お兄ちゃんあれ何?
ぐぅ。ぎゅるる。
今日はお父さんとお母さんは用事で家にいない。僕とお兄ちゃんと2人きり。
「お腹減った。」
僕がそう言うと、お兄ちゃんは呆れた。
「引き出しにラーメンあるんだから、それでどうにかしたら?」
「ないよ。」
「は?あるだろ。よく見たら?」
そう言われてもないよ。引き出し全開にしたけど、あるのはインスタント味噌汁くらいしかない。こんなので、育ち盛りの僕の腹を満たせるわけない。
「米は?」
「ないよ。あるわけないでしょ。」
そう言われて、お兄ちゃんは額に手を押し付けた。
「じゃあどうすんの?」
お兄ちゃんが鞄をゴソゴソしてる。覗きに行ったら「覗くな。」と言われた。
「何してるのお兄ちゃん。」
訊いた瞬間、お兄ちゃんはずいっと何かを出してきた。財布?
「買いに行くぞ。お小遣いはある。」
鍵締め確認して、いつものスーパーに行く。
「そういえば、ウィンナーと卵あったっけ?」
「……ついでに買っとくか。」
「いらっしゃいませー。」
「思ったより、レジとか空いてるね。」
「さっさとラーメン選ぼうぜ。」
カップ麺が陳列されている棚に行くと、灰色の人間がいた。服とか髪色が灰色、じゃなくて、肌の色も全部灰色。
「お、お兄ちゃ─」
口を人差し指で閉じさせられた。
「とりあえず、味、どれがいい?」
お兄ちゃんがカップ麺を指さす。
「僕、はぁ、えっと、魚介のこれがいい。」
そう言うと、お兄ちゃんは乱暴にそのラーメンを2つ掴んでレジの方に走った。
「お兄ちゃん速くない!?」
セルフレジの前に立つと、ぎょっとした。
「現金対応してない……!?」
後ろを振り返ると、なぜか全部のレジが休止中でセルフレジしか動いてない。どうするの、どうするのと震えてると、お兄ちゃんはスマホを取り出した。セルフレジを操作して、ラーメンのバーコードをスキャンする。
「ありがとうございましたー。」
と、女性の機械音声がする。袋にカップ麵を入れていると、横に既にさっきの灰色の人間がいた。でも、様子がおかしい。セルフレジの前でカップ麵を抱えて、画面の前でフリーズしてる。じぃっと見てると、お兄ちゃんに引きずられそうになる。
灰色の人間がこっちを見た。近づいてきて、初めてめちゃくちゃ怖くなった。
「あの……どうやって使うんですかこれ。」
え?お兄ちゃんも突然のことにびっくりしたみたいだった。
「え、ええっと、スマホとかICカードってありますか?」
僕がそう訊くと、首を傾げてしまった。
「知らないみたい……?」
お兄ちゃんが僕の前に出て、灰色の人間からカップ麵を雑に奪って、バーコードをスキャンした。それからスマホで支払った。灰色の人間はポツンとセルフレジの前で立っていた。
入口を出た瞬間、また機械音声が聞こえた。
「ありがとうございましたー。」
家に帰って、僕はお兄ちゃんと買ってきたラーメンを食べてた。
「あれ、何だろうね。」
「わかんない。」
「何か怖かったけど、変だったね。」
「うん。」
ラーメンをずずずと啜りながら食べてると、お母さんとお父さんが帰ってきた。
「おかえりー。」
「ただいま。」
僕は気になってたことを訊いた。
「ねえ、スーパーで灰色の人間見たんだけど。」
そう言うと、へぇと特段興味なさそうにお母さんが返事した。
「あれ何?」
お兄ちゃんが訊くと、お母さんが答えた。
「うん?あれはお母さんもよくわかんないけど、お父さんのお母さんが言うには、時々人間の食べてるものに興味持って、スーパージャックして食べようとする、お茶目な変なのらしいわ。」
「何それ怖い。」
「でも、何もしないし、セルフレジで困惑してるだけなのよね。現金が使えないと困るみたい。スーパージャックしちゃうと、店員さんもいないらしいし。」
あれからもう一回スーパーに行く用事があったけど、桃色の髪の毛の警察官になぜか灰色の人間は首根っこ掴まれてた。




