第7話 って、理事長の娘ぇっ!?
「え? 何? 俺、何かした?」
よく見れば、クラス中の視線が俺に集められてしまっており、何が起きているのか分からず、俺は周囲へと視線を向ける。……まさか、治癒魔法を使っちゃまずかったとか?
しまった……そういえば、学校のことについて何も知らなかった。
もしかして、迂闊に魔法を使うのはやめた方が良いのか? 田舎から来てるし、あまり目立ちたくないんだよなぁ……。
師匠に無理矢理入学させられたとはいえ、退学なんてした日には師匠の地獄の説教が待ってるのは間違いないし、ここは穏便に済ませよう、うん。
そんなこんなで、気を取り直して隣の女子に声を掛けようとしたのだが―
「ち、治癒魔法まで使えるんですか!?」
「うおっ!?」
その女子から凄い勢いで迫られてしまい、予想だにしていない態度に俺は大きくのけぞってしまう。……どうしたの、この子?
「あ……す、すいません……!」
しかし、すぐに自分の行いについて気付いたのか、顔を真っ赤にすると、その女子は急いで自分の席へと戻っていく。もしかして、意外に行動的なタイプなのか?
突然の出来事に驚きつつも、せっかくのチャンスをみすみす逃す手はない。そう、俺がこの学校で数年間ぼっちを貫かない為にも、このチャンスを見逃すわけにはいかないのだ。
俺は再び気を取り直すと、相手を怖がらせることのないよう、笑顔を作りながらその女子へと声を掛けた。
「そういえば、君の名前を聞いても良いかな?」
「わ、私の名前……ですか?」
「そうそう。せっかく隣になったわけだし、どうせなら仲良くしたいからさ」
そんな俺の言葉にその女子は肩まで掛かった銀色の髪を小さく揺らすと、何やら恥ずかしがった様子で返してきた。
「い、イサリナ・ドゥーンと言います……」
「イサリナか。俺のことはレクトとでも呼んでくれて良いからさ、仲良くしてくれ」
「は、はい! よ、よろしくお願いします! レクトさん!」
「よろしくな、イサリナ―って、ちょっと待て」
今、この子なんて言った? 確か、イサリナ・ドゥーンって名乗ってなかったか?
苗字が『ドゥーン』ということは、まさか―
「な、なあ……」
「は、はい?」
俺はどこか嫌な予感を覚えつつも、ぎこちない笑みを作りながらイサリナへと再び声を掛ける。整った顔立ちに真面目そうな雰囲気を漂わせるイサリナの顔を見ながら、俺は咄嗟に抱いた疑問を口にした。
「……イサリナの苗字って『ドゥーン』だよな?」
「え? あ、はい。そうですけど……」
「ちなみに、ここも『ドゥーン魔法学校』って名前だけど……それって、俺の記憶だと、確かここの学校を建てた理事長の苗字が『ドゥーン』って名前だったからじゃなかったっけ?」
「えっと、そうですけど……」
「いや~、学校と同じ名前だと大変だよな。ほら、学校の関係者と親族だと思われたりするだろ?」
「そうですね。確かに、お父様が理事長なので『ドゥーン』と呼ばれると少しむずがゆいところはありますから」
「あはは、そうなのか~」
「そうなんですよ」
「まあ、そういうこともあるよな。そっか~、なるほど~、理事長の娘だったのか~―って、理事長の娘ぇっ!?」
未だに俺の周囲が喧騒に包まれる中、一際大きい俺の声が教室に響き渡ったのだった―。




