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リベンジ!!

「ついに……ついに完成じゃ!!」


 真っ暗になった夜のTSO世界。星の明かりと溶鉱炉の炎に照らされたワシらは、ついに完成したその武器を見て、歓喜の声を上げる!


『アイテム名:異世界の六連式小型投石器

 性能:筋力+245 武装アビリティ《リロード》《ショット》《装備者筋力ステータス無効》

 内容:鍛冶師GGYが作り出した投石器。この世界には存在しない概念で作られた投石器。本来人力で飛ばすべき団栗型礫を、火薬の力で飛ばす。これによって飛ばされた礫は高速回転を行い、装備している人間が狙った場所を正確に貫く。

 六連続のショットが可能ではあるが、六発打ち終わったらリロードをしなければならず、12発以上撃つと30秒のクールタイムが必要になる。殺気が乗りやすく、攻撃の軌道が高い確率で読まれるうえ、攻撃時に起こる反動によって、筋力がないものはダメージを負うこともある。

 また小型化されているため、威力は《異世界の投石器》としては低め。

 品質:☆☆☆☆☆★★』


 相変わらずそのままの弱点もあるが、命中率の不備はとりあえず改善できたし……準備は万全じゃな!!

 ワシはそう思いながら、後ろを振り返りワシと共に油まみれになりながら、この武器の完成に立ち会ってくれた職人たちに頭を下げた。


「諸君……つらく厳しく長い道を、よくワシとともに歩いてくれた。感謝する」

「水くせぇこと言ってんなよ、爺さん!」

「そうそう! あんたとこれを作れて面白かったぜっ!」

「た、単純な善意だけというわけではないですけどね。ぜ、絶対この武器を欲しいっていう人はいますからね……作り方を知っていれば、かなりの儲けが期待できますし」

「意訳すると『べ、べつにあんたのために手伝ってあげたわけじゃないんだからねッ!!』と言っています」

「ちょ!?」


 人を勝手にツンデレにするな!! と、憤りながらリアルでは弟だというエルフ鍛冶師を殴る、ドワーフ少女に周りにいた職人たちは笑い声をあげる。

 そんな皆の暖かい空気に包まれながら、


「決戦は明日……。ワシが目的を果たした時……この武器の名はTSO中に轟くじゃろうっ!! みな、見ておってくれっ!!」

『おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』


 ワシの作業場に、幾人もの鬨の声が響き渡る。

 ワシはその声に高揚し、絶対明日の戦いに勝つと決意し……そして、


「うるせぇえええええええええええええええ!! 何時だと思ってやがるっ!!」

『さーせんっ!!』

 スティーブにガチ説教されてしまった……。



              ◆         ◆



《攻略掲示板》

スレッド名:黒骨の森攻略スレpart18

1:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○

 黒骨の森の情報を交換しましょう。

 隠しステージとか通路とか見つけたときは、良ければ公開しましょう。

 フィールドボスの出現情報も募集中。

 みんなで仲良く、黒骨の森を攻略しましょう。

34:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○

 アサシンやべぇよアサシン……。気が付いたら首にナイフが刺さってた……。


35:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○

 あぁ、また★付きか……これで何人切りだったか?


36:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○

 ここで上がっている被害を計算すると、もうそろそろ5人行くな……。


37:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○

 GGYがはじめの被害者だって話だけど、リベンジは難しそうだな。


38:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○

 職人街より推参!! 何を言っている、GGYには秘密兵器ができたから大丈夫だっ!!


39:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○

 お、とうとう完成したの?


40:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○

 おめー


41:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○

 何の話?


42:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○

 いや、でも難しいだろ。いくらGGYがアレ完成させたからって


43:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○

 え? なんで? わけがわからないよ/人◕‿‿◕人\


44:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○

 職人は知らないか……。実はフィールドボスの発生条件には、定期的な出現以外にも要素があってだな……。


45:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○

 ねぇねぇ、GGYが何完成させたの?


46:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○

 >>45 過去ログ見てこい。ここのPart15くらいだ


47:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○

 モンスターもスキルのように進化するんだよ。

 フィールドの適正レベルか、適正レベル以上のプレイヤーを三人切りすることで★付きになってステータスが上がり、五人切りをするとフィールドボスになる。


48:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○

 最近《黒骨》で噂になっている★付きがいてな。GGYを殺してルーチン進化させたこいつは、今5人切りをしてフィールドボスになったはずだ。


49:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○

 黒骨にて確認。

 定期時間外に沸いたフィールドボス発見。『ダークスケルトンリーダー・アサシン』だよ!


50:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○

 言ってるうちに来たか


51:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○

 明日は荒れるぞ。進化でフィールドボスになるモンスターは、レアドロップを落としやすいからな……トップクランの連中がこぞって狩りに来る。

 GGYが狩る前に、他のクランがかっちまう可能性の方が高いだろうな。


52:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○

 いや、べつにGGYもそのダークスケルトンアサシンにはこだわってないから……。

 とりあえず、自分に辛酸をなめさせ続けたダークスケルトンアサシン倒したいだけであって、フィールドボスになった奴にわざわざ喧嘩売りに行ったりしないだろう? ソロだし。


53:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○

 ですよねー(´・ω・`)




              ◆         ◆



「ふむ……今日はやけに人が多いな?」


 ワシ――GGYは、いつもの金属鎧の上に、腕全体を隠す長袖の灰色コートを着込んで、黒骨の森にやってきておった。

 このコートは、ワシが黒骨の森にいくために、特殊なガントレットを隠すことができる長い袖のコートを探しておった時に、エルが渡してくれたもので、石毛鼠の体毛から作り出された《石毛糸(せきもうし)》から作られた一品じゃ。


『アイテム名:火鼠の皮衣

 性能:防御力+257 素早さ-15 素早さ+10 属性ダメージ-5% 切断系ダメージ-5%

 内容:裁縫師L.Lが作り出したロングコート。岩のように固く、耐火性に優れた繊維で編まれており、防御力には秀でている。ただしその重量はとてつもなく重く、装備者の足取りを重くする。

 施された刺繍によって、速度上昇の加護を受けている。

 品質:☆☆☆☆☆★★★★★』


「気合の入れたものを作ってくれたのう。これはますます、期待にこたえねばならんわ!」

「そう簡単にいくかな?」

「む?」


 なんじゃいきなり? と、ワシは突然声をかけられたことに驚きながら、声が聞こえた方へと視線を向ける。

 そこには、青くカラーリングが施されたうえに、彫金と思われるおざなりな銀の線が施された鎧に身を包んだ、青い短髪の眼鏡をかけた青年がいた。

 周りには彼のパーティーメンバーと思われるメンツがいて、とげとげしい視線でワシを睨み付けてきよる。


「はて?」


 こんな知り合いおったかのう? とワシが首をかしげる中、眼鏡をかけた青年がワシに近づいてきた。


「まさかあの爺さんが、前線に出てこられるようになるとは……少し意外だったよ。掲示板でも結構騒がれているみたいじゃないか」

「はぁ?」


 この口調から考えるに、きっと過去に会ったことがあるはずじゃ……。思い出せ……このまままともな返事ができんままでは、失礼じゃろうっ!? と、ワシは必死に頭を悩ませながら、気安く話しかけてきてくれた相手の名前を失念していたという、気まずい状況を回避しようとする。

 しかし、そんなワシの態度は最初から気にかけておらんのか、眼鏡の青年はそのまま気のない返事をするワシに、マシンガンのように話し掛けてきよった。


「だが、あんたに好意的な連中ばかりではないことは知っておくべきだね。最高の鍛冶職人としてもてはやされているから、調子に乗っているのかもしれないが……鍛冶屋は自分の店で鉄でも弄っているのがお似合いだよ」

「むっ」


 そして、思い出せないうちに何やら罵られた。

 仲が良かった……というわけではないのか? と、ワシは内心で首をかしげる。

 そのとき、ワシは天啓を授かった。

 そうだ……仲が良くなかったのならっ!!


「なぁ、お主」

「あ?」

「だれじゃったっけ?」

「………………………………」


 別に気まずくなってもいいじゃないかとっ!!

 そう判断したワシがそう聞いた途端、眼鏡の青い騎士はすーっと大きく息を吸い込んだ後、


「忘れられているっ!?」


 大きくのけぞり、ブリッジするかのような体勢になって絶叫を上げるのじゃった。



              ◆         ◆



「えぇ!? マジで!? マジで忘れちゃっているのかっ!?」

「すまんなぁ……最近物忘れが激しくて。全然思い出せんのじゃ……いやマジで誰じゃったっけ? もしかして、大学時代一緒じゃった、吉田君? あの時は5万の借りたまま放置してすまんかった。まぁ、友人に貸した金なんて返ってこないのが当然じゃしな?」

「ちげぇよっ!? 誰だよ吉田くって!? あと何開き直ってんだクソジジイっ!!」

 金はしっかり返せっ! と、怒号を上げる吉田君(仮)に罵られ、ワシはあることを思い出した!

「そうじゃっ!」

「よ、ようやく思い出したか……」

「金は半年前の同窓会の時に返していたのう……」

「そっちはどうでもいいんだよぉおおおおおおおおおおおおおお! いや、吉田さんにとってはよくないだろうけどぉおおおおお!」


 暗い森の中で、青髪眼鏡の怒号が響き渡る。まったく、近頃の若いもんはカルシウムが足りておらん……。


「で、吉田君じゃないなら、いったい誰なんじゃお前ら?」

「ゲーム開始直後にもめたろうがっ!! あれのせいで俺たちは……俺たちはっ!!」

「ん? ゲーム開始直後?」


 何かあったか? と、ワシは首をかしげる。

 えっと……ログインして……孫に会って……スティーブにあって。


「おいおい、本当にあっているのか? お主なんて顔も名前も思い出せんのじゃが」

「記憶から抹消されているだとっ!?」


 まぁ、この態度から見るに、どうやらあまり良くない出会い方をした類の連中らしいし、ただでさえ物忘れが激しい今日この頃。覚えておらんということは、ロクな奴ではない、クソみたいな蛆虫やろうじゃったということじゃろう。


「いや、確かに名乗っていないから名前は知らないだろうけど……。もっと……もっとこう、さぁ!! お前のせいで生産職に相手にされなくなったり、あんた勧誘できなくなった前線連中につるし上げられたり……仕方なくNPC装備をしていたせいで、PK連中にいいカモにされたりして……苦労した俺達に何か言うことないのかよ!?」

「そういわれてもなぁ……」


 いや、本気で何したか思い出せんし……。悪いのう。と、ワシはとりあえず謝ることしかできなかった。

 ほんとに誰だったかのうこいつら……。喉辺りを通り過ぎて、舌先まで来ている気がするんじゃが……。


「ふ、ふん! もういいさっ! とにかく、テメェの仇討の相手は俺たちがしとめるからなっ!! せいぜいあんたは、ここで指をくわえて自分の獲物を横からかっさらわれるのを眺めていりゃいいさっ!!」


 青髪眼鏡はなぜか半泣きになりながら、ノシノシと自分の仲間を伴い、黒骨の森の奥へと入っていく。

 そんな彼らを見送った後、


「さて、意趣返しがてらのからかいもできたし……さっさとダークスケルトンアサシン入りのパーティーを探すかのう」


 すっかりわすれていた……フリをしてやった、憎き青髪眼鏡たちの情けない顔に、気分爽快になりながら、ワシはダークスケルトンを探しに行く。

 ずいぶん苦労したようじゃのう、あいつら。いい気味じゃ。



              ◆         ◆



 獲物は割と速く見つかった。

 そして数分で狩り終えた……。


「楽すぎたのう……」


 頭蓋骨に風穴を開けて倒れ伏すダークスケルトンアサシンを眺めながら、ワシは六連式小型投石器――呼びにくいから今後は《暗器銃》と呼ぼう――の装備を解除する。

 同時にアイテム欄を開き、お目当てのアイテムがきちんとドロップしておるかを確認した。


「おぉ! おちとるおちとる、《ダークスケルトンの骨》これでちょっとした浪漫武器が完成するかもしれんから、大事に持っていかんとなぁ」


 ダークスケルトンの骨の特性。ワシはそれを思い出しながら、ほくほく笑顔でこの骨を加工する方法を考えている。

 ダークスケルトンの骨の特性。それは、


『アイテム名:ダークスケルトンの骨

 内容:素材アイテム。ダークスケルトンの体を構成する骨であり、魔力を吸収する特性がある。これはダークスケルトンが、骨が吸収する魔力で動いていたためであり、この魔力を使って通常のスケルトンには出来ない動きを実現していた。

 魔力を込めることができ、魔法の素材にはうってつけ』


「つまり、これで弾丸を作ることができれば……各魔法効果を持つ弾丸を撃つことが可能な銃ができるということ!」


 世に言う魔法銃という、現実世界にはない銃。銃制作のおり孫から「おじいちゃん自重して! 世界観考えてっ!!」とさんざん言われてしまったから、ならばと銃制作段階から考えていたファンタジー的な銃。

 せっかく暗器銃もできたのじゃから、どうせならそのくらいのものも作ってしまおうとワシは考えておった。


「もっとも、制作陣は『鉛玉を撃ち出すから浪漫があるんだ!』というやつと、『魔弾の射手とか燃えるだろうがっ!!』というやつと別れておるから、作る人数は割と減ってしまうじゃろうが……」


 まぁ、弾丸作るくらいじゃしいいか。と、ワシは一人思考を完結しながら、本日の目的は達成したということで、さっさと帰り支度を始めた。

 その時じゃった。


「ギャぁああああ…………」

「ん?」


 森の奥から響き渡る悲鳴らしい声。

 何じゃ一体? と、ワシはクエスチョンマークを浮かべながら、悲鳴らしき何かが聞こえた方へと視線を向ける。

 すると、


「え!?」

「死ぬっ! マジで死ぬぅウウウウウウウウウウウウウウ!!」


 先ほどワシに啖呵きった青髪眼鏡が、木々の隙間から飛び出してきた。

 どういうわけか今はひとりきり。重そうな鎧がっちゃがっちゃならし、必死の形相で走っておる。

 何じゃ一体? と、ワシが思ったその時。


『おそい……おそい……』

 木の葉がかすれるような声と共に、青髪眼鏡が飛び出してきた隙間から、何かが勢いよく跳躍し、青髪眼鏡どころかワシすら飛び越えて、ワシらの進路を塞いだ。


「え?」

『シシ死しシ死シしシ死シし死しシシ死……』


 驚くワシに対し、ワシらを飛び越えた何かに驚いた。ダークスケルトンアサシンと思われるが、体格が普通のダークスケルトンアサシンの1.5倍ほどある。

 身に着けている装備も、普通のダークスケルトンアサシンとは違ったもので、どこから素材を集めたのかはわからないが、間違いなく品質がよさそうな漆黒の皮鎧と、つや消しが塗られた漆黒の短剣を装備している。

 慌ててワシは、その装備に向かって目を凝らす。

 鑑定スキルの時は使えなかったが、《玄人眼》スキルに進化させてからは相手の武装の品質がわかるようになり、いろいろと重宝しておるのじゃ。まぁ、性能までわからんのは珠に傷じゃが。

 そして、玄人眼が告げた品質と武装の名前は、


『アイテム名:宵闇の皮鎧

 品質:☆☆☆☆☆★★★★★』


『アイテム名:レイヴンフェザー

 品質:☆☆☆☆☆★★★★★』


「………………………………………」


 その品質の高さを見て、ワシは思わず顔をひきつらせた。

 間違いない……このダークスケルトン、黒骨の森のフィールドボスじゃっ!!


「なんちゅうもん連れてきとるんじゃ。貴様ぁああああああああああああああああああああああ!!」


 MPKの主犯として絶対掲示板に名前上げてやるっ!! と、ワシは固く決意しながら、とにかく生き延びるために武器を手に取った。

 せっかく手に入れたダークスケルトンの骨を、デスペナルティで落としてなるものかっ!! と。


 銃の細かい運用方法に関してはまた次回。

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