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第16話:「支配」と「独占」

ドルド国から帰還して間もなく、ミランダの母の容体が急変した。

エミリーはすべての公務を差し置き、

ミランダに「今はお母様の側にいなさい」と命じた。


病室に入ると、母は苦しげに肩で息をし、額にはびっしょりと汗を浮かべていた。

ミランダが濡らした布で汗を拭うと、母は微かに目を開け、

消えそうな声で無理やり笑顔を作った。



「エミリー様に……伝えてちょうだい。人生の最後に、

こうして穏やかな時間をいただけたこと……心から感謝しています、と」



この一年、

娘と共に過ごせた幸福。それはすべて、

あの若き領主が与えてくれた慈悲。


母はミランダの手を弱々しく握りしめ、

最後に 可愛いミランダには幸せになってほしいと。



母は知っていた。 



「ミランダ、幸せになるのよ。……エミリー様のことを、決して諦めてはだめ。

きっといつか、あなたの想いを分かってくださるはずよ。」



……愛しているわ、ミランダ。



それが、最期の言葉となった。

母の腕が力なく落ち、静寂が部屋を支配する。


最強の殺し屋と呼ばれた女の、

子供のような泣き声だけが、

冷たくなった母の胸に響き渡った。




その日の夜 エミリーは 憔悴しきったミランダを自らの寝室へと招き入れた。 


そして ベットの中で 朝まで抱きしめた。

最強の殺し屋 ミランダの唯一の弱点が 亡くなった。 


エミリーは 思った。 

ミランダは いずれ母親の死を乗り越えていくだろう。



母親と言う人質を失ったエミリーは 焦っていた。 

ミランダを手元から失う訳には行かなかった。


どんな汚い手を使っても、

自分の元から離れて行かぬように手を打つべきと 

どす黒い思惑が芽生えるのであった。






一方、抱きしめられているミランダの心もまた、深い闇の中にいた。

温かいエミリー様の体温を感じながら、

先日のゾト王子との見合いの光景が脳裏に蘇る。


誰かに、エミリー様を奪われるくらいなら。

母がいなくなった今、私にはこの方しかいない。


どんな汚い手を使っても、エミリー様を独占し、

私の元から離れて行かぬように手を打つべきと

どす黒い思惑が芽生えるのであった。



その本質は「支配」と「独占」。



二人のどす黒い思惑が、暗闇の中で静かに交錯していた。



翌日。 母の葬儀は、エミリーとミランダ、

そして献身的に世話をしていた女使用人の三人だけで、


降りしきる雨の中 ひっそりと、だが厳かに行われた。


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