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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

人気作家は巡らない

作者: さや
掲載日:2025/12/31


ずっとずっと、目の前の男が羨ましかった。


「僕は君の書いた話けっこう好きだけど」


作家仲間で、仲が良かった男。

人に好かれて、何人もの女と付き合って、つい最近別れたって彼女も可愛くて羨ましくて。彼女と別れた後には「人気作家」なんて言われ始めた男。

目の前の何でも持ってる男が羨ましくて羨ましくて。

コイツの考える発想が羨ましい。その頭をくれよ。その頭の中身を、俺にくれ。ああ、妬ましい。

笑顔で俺の書いた話のどこが好きかを伝えてくる男を、俺は心から嫌いになっていた。

昔から何でも持っていたこの男が、何よりも、憎くて。

今すぐにこの口を閉じて欲しい。



ふと思い出したのは、とある迷信。



ある夜俺は2人で酒を飲んだ。

そしてソイツは目の前で胸から血を流して倒れている。

やったのは、もちろん俺だ。




俺はその後書いた作品が思った以上に売れた。

出版社ももう俺をコケにする事は無い。

やっぱり頭の中身に新しい物を取り入れると違うんだな。




俺の書いた作品は、舞台化もされて他国にまで広まった。俺みたいな特徴も無い顔まで広がって、多くの人に声を掛けられた。

弟子入りしたいなんて奴まで現れて、俺はソイツを身の回りの世話をする人間として雇い入れた。


「先生の書くお話は凄いですね、なかなか出てこない発想です」


雇い入れたのは、年若い青年。彼はなかなかに整った顔立ちをしていた。そんな整った顔立ちの青年が俺の世話をするのも、見ていて優越感に浸れてなかなか良いものだ。

彼の淹れたコーヒーはなかなか美味い。


「先生の発想があればもしかしたら分かるのかな…」

「ん?何がだ?」

「僕には姉が居たんですけど、行方不明になってしまって…」


青年は続けた。


「とてもとても優秀で、大好きな姉だったんです。両親が早くに亡くなったんですけど、そんな中姉は僕の世話をしてくれて…」


どうやらその姉とやらは、彼氏が居たらしいがある日行方不明になり、彼氏に何か知らないかと訪ねても「別れてしまっていて分からない」と返されたそうだ。


「普通に考えると、その彼氏とやらが何か知ってるんだろうが」

「そうなんです。でも実は、その彼氏も行方不明になってしまって…」


彼は俺を見て、微笑んだ。


「僕の姉は、作家志望だったんです」


彼の手に握られているのは


「姉さんが聞かせてくれた話に、その彼氏の話も、先生の話もそっくりだ」


因果応報。俺は察した。

恐らくアイツが、その姉の彼氏で……俺と同じ事をしたのだと。

逃げようにも、何か盛られていたのか体は言う事を聞かない。

きっと今俺は、アイツと同じ表情をしているんだろうな。











やっぱり姉さんを知らない男になんてやるんじゃなかった。姉さんは僕だけに話を聞かせてくれていれば良かったのに。姉さん、姉さん姉さん。今、これでひとつになれたかな。もうこれで、姉さんはどこにも行かないよね?ねえ、もう離れ離れにならないよね?誰にも渡さないよ。姉さんの頭の中身も、何もかも全部、これで僕だけのものだよ。大好きな姉さん。



去年は大変お世話になりました、今年投稿していない事に気付きましたので、せめてと思い投稿です。

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