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第5話 いや、こんなの子供でも出来るだろ?

「あ、あのっ!」


 俺が困惑しながら自分の行いを再確認していると、目の前の少女が突然大きく声を上げてきた。何? やっぱ俺、何かしちゃったりした?


 しかし、そんな俺の心配をよそに、続けて発された言葉は違うものだった。


「ろ、ロッソ様がお師匠様だというのは本当ですか……?」

「え? ああ、まあ、うん」


 不本意ながら。本当に不本意だが、ロッソ様と呼ばれる存在があの酒乱ジジイというなら間違いは―あ、いえ! 何でもありません!


 俺が心の中で毒づいていると、どこからともなく殺気を感じ、俺は急いで訂正した。……マジで怖いわ、あの人。


 周囲が騒ぎになっている中、とりあえず俺は気を取り直して声を掛けてきた少女と会話を続けることにした。


「やっぱ、君も俺が噓ついてると思ってたりする?」

「い、いえ! そういうわけでは……父からロッソ様の弟子が入学してくることは聞いていましたので……」

「父……?」


 どういうこと? もしかして、この子の父親って師匠の友人?

 俺が困惑していると、ようやく状況が安全だと確認出来たレフィリー先生が周囲を落ち着かせるように声を上げていた。


「みんな、落ち着いて! 今は安全みたいだけど、もしかしたらまた来るかもしれない。ひとまず理事長に相談してくるから、それまで教室から動かないで!」


 それだけ言うと、レフィリー先生は血相を変えた様子で教室の外へと走っていってしまう。……いやはや、大変なことになってきたなぁ。とはいえ、ここで「実は犯人は俺の師匠です」とか言ったら嫌でも目立つし……関わらないようにしておこう。


 というか、改めて師匠って何者なんだ……今さらながら疑問に抱いてきたよ。まあ、それはさておくとして……これは田舎者である俺が友人を作るチャンスなのでは?


 さっきの子なら事情を知ってるみたいだし、丁度良いかもしれない。これから先、学校生活をする上で一人っつーのも辛そうだしな。


 よし、そうと決まればまずは挨拶だ。なに、田舎から出てきたからって都会の挨拶を知らないわけじゃない。


 俺に掛かれば、友達百人どころか千人、いや一万人は出来るね! そこまでこの学校に居るのか知らないけど!


 そうと決まれば、隣の子に挨拶だな。俺は少ないながらも、家にあった資料を思い出しながら隣で何やら考え事をしている少女へと声を掛けた。


「お嬢さん、お怪我はありませんでしたか?」

「え……? あ、は、はい……」


 なんか、普通に素で返されてしまった……あれ? こうすれば、お花が周りに咲いたりするもんじゃないの?


「……おかしい、花が咲かない」

「あ、え、え~と……な、何の話でしょうか……?」

「いや、てっきりこういう風に声を掛ければ魔法でも掛かって周囲に花が咲くものだと思ってたからさ……」

「は、はあ……」


 明らかに困惑した表情を見せる少女を前に、俺はふと名案を思い付く。そうだよ、ここは俺が自分で咲かせれば良いのでは? というか、それが正解だろう、うん。


 というわけで、俺は軽く魔法でその少女の前に花を咲かせると、再び家に置いてあったミューイの漫画のような台詞を口にする。


「では、お嬢さん、名前を聞いても良いかな? 俺の名前はレクト・ユーフィーン―」


 と、そこまで口にした時だった。周囲からどっと大きなどよめきが起こっていたのだ。


「は、花が咲いてる!?」

「こ、こんな大量の花を何もないところから!? い、一体どうやって!?」

「……あれ?」


 どうやら、俺が少女の周りに魔法で咲かせた花でクラスの連中が騒いでいるらしい。いや、こんなの子供でも出来るだろ?


 そんな中、騒ぎの中心に居た少女は驚きと困惑を入り交ぜた顔で俺を見上げてきた。

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