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第3話 なるべく目立たずに生活したいのに…

「―今日から君達を担当することになったレフィリー・サラムよ。分かってると思うけど、この『ドゥーン魔法学校』は他の魔法学校とは違って本当に優秀な魔法の才能を持った人間以外入ることができないエリート学校よ。だから、授業の内容もそれ相応のものを求められることは理解しているわね?」


 そう言って、教壇に立つ長い黒髪のレフィリー先生は教師らしい表情で俺達を見渡す。俺はそんなレフィリー先生の言葉に肩を落とした。


 ――うへぇ……これはまたヤバそうだな。頼むから、師匠の時以上は勘弁してくれ。師匠、俺には容赦なかったからな……何度生死をさまよいかけたことか。


 おぞましい魔物に追いかけられた日々を思い出し、俺は目から一筋の水があふれる。これは恐怖から出た涙とかじゃない、汗だ汗……うん。


「ん……?」


 俺が師匠と過ごした濃厚な日々(?)を思い出しながら震え上がっていると、教壇に立っていたレフィリー先生と目が合ってしまう。


 ――やべ、初日から目を付けられちまったか? 俺としては、なるべく目立たずに生活したいのに……。


 そんな俺の気持ちをよそに、レフィリー先生は何やら困惑した表情で俺に声を向けてくる。


「あなた、名前は?」

「レクト・ユーフィーンですけど……」

「ユーフィーン……?」


 レフィリー先生は俺の名前に眉をひそめると、不思議そうな表情で俺の方へと歩いてきた。……え? 何? なんなの?


「え、え~と……な、なんでしょうか……?」

「……おかしいわね」


 いや、傍から見たらおかしいのはあなたでは?

 そんな風にツッコミを入れたいものの、教室中の視線を集めている中ではさすがにそれもできず、俺はただ苦笑いを浮かべながら教師と視線を交えるという稀有な体験をしていた。……何これ、学校コワイ。


 やがて、レフィリー先生は俺の顔を覗き込んでいたことに気付いて気まずくなったのか、距離を置いてわざとらしく咳払いをしていた。……し、心臓に悪い。


 そうして、冷静さを取り戻したレフィリー先生だったが……次にその口から出たのはとんでもないものだった。


「―私、ここを担当する前に生徒の名前と顔は全て覚えていたはずだけど……ユーフィーンという生徒は居なかったはずよ」

「へ……?」


 師匠おおおおおおお!?

 ちょっと待って、ちゃんとあの爺さん手続きしてくれたんだよね!? 俺、師匠が通えって言うから学校に入ったんだけど!?


「そ、そんはずはないかと……入学式にも参加しましたし、俺の師匠もきちんと学校に手続きしたって話していましたから……」


 口頭だけど。

 ん? あれ? やっぱり師匠の言葉信用しちゃ駄目じゃね?


 あまりにも適当過ぎる信用ゼロの師匠に絶望していると、レフィリー先生はますます怪訝な表情を浮かべながら俺に確認するように声を掛けてきた。


「師匠? あなたの魔法の師匠ってこと? そう……なら、後でこっちで調べておくから、とりあえずその師匠の名前を教えてもらってもいい?」

「はあ……ロッソ・イゾットって言うんですけど……」

「は……?」


 俺が師匠の名前を口にした途端、教室の空気が凍り付いていた。……え? なになに?


「え、え~と……どうかしましたか?」

「ねえ、君……私の聞き間違いじゃなかったら、さっき君の師匠がロッソ・イゾットだって言ってなかった?」

「言いましたけど……」


 「師匠ってもしかして有名人?」とか考え、ついさっきまで心の中で理不尽な師匠に心の中で矢を放ちまくっていたが、少しだけ株が上がり始めた。さすが師匠! 俺は最初からあんたを信じてたよ!


 そうして、安堵した俺だったが―そんな俺の予想に反してかえってきたのは、クラスに居たほとんどの生徒の教室中に響くほどの笑い声だった。

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