銃
「銃を作ろうと思うんじゃ」
「いきなりなんだ?」
店を開けてから数時間後。現実世界ではすっかり日が落ちて、もうそろそろ主婦連中は夕食の用意を始めている時刻。
真っ黒なターバンで顔を隠した、漆黒のマントと皮鎧を着た褐色肌のエルフが現れた。
無論ダークエルフではない。そんな種族は現段階では存在しとらんし……。
こやつの名は《YOICHI》。TSOでは「使用難易度エクストリーム」とか囁かれておる、《弓矢》を専用武装にした変り種じゃ。
元々、《那須与一》が好きな歴女だったらしく、このゲームを始めるなら絶対弓矢を使うと決めておったらしい。
とはいえ、本人の希望とは違い、今では弓矢による狙撃を主とした、暗殺を得意とするバリバリの狩人プレイヤーじゃが……。弓を持つ侍になれんかったかわいそうな奴じゃ……。
とはいえ、その実力は前線で戦うには十分な物。というか、この前流れておったCMのアーチャーがこいつじゃ。
週間モンスター撃破数ランキングでは常に上位に入り、もしかしたらプレイヤー最強なのではないかと言われておる。
「第一、弓矢にかかわらず、遠距離の物理攻撃武装が敬遠される理由はGGYだって知っているだろう?」
「まぁ、お主の苦労話ならしこたま聞かされたからな」
そして、ワシが始まりの町の職人街におったころからの常連でもあった。
YOICHIは、ため息をつきながらワシが開いた鍛冶画面を連打して、次々と量産していく、全身鋼鉄製の矢を持ちながら、鼻を鳴らす。
「確かに遠距離物理攻撃武装の利点は多い。どれだけ弱い武器であったとしても、最低限片手直剣くらいの筋力値のプラスがあるし、弓矢に至っては大剣クラス。私がこの前進化させた大弓なんて、近距離武器最強と言われている、ハンマーに匹敵する攻撃力がある。おまけに、投擲した武器が突き刺さるだけで《貫通》の状態異常が相手に付与されて、放ったプレイヤーの総合筋力値の一割を10秒ごとに削り続けるのも魅力だ。継続時間は3分と長いしな」
言われた通り、それだけ聞くと弓矢などの遠距離物理攻撃武装は、ダメージディーラーの武装としてはこの上なく優秀じゃ。
「だがしかし、命中率に難がありすぎる。この武装の命中率は基本的に器用値依存だが、武装の補正ありきで100を超えたところで命中率が五割行くかどうかだぞ? 武器の取り扱いには高いプレイヤースキルが要求されるし、何より実際攻撃する《矢》は《投げナイフ》といったものが消耗品だ。爺さんみたいに片手間で作ってくれる腕のいい職人にであえれば別だが、それまでは地獄の道のりだ。初心者プレイヤーから始めたときの、私の金欠地獄は、爺さんだって知っているだろ?」
「まぁのう……」
実際銃を作るにしても、弾丸は必ず消耗品になるじゃろうし、そうなると投資費用は莫大なものになるはずじゃ。
まぁ、ワシは金があるし、素材さえあれば自作が余裕なのでどうとでもなるが。
「なにより、ここはファンタジー世界だ。いくら自由度が高いって言っても、システム的に銃なんてものが、認められるわけがない」
トドメと言わんばかりに発せられたその一言に、ワシは苦笑いをしながら、肩をすくめた。
「まぁ、普通ならそう思うじゃろうな。じゃが、じつは改造が、最近面白い鎧を作り出してな」
「なに?」
なんだそれは? と、YOICHIが首をかしげるのを見て、ワシは笑いながら改造が自分で撮影した、あの武装の実験映像を見せる。
最初に画面いっぱいに映ったのは、ある胴鎧のステータス画面じゃった。
『アイテム名:異世界の飛翔鎧
性能:防御力+205 武装アビリティ《飛翔》《パラシュート》
内容:鍛冶職人MA☆改造が作った飛翔鎧。この世界には存在しない概念で作られた鎧。背中についた二本の筒から炎が吹きだし、どういう原理でかはわからないが空を一時的に飛ぶことができる。ただし操作性に難があり、上昇するだけ。水平方向への飛行移動は至難の技。着陸の際は、右肩にあるボタンを押してパラシュートを開かないと落下ダメージを食らう。
強度にやや難があり。
品質:☆☆☆☆☆』
「ブースターを作るって騒いでおったが……まさか完成させるとはおもっとらんかった」
「バカなんじゃないか、あいつ」
動画の中で奇声を上げながら、ジェットエンジンで空の彼方へ消えるカイゾウに、YOICHIは冷ややかな視線を向ける。
いや、お前とてロマンを求めてしつこく矢を使い続け取るじゃろうが。と、よほど言いかけたが、どうせそれを言うとこじれた言い合いになるのは、年の甲で分かっておったので、年よりのワシは黙っておいた。
「こいつが実用化されるくらいじゃ。システム的に銃が存在せんってことはないじゃろう」
「まぁ、多分ね。ここの運営妙なところで力を入れているし……」
銃くらいならむしろありえすぎる気がしてきたよ……。と、若いくせにどこか達観したような目をするYOICHI。どうやら運営の妙な気合の入れ方についていけないらしい。
「でも、やっぱり遠距離物理攻撃武装はお勧めしないよ。茨の道だからね。大体お爺さん……お爺さんが倒したいのはダークスケルトンアサシンだろ? 近接と攻撃速度に不安があるんだったら、短剣なりなんなりの超近距離武装でいいじゃないか? 無手でも《格闘》スキルを取れば、爺さんなら結構な攻撃力たたき出すと思うんだけど」
「たわけ。弓矢なんてネタ武装つかっとるくせに、浪漫がわかっとらんのう、お主」
「悪かったねぇ、ネタ武装で!」
ワシの苦言に顔をひきつらせながら、ターバンの下で頬を膨らませるYOICHIに苦笑しながら、
「ワシがいまさら短剣なんてもったところで、前線プレイヤーの短剣使いとほとんど遜色ないあ奴に勝てるわけがないだろう。格闘もまたしかり。全身鎧では、奴をとらえるほどの速度はえられん。勝つためには必要なんじゃよ……。ワシの鈍足を補ってくれる、あ奴の速さを凌駕する速度の攻撃を放つ武器が。おまけに、幾ら小さいものを作るといっても拳銃じゃ。中距離程度の射程があるじゃろうから、メイジやアーチャーを倒す時にも活躍してくれるじゃろうしな。一石二鳥じゃ! 何より銃には剣とはまた違った浪漫があるしのう! 作らん手はない!」
「そう、うまくいくかなぁ? そんな妙な物つくるより、近接スキル取った方がまだ現実的だと思うけど?」
ワシがせっかく理路整然とした答えを展開してやったのに、YOICHIの奴いまだに半信半疑の視線を送ってきよる。失礼な奴め!
「ふん! 何じゃなんじゃ! 銃なんて熟練の職人の技がいらん量産武器じゃろうが。作るのにそんなに苦労せんわっ! ええわいっ! そんなに言うんじゃったらまずは実地で検証してやるっ!!」
とうとう意地になったワシは、この場で即席の銃を作り、目の前の弓バカをあっと言わせてやることにするのじゃった。
◆ ◆
店の看板をクローズにし、ワシはそのまま工房に入る。実地での検証を見てもらうために、YOICHIも一緒に入ってきた。
「あれ? 爺さんもう店じまいか?」
いつもより早いな。と、声をかけてくるのは、夕食の仕込みを自分の厨房でしておったスティーブじゃ。夕食時にはまだ早い時間なので、スティーブの食堂は少し閑散としておる。
エルはまだ帰っておらんのか、作業場は空いておった。
「うむ。ちと新しい武器を作ろうと思ってなっ!」
「おいおい、作るのはいいけど、カイゾウみたいな妙なものは作るなよ? あの飛翔鎧とか言ったか? ブースターが空中で爆散したあげく、パラシュートが開かなくてえらいことになったろうが」
「…………………………」
YOICHIのジト目がワシの背中に突き刺さるが、わ、ワシはそんな失敗しないわいっ!!
ワシはそのジト目から逃げるように、炉に火を入れてアイテムストレージから金属のインゴットを取り出す。
今回使う金属は、前線で使われている魔法鉄――《黒鉄鋼》じゃ。
《地属性》の魔力を取り込んだ鉄で、非常に硬い黒い金属じゃ。モース硬度的にはダイヤモンドに引けを取らんらしく、これを使った武器の耐久度はかなりの物。とはいえ、衝撃をもろに伝達するようになっとるから、武器として使うにはひと工夫必要じゃが……。
「まずはこれで、筒を作って」
前線で使われておる最新型の炉は、放り込んだだけで粗鉄から鉄を作り出すことができる優れものじゃ。当然強度が高く、耐熱性も非常に高い魔法金属とて、柔らかくできるほどの火力を実現しておる。
炉の中で見る見るうちに形を失っていく黒鉄鋼。それは幾分かの不純物を取り除かれた後、炉の下あたりに設置された筒から流れだし、ワシが作った鋳型へと入っていった。
この鋳型は、試験用として試作しておいたおった火縄銃の銃身の型で、火薬に点火するための小さな穴が開あいた、片方の出口を覆った鉄パイプのような形状になるように作ってある。
無論中には、弾丸を回転させるライフリングつきじゃ。そこは妥協せんかったぞっ!!
そして数分後。黒鉄鋼がちょうど覚める頃合いに鋳型を割り、中から銃身を取り出す。
すると……。
「……………………………」
「ライフリングのせいで、銃身の中にある鋳型が取れないんじゃないのか?」
「だ、大丈夫……コルク抜きで貫いて回転させれば……」
な、何事もなく鋳型から銃身を取り出すことに成功したワシは、作業場の裏に作ってある、武器試験用の庭へと飛び出し、作り出した重心に火薬を装填。つぎに、鉛で作った先をとがらせた爪のような形状の弾丸を銃口から押入れ、アイテムボックスからマッチを取出す。
「的に向かって銃口を向け……」
「ねぇ、本気でやるの?」
「あたりまえじゃっ! ここまで来て何を言っておるっ!!」
この期に及んでまだそんなことを言うかっ! と、ワシは「やめといた方がいいって」といってくるYOICHIに噛みつきながら、
「発射っ!!」
火薬が見える、銃身の穴へと火のついたマッチを投げ入れた。
銃身が爆発し、ワシの体に無数の破片が突き刺さった……。
◆ ◆
「銃身の強度不足による腔発だね。固ければ爆発の圧力に耐えられるというわけじゃないんだよ? 銃っていうのは計算されつくした銃身の厚みと、長年の研究によって生み出された火薬の黄金比と、何人もの研究者が考えつくした最適な弾丸の形によってはじめて威力を生み出す、強力な量産武器になったんだ。おじいさんが全部目分量で作った銃がまともに使えるわけないでしょう」
「はい……」
安全エリアだったがゆえに、かろうじて傷は負わずに済んだワシは、YOICHIに正座させられ、お説教を食らっておった。
この年にして説教とは……いっそ新鮮な気分じゃ。
「もう銃を作るのをあきらめろとは言わないけど、作るなら作るで、もう少し銃の知識を深めることをお勧めするよ。今までの武器みたいに失敗したら「あぁ、失敗してもうた……」で終わる武器じゃないんだからね」
「はい……」
取りあえず今回の暴発……腔発? で、ワシの知識が足りんことは十分わかったので、ワシはおとなしく現実世界に帰って、銃に関する知識をあさることにしたのじゃった。
◆ ◆
「いらっしゃい……おう、なんだ、お前か」
「客に対してその態度はなんじゃ」
「せめてうちの本一冊でも買ったら、態度を改めてやるよ」
銃に関しての資料を集めるため、朝の散歩の時間を少し伸ばして、図書館やなにやらに足を運んだワシ。
とはいえ、流石は銃刀法が行き届いた社会というべきか、地元の図書館には銃関係の本は数える程度しかおらず、ましてや詳細な製造方法など記載されている本は皆無といってよかった。
国会図書館にでも行けばあるいはあるかもしれんが……ワシの地元は東京から遠いしのう。
というわけで、一縷の望みをかけてワシは以前話しておった、昔なじみが店主をしておる、小ぢんまりとした古本屋へとやってきたわけじゃが……。
「やっぱりないのう。使えんわい」
「おいこら。ちょっと本探しているなと思えばそれか」
ワシの台詞に、そいつは顔をしかめながら、斜に構えた煙草を揺らす。もう年だというのに、いまだにヘビースモーカーとは……まったく理解できんわい。
「ったく、いったい何探してんだよ? 何だったら探すの手伝ってやるが?」
「本当か? 実は銃の製造に関しての資料を探しておっての……」
「……………………………犯罪でもしようってのか?」
「いや、そんな警戒心むき出しにせんでも……」
なんでそんなことせにゃならんのじゃ。と、ワシが逆に呆れながら問うと、それもそうかと肩をすくめながら、そやつは一冊の本を持ってきよった。
本……というか、古文書?
「なんじゃこれ?」
「雑賀衆って知っているか?」
「ワシらの世代の戦国ゲームでよく出ておったやつらじゃろ? 戦国○双とか、戦国B○S○R○とか……。鉄砲隊の傭兵という印象が強いが……」
「そいつらが銃を作る際の虎の巻として遣っていた書物なんだそうだ。どこまで本当かはわからんがな」
「ほう……」
そいつは面白そうじゃ。と、ワシは思いながら、触れるだけで崩れてしまいそうなボロボロの和紙にそっと触れながら、本のページをめくっていく。
そこには、銃身を作るための鋳型や、火縄銃の基本的構造。
そこから発展した、連射式銃を作ろうとして、失敗した記録などが書かれておった。
「これ本物だったら相当価値があるものじゃないのか?」
「何言ってんだよ。戦国○双とか、大河ドラマとかで滅茶苦茶掘り返されているやつらだぜ? 研究なんてほとんどやりつくしているだろうし、いまさらその程度の書物持って行ったところで、大した扱いは受けねぇよ」
「本当か?」
古文書というだけでかなり格式高い気がするのじゃが……。と、ワシは裏返したり、表紙を見つめたりして、何とかこの古文書の正体を探ろうと試みる。
「それに、その本売りに来たオッサンもなんとも胡散臭い奴だったしな。というかありゃ、ホームレスだな。何日も風呂に入っていない臭いを漂わせていたし、この本の扱いもかなり雑だった。金に困っているようで、泣きながら必死に「買ってくれ!」って頼みこむもんだから、50万ほどで買い取って、これで新生活始めろって送り出したんだが……こんだけぼろくて保存状態も悪いと、価値はほとんど0っぽくてな」
「よくそんなものに50万も出したな……」
いやだってかわいそうだろ~。と、損をしたとは分かっているのか、何とも言えない顔で机に突っ伏す昔なじみに、ワシは思わず苦笑いを浮かべる。
こいつは学生の時からそうじゃったなぁ。金貸してくれと本気で困っている友人に頼まれたら断れなくて……。そして、その金が結局帰ってこずに泣くという。
実家の古本屋をついでからはさすがにその悪癖は鳴りを潜めておったが、年を取ったからか、その癖が再発してしまったのじゃろう。
「というか、50万って即金でって……儲かっとるのか?」
「ぼちぼちだって言っているだろ? 親父に世話になったっていう政治家さんが多くてな。たま~に顔見せて高い本を買ってくれるから、火の車ってわけじゃねぇんだけど。今月は赤字だな」
そういえば、こいつの親父さん、元は奇書や古書専門の収集家で、世界中をまわっとるうちに、ちょっと驚くような人たちに顔が効くようになったとか、噂で聞いたことがあったのう。
まぁ、ワシらが学生の頃の話じゃから、都市伝説の類だと今は笑い飛ばしておるが……。
「まぁ、ええわい。とにかくせっかくの御前からの善意なんじゃし、ありがたく借りていくぞ」
「おう。そのうち返せよ。本当は明後日辺りに年代検査してもらおうって、大学の方に連絡付けていたんだから」
「了解じゃ! 大して時間はかからんから、今日中には返すよ」
ワシはそう言いながら、手を振り古文書もどきを抱えて、ひとまず家に帰って行った。
◆ ◆
《製図》スキルとは、いわゆる《設計図》制作のスキルじゃ。
この機能は驚くほど多岐にわたり、自分が作る武装の設計図を描くと、それがシステム的に作れるかどうかを判断してくれたり、書いた設計図の物品を作る手助けを音声案内でしてくれたりする。
さらにはレベルが高い設計図スキル持ちが書いた設計図を使うと、同じ生産スキルを持つ者に、どうすればその品が作れる用のか教えてくれたりするのじゃ。
たとえば、ワシの場合は自分が作った短剣の設計図を描いたとする。
それを同じ《鍛冶》スキル……もしくはそれに類する金属加工系のスキルを持つものに販売すると、ワシが短剣を作った製造工程を、設計図が音声案内で教えてくれるんじゃと。
とはいえ、それで全く同じものができるかどうかは、その職人の腕次第らしいのじゃが……。
さらにこの設計図の便利なところは、なんと現実世界の画像データを、そのままゲーム世界のメモ機能に貼り付けることができることじゃ。
このメモ機能に貼り付けた設計図は、そのまま製図スキルで設計図に変換することができ、現実世界の武装の生産に一役買ってくれるんだとか。
もっとも、
「音声案内まで行くには、細かい数値を記載して、品質を☆10にする必要があるがな……。銃身の厚さやら、火薬の調合率まで書かんと……。ネットでもさすがにそこまでの数値はでないから、銃制作に関してはいまいち使えんスキルじゃなぁ……。おまけに」
と、ワシはぶつぶつ言いながら、スキャナーで取り込んだ先ほどの古文書に記載されていた文章を、辞書を片手に苦労して読み解きながら、古文書に書かれていた、火縄銃の設計図の数値を現代版に直していく。
何分古文書の設計図じゃから、スキャナーで読み取った文字が、読み取れんほどかすれてしまっておる。編集してゲームの製図機能が読み取れるように文字を記載しなおさねばならんかった。
おまけにこんな苦労をしたあげく、これが使えるという保証はないしのう……。
「まぁ、どうせダメでもともとじゃし……やってみる価値くらいはあるじゃろう」
そう言いつつ、ワシは再び半日を使い潰して、何とか古文書の銃の設計図を書き直し、TSOの世界のメモ機能へと、貼り付けることができたのじゃった。
◆ ◆
《攻略掲示板》
スレッド名:鍛冶職人スレpart152
1:魔改造武器が作りたい転生者さん(**/**/**/………)○○○○○
鍛冶について情報を共有しましょう。
面白い企画があれば載せましょう。
みんなで楽しい鍛冶ライフを送りましょう!!
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14:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○
カイゾウが飛んだ! カイゾウが飛んだっ!!
15:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○
無茶しやがってwww
16:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○
ねぇねぇ、いまどんな気持ち? せっかく空飛んだはいいけど、空中で汚ねぇ花火になった気分はどんな気持ち?
17;魔改造武器が作りたい転生者さん(**/**/**/………)○○○○○
やめろよお前らぁあああああああ! 俺を虐めて何がそんなに楽しいんだっ!
18:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○
でも、またやるんでしょう?
19:魔改造武器が作りたい転生者さん(**/**/**/………)○○○○○
うん!
20:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○
こりろwww
21:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○
こりてください……
22:飯マズの転生者さん(**/**/**/………)○○○○○
いや、マジでやめて? 空中で爆発起ったのを何かのイベントかと思った大型クランのが、慌てて飛んできたんだぞ? どれだけ処理に困ったと思ってやがる。
23:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○
お疲れ様です、マスター
24:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○
マスターにはホント頭が上がんないわ
25:魔改造武器が作りたい転生者さん(**/**/**/………)○○○○○
次も頼むよ、マスター
26:飯マズの転生者さん(**/**/**/………)○○○○○
>>25
お前次俺の店来たときの料理は『くぁwせdrftgyふじこlp!!』だから
27:魔改造武器が作りたい転生者さん(**/**/**/………)○○○○○
ちょ!?
28:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○
そういえば今日爺さん来なかったね?
29:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○
あの爺さんがログインしてこないとは……珍しいこともあるもんだ
30:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○
明日は槍ですな
31:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○
あぁ、この前突発イベントで降ったな……槍。
刃王竜ってなんだよ……。唐突に街にチートモンスター降ろすんじゃねぇよ。ゴールデン・シープが討伐してくれたからよかったけどさ
32:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○
運営自重しろww
33:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○
あの龍が落としたドロップアイテムに、俺の鍛冶師としてのプライドがへし折られたんだが……。
何あの壊れ性能……。
☆10とか爺さんクラスの鍛冶師じゃないと作れんって……。
34:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○
ろぐいん
35:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○
ん?
36:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○
なにこれ?
37:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○
できずに
38:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○
すまん
39:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○
もしかして爺さんっ!?
40:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○
掲示板に来るの初めてだな!!
41:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○
いいよいいよ、ゆっくりしゃべっていいよ、おじいちゃん!
42:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○
年寄扱いするな!!
あ>>41!!
銃を作ろうと思って色々あさっていたんじゃが、中中使えそうな知識がなくてすっかり遅くなってしまったわい。
取りあえず知り合いの古本屋から、パチモンの火縄銃設計図貰ってきたから、明日辺りに試作してみるわい。
43:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○
これを打つまでに2時間半か……。
44:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○
し、仕方ないだろ! リアルから記載してくれているんだよ、おじいちゃんはっ!!
45:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○
ん? って、爺さん銃作ってんの!? おいおい、なんでそんな面白い話に俺誘ってくれないのっ!!
46:飯マズの転生者さん(**/**/**/………)○○○○○
俺も、俺も! 火薬の生成やりたいからログインしたら連絡プリーズ!
47:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○
俺も一枚かみた~い! どんな銃作るの?
48:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○
私も!
49:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○
銃か……男のロマンだな
50:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○
きんせつ、ふいうち、するから、こがた、あんさつじゅう
51:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○
爺さん名前変えてwww
52:魔改造武器が作りたい転生者さん(**/**/**/………)○○○○○
小型の暗殺銃か……渋いのを選ぶな、爺さん! いいぜ、なら服の袖に隠していた銃が、そこから飛び出して装備される仕掛けを作ってやろう!! そっちの方がかっこいいぜっ!! なに、籠手を魔改造すればチョチョイのちょいさっ!!
53:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○
まぁ、ブースターよりかは簡単だろうさ……。
54:名無の転生者さん(**/**/**/………)○○○○○
でも魔改造はするんだな……。
◆ ◆
これは一人じゃ無理じゃなぁ。と、ネットで銃の構造を調べて思ったワシは、思い切って職人掲示板に銃の製造のことを書いてみたんじゃが、思った以上に食いつきがよく、掲示板がちょっとした祭りになってしまった。
とはいえ、その祭りとなった掲示板で、ワシがログインし次第、ワシの工房にみんなが集まって、銃制作の意見を交換する会議が開かれることに相成ったのはうれしい誤算じゃ。
これで銃制作もかなりはかどることじゃろう。と、ワシが一安心して、テレビをつけてみると、
『歴史的古文書発見!? 日本の銃製造の歴史が詳細にっ!!』
「……………………………」
そんなテロップがでかでかと表示されたと同時に、お昼の顔であるキャスターが、あの古本屋の店主に、古文書入手のいきさつを聞いておった。
冷や汗を流しながら、ワシがネットニュースを覗いてみると、地元の大学の調査によって、あの古文書が本物の雑賀衆の本だったことが明らかになったらしく、今あらゆる図書館・博物館が、ぜひとも寄贈をと、あの店主に迫っているんだとか……。
「…………………………………………………ま、まぁバレとらんし? あいつだってまさかワシに貸し出しましたなんて言わんじゃろうし」
と、ワシは呟きながら、心臓に悪いニュース番組を消す。
こういう時に限って、物忘れが激しくならない自分の頭が恨めしかった……。
まぁ、早々うまくはいきませんとも……新しい試みですし。
え? あの古本屋はって? 多分出番はもうないですけど?