!
おくれてすいませんT―T
新生活の用意やら、久々に復帰したバイトやらで忙しくて……。
完結するまでこちらに集中する予定ですが、次はいつ更新できるか不明です。
長い目でお待ちください<m(__)m>
そして、とうとうその時がやってきた。
ワシはメニュー欄を開き装備各種を点検する。
ワシのステータスは現在。
『キャラクター名:GGY
種族:ドワーフ
筋力:355→500(カンスト)
防御力:58→105
魔力:34→52
器用:287→500(カンスト)
素早さ:32→43
メインスキル:《ハンマーLv.30》→《騎士鎚Lv.30》(カンスト)
サブスキル:《武装鍛冶Lv.26》→Lv.30(カンスト)
《玄人眼Lv.22》→Lv.30(カンスト)
《採掘Lv.30》→《鉱脈探査Lv.29》
《器用超上昇Lv.25》→Lv.30(カンスト)
《筋力超上昇Lv.28》→Lv.30(カンスト)
《魔法干渉Lv.18》→Lv.30(カンスト)
NEW!!《異世界武器Lv.30》
控え:《金属細工Lv.22》→Lv.30
《製図Lv.5》→Lv.30(カンスト)』
この日のために生産を一時的にやめて、死に物狂いで上げたスキルたちはほぼカンスト状態。装備に関しても全力で最高の品質のものをそろえた。
今回装備しているものは、インターセプト成功率を少しでも上げるための器用上昇装備各種。
『アイテム名:工匠の魂
性能:器用+60
内容:裁縫職人L.Lが作った布製イヤリング。不撚糸によって織られた布を使っており、火を扱う工房の中でも装備ができる。
四角形の布細工には職人の魂を表す槌と手の刺繍が施されており、装備した人間にまるで匠になったような気分を覚えさせる。
品質:☆☆☆☆☆★★★★★』
『アイテム名:イカサママジシャンハンド
性能:防御力+185 器用+80 武装アビリティ《小型武器装着》《高速装備》
内容:狂防具職人MA☆改造が作った手甲。発条の力で籠手に装着されている武器を、装備者の武器として瞬時に装備させることができる。ただし、腕に付ける籠手であるため装着できる武器は小型のものに限定される。
複雑な機構をしているため耐久度にやや難があるが、最硬の金属である黒鉄がふんだんに使われているため、防御力は一級品のものと変わらない。
品質:☆☆☆☆☆★★★★★』
『アイテム名:《軽金属鎧》フェザーヘヴィ
性能:防御+275 素早さ+30
内容:狂防具職人MA☆改造が作った鎧。一般的な胴鎧なのだが、使われている金属が加工不能と言われた羽のように軽い金属――《軽隕鉄》。そのため、金属鎧の頑丈さを併せ持つ、皮鎧が如き軽さを実現した頭のおかしい鎧。
品質:☆☆☆☆☆★★★★★』
『アイテム名:匠のかんがえたさいきょうにかっこいいタセット
性能:防御+255 器用+100
内容:狂防具職人MA☆改造が作ったタセット。アイテム制作に失敗した際にごく低確率で残される《匠魂》を物質化し再形成したもので、職人の汗と涙と努力の歴史がこのアイテムには刻まれている。
職人の魂が刻まれているため、名称の変更が不可能という欠点がある……。
品質:☆☆☆☆☆★★★★★』
『アイテム名:《雷神具》ヴァーリー
性能:防御力+235 素早さ+60 状態異常《帯電》
内容:防具職人レロレロが作った鉄靴。雷の直撃を受けた際できるといわれる《落雷鉄》を使用して作られている。
稲妻のような形状をした彫金が施されており、装備者に迅雷の加護を与える。
ただし、常に放電現象を起こしているためバチバチうるさく、隠密行動には非常に不向き。金属製品に触ったりする場合は極小ながらダメージを受ける場合もある。
品質:☆☆☆☆☆★★★★★』
『アイテム名:匠印の陣羽織
性能:防御力+260 器用+150
内容:裁縫職人L.Lが作った陣羽織。背中には丸に囲まれた《匠》の文字が刻まれており、装備した人間にまるで匠になったような気分を覚えさせる。
《思考草》と言われる《シンキング・アシ》より抽出した繊維で織られており、持ち主の意志に反応してその行動を手助けすることがあるのだとか……。
品質:☆☆☆☆☆★★★★★』
持ち込む予定の武器は、トッププレイヤーになってから長くワシを支え続けてくれたリボルパイルハンマー。そして、
「お守りじゃな」
魂を込めて作り上げた渾身の一品――《黒小人の造形鎚》。
その重さが確かにアイテムボックスの中にあるのを感じつつ……いや、システム的にアイテムボックスに入れたものに重量などあるわけないのじゃけど……感じた気になりながら。
「さて、行くか……」
ワシ――GGYは人生最後の戦いへと赴く。
◆ ◆
そのころ、現実でのワシの体は……。
「なにも……こんな時までゲームをしなくても」
「お母さん、ごめんなさい。でも、止めてあげないで」
顔を真っ赤にして荒い息をしておるワシ。その頭には医者が特別につれてきてくれた技師によって、体調異常時の強制停止設定をいじってもらった《グレムリン》がかぶらされており、ワシをTSOの世界に送り込んでくれていた。
現在ワシの体温は38.9℃。明らかに異常な体温じゃ……。どうやら今までワシを無視しておったお迎えが、ようやく重い腰を上げたらしい。
一応医者にも来てもらっておったのじゃが、死ぬなら家の畳の上がいいと主張したワシは、結局家から動くことなく、自分の寝床で眠りながらワールドボス討伐へと赴くことになった。
その医者は現在ワシの血液を採取して、ガンの状態の大まかな検査をしに病院に行っておる。発病を告げられてから約三か月。健康体を維持してきたがゆえに行う手間を惜しんだ検査を、ようやくすることになったわけじゃが……正直ここまで来たら結果がどのように出ても怯えるつもりはない。黙してその結果を受け入れるだけじゃ。
傍らには、そんなワシのバカな行いを見て涙を流す娘と、娘を必死に説得してくれた孫の姿があった。
「たしかに、普通に考えればバカの所業だよ。死ぬ直前までゲームしているなんて、誰が見ても馬鹿にされる、ただのゲーム中毒者だよ。でもね、それでもおじいちゃんは、いつ死ぬかもわからない体を引きずりながら……一生懸命あの世界を楽しんでいたの。だから、理解してとも、応援してとも言わないけど……ただ、許してあげて」
「由紀子……」
そんな孫は、着々とワシの隣でゲームへログインする準備を終わらせ、今は傍らにグレムリンのヘッドギアを抱えておった。
娘は孫のその姿を見て、目元の涙をハンカチで拭き、
「わかっている。お父さんが最後までやり切りたいといったことだもの。娘の私がそれを邪魔するわけにはいかない。だから由紀子。お父さんの意識がある間に、絶対私たちの前に連れて帰ってきなさい。ゲームの世界で死ぬなんて、絶対に許さないから! あなたの死に際を看取るのは、ゲームの友達なんかじゃなくて、娘の私だって言っておいて」
「……了解」
約束する。そう言って下に敷かれた布団へと寝に行った孫を見送った後、娘は隣にいた自分の主人に縋り付いた。
「バカ……本当にうちの家族は、バカばっかりよ!」
「あぁ。でも……」
お父さんは幸せそうじゃないか。と、娘の伴侶は眼鏡の奥の瞳を優しげに細めながら、グレムリンをかぶりながら不敵に笑うワシを見て、そう言ってくれた。
◆ ◆
「さて、爺さん。準備はいいか?」
「おう。無論じゃ」
「待ちくたびれましたよ?」
「すまんのう……年寄りは物忘れが激しいから、再三確認せんと不安でなぁ」
工房から準備を終え出てきたワシを迎えてくれたのは、百合の花が刺繍された青と白の模様がついたローブを着こんだエルと、つい最近メインスキルを変えた、背中にショートソードを二本背負ったスティーブ。
ワシが本当の意味でゲームを始めるきっかけになった、始まりの二人の軽口を聞き、ワシの口元には思わず不敵な笑みが浮かぶ。
「さて、往こうか?」
「おう!」
「ワールドボス如き、ボッコボコにしてやりますっ!」
気合十分。ワシらはそんな掛け声とともに、戦場に向かう第一歩を踏みだした。
本日は――ワールドボス討伐戦開催日である。