ちょっとした復讐
本日こちらに違う話の最新話投稿してしまいました。ご迷惑をおかけして本当にすいませんT―T
お詫びといってはなんですが、明日上げる予定だった話を急遽あげることにしました。
今回の件は水に流していただき、これからもこの小説を応援してくれると幸いですT―T
やはりパーティーで挑むと、早い奴に対処するのも楽じゃのう。と、ワシは独りごちながら、Lycaonに向かい敵意の視線を向け、致命の一撃を放ちかけたDSLAにハンマーの一撃を叩き込む。
もとよりプレイヤーが二人いる上に、その役割はタンクとダメージディーラーじゃ。役割さえきちんとこなせれば、タンクに注意をひきつけられているソロアサシンに攻撃を当てることなど、ぞうさないこと。
それに、LycaonにDSLAを引き付けてもらっている間に装備しなおしたハンマーは、ただのハンマーではない。
『アイテム名:黒鉄の爆砕ハンマー
性能:筋力+308
内容:鍛冶職人GGYが作ったハンマー。頭の背後にある噴出口から、内部の火薬を使ったジェット噴射をすることにより、打撃威力を増すように工夫がされている。ただし、耐久度は極端に低く、一度振るうと爆発する
品質:☆☆☆☆☆★★★★』
銃完成の宴会の後、カイゾウと共に作った悪乗り武装。たった一撃しか敵に叩き込めんワシの最強武装じゃが、今回はその一撃で十分。
ガギョン!? カイゾウとの合作ハンマーのフルスイングを食らったDSLAは良い音を立てて頭をひしゃげさせ、部位破壊のSEと共にDSLAの頭部がひび割れ一部陥没する。じゃが、
「この武器はそれでは終わらんぞっ!!」
ワシがそう言った瞬間、爆砕ハンマー最後の一撃。内部の火薬引火による大爆発がDSLAを襲った。
内部の火薬の炸裂に耐えきれんかった黒鉄の破片が、爆風と共にあたりに飛び散る。当然ワシにもいくつか破片がぶつかってきて、そのHPをごっそりと削っていきよるが、間近でそれを食らったDSLAのダメージはワシの比ではない。
爆炎の中から四肢をだらりと力なくたなびかせながら、吹っ飛んでいくDSLA。
そして奴はそのまま、地面にたたきつけられると、ピクリとも動かなくなってしもうた。
そやつのHPバーに視線を向けると、ゲージは真っ黒。完全にHPを失っておる。
「やった……のか?」
「多分のう。ワシの奥の手じゃったハンマーの一撃を、急所に、ほぼ無防備に喰らったんじゃ。無事でいられるわけがない」
面倒な相手じゃったが、初めの不意打ちに混乱せず、チームプレイをきちんとできれば言うほど怖い相手ではない。
攻撃が当てられないほどの速度で動くというが、要するにそれは相手が自分の動きを阻害しない軽い防具しかつけていない、紙装甲キャラだということに他ならない。
たとえボスであったとしても、全身武装のプレイヤーのHPを、破片がいくつかぶつかるだけで半分ほど削るような一撃を食らって、死なない道理がないじゃろう。
ワシは確実に仕留めたという確信を抱きながら、手元で柄だけになったハンマーが、壊れたアイテムとしてポリゴン片になり砕け散るのを眺める。
いい武器なんじゃが、この強度の低さがネックじゃのう。このハンマー一本作るだけで、火縄銃が三丁作れるんじゃが。と、ワシは内心で愚痴りながら、アイテムストレージをメニューから開き、先ほどまで使っていたハンマーを装備しようとする。
そう、この時ワシは油断しておったのじゃ。
奴は確実に倒したと。内心でそう油断しておった。
じゃが、
「っ!? GGY! まだ終わってない!」
「ん?」
突然Lycaonから告げられたその事実を、ワシが正しく認識する前に、ワシの背後には黒い水しぶきを上げて影から出てきた、DSLAが佇んでおった。
「なっ!?」
ワシが驚愕の声を上げる前に、奴のナイフが、鎧に守られていないわしの首筋に突き立つ。
ふたたび削れるHPはとうとうイエローを通り越し、レッドゾーンへと突入した。
「なぜ……生きておる!?」
ワシが死ねば次は自分だと分かっておるのか、Lycaonはワシを助けようと叫び声をあげながら、ヘイト増加アビリティを使う。
じゃが、一撃でDSLAのHPを全損させたワシがもっておるヘイト値を、一撃でこえられるようなスキルは存在しない。
じゃがなぜじゃ……。何故HPを失った状態で、こいつは活動ができる!?
ワシがそう思い、冷や汗を流しながら内心を疑問符で埋め尽くした時じゃった。
ワシの視界の端に映っておる、システムチャットが目に入ったのは。
このシステムチャットは、モンスターとプレイヤーが戦う際に、プレイヤーとモンスターが戦闘中に使ったスキルや、うけたダメージなどを敵味方関わらず記載してくれる便利機能で、戦闘の内容を振り返ったり、ボス戦攻略のための重要な情報源になったりするのじゃ。
そのシステムチャットに、こんな文字が記載されておった。
『システム:ダークスケルトンリーダー・アサシンのパッシブアビリティ《執念の復活》発動』
「っ!!」
《執念の復活》。アンデッド系ボスモンスターのごく一部が持っているといわれる特殊スキルで、HPがなくなった時、一度だけHPを1の状態にしてボスモンスターを復活させるパッシブアビリティ。
別名《死んだふり》とも言われるこのアビリティは、最近になって発見されたものであり、どのアンデットボスがもっておるかもほとんどわかっていない、レアアビリティだったのじゃが……ここにきてっ!
「お主がもっておるとか都合よすぎやしないかのう!?」
ワシのそんな愚痴など知ったことではないのか、必死に振り回したワシの拳による反撃をあっさり躱したDSLAは、薄暗い森の中に真っ赤な残光を残しながら、再びワシに向かってナイフを振り上げる。
先ほどまでは赤い光だった眼下の奥の光は、今は燃え上がる炎のようになって巨大化しており、本来感情がうかがえないはずのDSLAは、明らかに怒り狂っているように見えた。
ゴブリンキングの時にもあったボスモンスター特有のバフ《激怒》。HPが1になっておるこいつがそれを発動しない道理はなく、DSLAはそれによって強化された素早さによって、さらにその動きを加速させていた。
動きは見えるが、到底ワシの素早さで、迎撃できる速度ではない。
Lycaonがいる位置もまだ遠い。
普通ならもう……諦めるしかない状況じゃ。
じゃが、
「は……。悪かったのう。お主のことを舐めておったわ。だが」
奥の手があるのは、お主だけではない。と、ワシは最後に小さく笑い、ここにきて再び活躍することになった、自分のもう一人の相棒を右手に召喚する。
そう、ワシがここ数日全身全霊をかけて作ったあの暗器銃が、ワシの右手に忽然と現れた。
ワシの間近でナイフを構えておったDSLAの額にその銃口がつきつけられる。
『―――――――っ!?』
声にならない驚愕の声が、DSLAから漏れ出た気がした。それもそうじゃろう。
普通装備変更は、メニュー画面からのステータス操作でしかできんのじゃから。
じゃが、
「遊び心がいささか功を奏してな」
そうつぶやくワシの右手に収まっている銃の持ち手には、本来銃にはない固定具が装着されており、その固定具はワシの袖口から延びておる。
『アイテム名:発条の高速装備籠手
性能:防御力+101 武装アビリティ《小型武器装着》《高速装備》
内容:鍛冶職人MA☆改造が作った籠手。発条の力で籠手に装着されている武器を、装備者の武器として瞬時に装備させることができる。ただし、腕に付ける籠手であるため装着できる武器は小型のものに限定される。また、防御力はあまり高くなく、耐久値も低いためこの防具で敵の攻撃を防ぐのはあまりお勧めしない。
品質:☆☆☆☆☆★★』
この防具のおかげで忽然とワシの手に現れたように見える銃からは今、ワシの殺気を表す赤いラインが伸びておるはずじゃった。
じゃが、この距離なら……この近さなら。
「たとえわかっておっても……どれほどの速度で動けても、避けることはかなうまい」
銃は、正々堂々と相手の前に出て遠距離で使えば、相手に攻撃の軌道を読まれ、避けられてしまう欠陥武器じゃ。
その欠点を補うための方策は三つあると、工房のみんなは意見を出しておった。
一つ目はノブナガがしたように数で押す。または、わかっていてもよけきれない、圧倒的な数の弾幕で敵を圧倒する連射銃を作ること。
二つ目は、正々堂々と戦うことなく、隠れ潜みながら遠距離から相手の頭を貫く狙撃銃を作ること。
そして、最後の三つ目は、
「流石に、装備しておらんかった銃の攻撃軌道までは読めまい!」
攻撃の軌道を読み取らせないために、敵が至近距離まで近づくのを待って、何らかの方法で、無装備状態じゃった銃を即座に装備状態にして、至近距離で発砲する。
半ばネタ扱いされておったこの理論を、カイゾウが趣味で作り出したこの籠手が実現しよった。
もとより銃の弾丸の速度は一定の距離さえ取れば避けることは簡単だが、その距離が稼げなければ避けられないという程度には早い。
少なくとも、ワシが直接ナイフをふるうよりかは、よほど素早く相手に攻撃することができる。
無論DSLAとはいえ、それは例外ではない。
「ワシの勝ちじゃ。黒いの!!」
そう宣言すると同時にワシの体にナイフが突き立てられる前に、ワシは引き金をひく。
DSLAの頭部に巨大な穴が開き、DSLAが大きくのけぞった。ナイフの動きは止まり、奴にバッドステータス《貫通》が付与される。
そして、HPがなくなった直後、わずかにポリゴン化するのに時間がかかっているDSLAに、念の為連続で四回引き金をひき、弾倉の弾丸がなくなるまで発砲した。
肩甲骨二つと、脊髄一つ、腰骨に一つ、弾丸の貫通痕が着いたDSLA。
当然HPがもともと1しか残っていなかったやつが、その攻撃に耐えきれるわけもなく、ワシの目の前でDSLAは、真っ黒なポリゴン片となって宙へと消えた。
◆ ◆
「だぁああ……しんどかったわい」
ようやく静寂が訪れた森の中。ワシは、そうため息をつきながら、DSLAを仕留めたその場に座り込み、アイテムストレージから回復薬を取出しそれを口に含む。
レッドゾーンじゃったHPが見る見るうちに回復していくのにホッとしながら、ワシはワシと同じように座り込み、ほっと安堵の息をつくLycaonににやりと笑いかけた。
「どうじゃ? これでもまだワシが寄生プレイ目的の老害じゃとでもいうのかな? 役立たずタンク」
「ぐっ! あのアビリティの発動はあんたも気づいてなかっただろうが!」
散々バカにしておったワシに、あっさりといいところを持って行かれたのが悔しいのか、戦いの後じゃというのにLycaonはワシに食ってかかった。
若い奴は元気でええのう。と、ワシは内心考えながら、ギャンギャン喚くLycaonを無視してドロップ品を確認する。
『フィールドボス ダークスケルトンリーダー・アサシンを倒した
GGY:ダークスケルトンの骨×10 ダークスケルトンの頭蓋骨×2 ダークスケルトンの魂魄 宵闇の革鎧 50000G
Lycaon:ダークスケルトンの骨×5 ダークスケルトンの骨髄 ダークスケルトンの魂魄×2 レイヴンフェザー 50000G』
お、おぅ。両方レアアイテムドロップしとるとは、運がいいというべきか。ところで、この魂魄って何に使うんじゃ? と、アイテム欄では火の玉のようなアイテムアイコンが浮かんでいる不思議アイテムに、ワシが首をかしげていると、
「ぉおおおおおおおおおおおおお! れ、レアアイテム! やった、ようやく俺にも品質☆5以上のアイテムがぁああああああ!!」
なんて号泣しながら、騎士には使えんじゃろうナイフを抱きしめるLycaonが、少しかわいそうになってきた。
最近は職人たちの質が上がったせいで、☆5以上の装備など珍しくはない。前線組なら全身☆7以上の装備で固めておるのが普通と言われるご時世じゃ。そんな中、LycaonやLycaonの仲間たちは、☆5以下の装備で頑張って前線に出ておったようで……。
正直不憫でならんかった。いくら始まりの町でごたごたがあったとはいえ、せっかくパーティーを組んだ縁があるんじゃ。
こんな子供の暴言など忘れて、過去のいざこざは水に流し、一ゲーマーとして、生産職として、こやつらを助けてやるのが年長者の役割ではないかと、ワシの中の心の天使がわしの耳元に囁いた。
その隣ではワシの心の中の悪魔が「何言ってやがる! 言動を見るかぎり、どう考えてもこいつ反省してないだろうが!! もっと苦しみと絶望を与えてやるべきだ!! 今ここでハンマーで頭をすりつぶせ!!」と言ってきよるが、いやいやさすがにそこまで外道な対応はせんって……。
それに、今までこやつらは苦労したんじゃから、それでワシに対する暴言はチャラにしてもエエじゃろう。いつまでもそんな些末なことで怒っておるのは、人生の先達たる年寄りとしてどうなんじゃ。ここは年長者として、ワシの度量を見せてやるのが、今後の良好な関係形成に役立つはずじゃ。
そう思ったワシは立ち上がり、いまだに流れ出る涙が止まっていないLycaonの肩をたたいた。
「まぁ、今日はおぬしのおかげであの化物に勝つことができた。礼を言うぞ、Lycaon」
「あぁ?」
「そこでお礼と言ってはなんじゃが、今からワシの工房にこんか? 無論死に戻りをしておる仲間を連れてな。今回一緒に戦った記念に、ドロップされたアイテムで武器の一つでも作ってやるが?」
「………………………………………………」
そんな唐突なワシの提案に、Lycaonは若干いぶかしげな表情を浮かべておった。それはそうじゃろう。今まで突っかかっていた相手が、突然優しげに話し掛けてきよったのじゃ。そりゃ妖しく思うのも当然じゃろうて。
とはいえ、ワシは今フィールドボスを倒せて機嫌がいい。そのくらいのぶしつけな視線なら、軽く流してやれた。
そして、そんなワシの善意の塊の提案に対する、Lycaonの答えは、
「ふん! ようやく理解したか、俺たちの偉大さを! まぁ、当然と言えば当然かな? おれは、あのDSLAの連続攻撃すら防ぎきった、トップタンカーだから! GGYがついひれ伏して、俺達にイラン苦労をさせたお詫びがしたいという気持ちもわからんでもないけど!」
ブチィ。と、先ほど決めた度量の広さを示すという覚悟はどこへやら。ワシの頭からそんな音が盛大に響くのを感じ、ワシは自分の心の中の天使と悪魔に視線を向ける。
黒い服を着たワシの悪魔は、親指を立てた後下に向けた。
白い服を着たワシの天使は、親指を立てて首をかき斬る仕草をした。
KILL YOU!!
全会一致で可決されたその判決に、ワシはにっこり頷いた後。
「ただし、お主とワシの関係はもはやTSO中に知れ渡っておる。いきなり許したといっても体裁がわるい。そこでお主にはちょっとした試験を受けてほしいんじゃが」
「ほう? 試験」
「なぁに、誰でもクリアできるごくごく簡単な試験じゃよ」
そう言いながらワシは、Lycaonを見つけたらぜひとも連絡をくれと言っていた、ある人物に連絡を取るのじゃった。
◆ ◆
「ほ、本当に! 本当にお爺さん許してくれるって言ったんだよねっ、Lycaon!」
「だ~か~ら~。違うって言っているだろカリン。GGYの方が俺の強さに惚れこんで、『ぜひ武器を作らせてくれっ!』って言ってきたんだよ! まぁ、あっちにも体裁があるから、多少試験を受けてもらうとか言っていたけど!」
「あのあと何があったかは知らないが、ようやくあのGGYに一泡吹かせられたのか!」
よかったよかった! と、笑うクランリーダーと古参メンバーたちの姿に、最近このクランに入った……というか入れられた、女性エルフの《メイジ》――カリンこと川岸凛は、Lycaon――幼馴染たちの楽観的な物言いに得体のしれない悪寒を感じていた。
ただでさえ、お爺さんをゲーム開始直後にいじめたと、彼女が所属するLycaonのクラン《雑踏舞踏》はTSO内で評判がよくない。
ましてや今回武器を作ってくれるといったのが現在生産職のトップグループに名を連ねており、前線パーティーのほとんどが武器を作ってもらっているといわれている、Lycaonにいじめられたお爺さん――GGYだ。
「あの人相手に今と同じ言動をしたのなら、絶対に許されていない……。あぁ、でもお爺さんの装備は欲しいし……試験受けるくらいでもらえるならっ!!」
いまカリンの脳内では、全力で逃げろという警鐘がけたたましく打ち鳴らされている。だが、それとてGGY謹製の装備を天秤にかけると、どうしてもGGYの装備に天秤が傾いてしまうのだ。
今まではろくな装備がなかったせいで、一般的前線組が悠々と切り抜けられるダンジョンで、滅茶苦茶苦労する毎日を送ってきた。
それに、たまにいい武器を手に入れたとしても、武装の手入れを引き受けてくれる職人が一切おらず、その武器も耐久度がなくなればポリゴン片にするしかない毎日を送っていたのだ。
そんなわけで、GGYから形だけでも許したことにしてもらえる試験を受けられるという事実は、《雑踏舞踏》にとってはまさしく、極楽から降りてきた蜘蛛の糸なのだ。縋らないという選択肢は取れない。
「Lycaonにはあとで土下座なりなんなりさせて謝らせればいい。せめて試験に合格して交渉できる立場に上げてもらわないと……このままじゃ、うちのクランはつぶれるっ!!」
脳内の警鐘を精神力でねじ伏せ、決死の覚悟を決めたカリンは、とうとう見えてきたメーカーズが統治する職人街の入り口に視線を向け、
「ようこそ~。青髪眼鏡さん。まっていたよ?」
そう言ってにっこり笑う、ネーヴェ率いるトップパーティー《ゴールデンシープ》の面々を見たときに絶望した。
小規模なクランを指す際に使われる《パーティー》という呼び名。基本的にメンバーが3~5人のクランを指す時に使われるその呼び名にたがわず、ゴールデンシープの面々は基本的に、四人一組で動いているクランだ。
だがその戦力は一騎当千。つい最近で有名な武勇譚は――オークロードの討伐。巨大ダンジョン《森の離宮》にてオークが大量発生したイベントがあったのだ。原因は森の離宮にポップしたオークロード。それのアビリティによってオークのリポップ速度が極端に早くなり、森の離宮は足の踏み場がないほどのオークによって占拠された。
普通なら100人規模で駆除に当たらなければならない、レイド級イベント。
だけど、ゴールデンシープの面々は森の離宮に4人で切り込み、見事オークロードを討伐。あっさりとイベントに幕を引いた。
そんな伝説をうちたてた面々が、いまカリンの目の前にいる。
「ゲーム初日でおじいちゃんに働いた無礼の数々、ここで償ってもらうからね♡」
「お前のせいでGGYをうちの専属にできなかったんだぞ……。覚悟はできてんだろうな?」
「こらこら二人とも落ち着きなさい。ここは冷静に、沈着に、最もあの子たちが嫌がることをしてあげましょう」
「リナリナ……それ落ち着かせてない。えぇっと……まぁうちのクランの総意はこんな感じで、ごめんね? じゃぁ、とりあえずお爺さんに頼まれた試験、初めよっか? 合格条件は、我々ゴールデンシープとのパーティーデュエルに勝つこと。単純でしょ?」
敵意むき出しで。背後に阿修羅を浮かべて。デュエルの申請をこちらのクランに飛ばしてきて……。
この時、カリンは心の中で決意するのだった。
このクラン……もう抜けよう。と、
◆ ◆
そのころ、職人街入口にあるスティーブの食堂――《クッキングメーカー》では、
「GGY。ダークスケルトンリーダー・アサシンのレアドロップ自慢するのはいいが、店先が騒がしい理由について何か知っていないか? 悲鳴とかきこえるんだけど……」
「ん? いや。ちょっとした復讐をしとるだけじゃけど?」
「そ、そうか……」
銃制作にかかわった職人連中に銃の活躍を報告するため、真っ黒な皮鎧を掲げて戦いの様子を笑顔で語るGGY。
そんな笑顔が一瞬にして消えて、能面のような表情になってから返されたその返答に、スティーブは顔をひきつらせて黙るしかなかった。
『無理無理無理っ!? 勝てない勝てない勝てない勝てないギャァアアアアアアアアアアアアアアア!?』
そんな悲鳴を上げる店先の誰かの冥福を、祈りながら。
キャラクター名:GGY
種族:ドワーフ
筋力:355→459
防御力:58→66
魔力:34→38
器用:287→365
素早さ:32→34
メインスキル:《ハンマーLv.30》→《騎士鎚Lv.25》
サブスキル:《武装鍛冶Lv.26》→Lv.30(カンスト)
《玄人眼Lv.22》→Lv.30(カンスト)
《採掘Lv.30》
《器用超上昇Lv.25》→Lv.27
《筋力超上昇Lv.28》
《魔法干渉Lv.18》→Lv.22
NEW!!《異世界武器Lv.5》
控え:《金属細工Lv.22》→Lv.29
《製図Lv.5》→Lv.15
銃制作に熱中している間に生産系スキルが一気に伸びた感じ。ただ金槌振るっているだけではあまり筋力値は上がらなくなったということで、途中で生産用に金槌を一番重いハンマーに変えて、筋力値はようやくこの数値に。
Lv.28から一気にレベルが上がりにくくなるだろうなということで、筋力値超上昇のLEVELも据え置きということになりました。
キャラクター名:Lycaon
種族:ヒューマン
筋力:301
防御力:310
魔力:182
器用:175
素早さ:199
メインスキル:《ナイトLv.28》
サブスキル:《地図製作Lv.30》
《踏ん張りLv.21》(相手の攻撃でのけぞりにくくなる)
《強化魔法Lv.25》
《自己回復Lv.30》
《防御力加算Lv.1》
《魔法干渉Lv.28》
《鑑定Lv.19》
控え:《調薬Lv.11》
《整備Lv.5》(フィールドでも自分の武装の耐久値をある程度回復できる。ただし材料は必須の上、専門の人間に直してもらうより効率が悪い)
Lycaonのステータスです! え、別に知りたくなかった? いや、一般的なプレイヤーの例としてですね……。
ナイトはステータスをオールマイティにあげてくれることもさることながら、《盾》《挑発》《片手武器全般》という三つのスキルを併せ持っている、優秀な前衛タンクジョブスキルです。そのため、基本的にはその三つ関係のスキルを入れていません。
Lycaonがこの上さらに防御加算系スキルを取っているのは、この上にもう一つ、隠しスキルに進化する方法があるんじゃないかと睨んでのこと。とはいえ、今の世界ではスキルの進化は一回しかできない仕様ですが。
あとは基本的に生産職の協力が得られないため、そちらの仕事を自分たちでやれるように、生産系スキルを取得している感じ。とはいえ本人たちにやる気がないので、伸びはいまいちなうえに行っている生産方法は、大量生産向きメニュー画面でやるやつなので、いまいち伸びてはいないよう。