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第23話 都会の空気に何入ってんの!?

「ロッ……くん……」


 うん、まあ……呼び方は人それぞれだよね。明らかに堅物そうな理事長が師匠をロッくんと呼ぶのも自由だし―


「って、ちょっと待って!? そういや、師匠に聞きたいことがあるんだよ!」

「ああん? 何だよ、レクト」


 もはや色々とおかしな現状に困惑しつつも、俺は今回の発端となった疑問を師匠へとぶつける。


「あんた、俺に噓の名前を教えたんじゃないだろうな!?」

「はあ? 何だ、唐突に? おめぇ、都会の空気でも吸っておかしくなったか?」

「都会の空気に何入ってんの!? 違ぇよ! 師匠の名前を周りに言ったら笑われたんだよ!」

「だーはっはっは! やっぱ、都会のもやしっ子達にゃ俺の偉大さは理解出来ないってか?」


「そうじゃねえええええええ! 『ロッソ・イゾット』っていう大陸一有名な魔法使いと同姓同名だからだよ! 師匠、まさか俺にわざとそういう名前を教えたんじゃないだろうな!?」

「ああ? 俺と同じ名前で大陸一ぃ~? おい、アンちゃん。そんな奴聞いたことあったか?」


 そう言って師匠が理事長の方に視線を向けると、理事長は軽く顎に手を当てて考えるような仕草を取るが、すぐに首を振って否定するように言葉を返した。


「いや? 私の知る限り、ロッくん以外にこの大陸で私と対等にやり合える人間は知らないが?」

「だよな~? おい、レクト。つーわけで、間違ってんのはお前の周りだ。正真正銘、俺の名前はロッソ・イゾットだからな」

「え……? ちょ、ちょっと待ってくれ……」


 何? ってことは、まさか……この師匠が大陸一の魔法使いなの?

 周囲もどうやらその事実に気付いたらしく、驚いたように声を上げていた。


「お、そうだそうだ! 忘れないうちにこいつをロッくんに渡しておかねぇとな!」


 そんな空気にもかかわらず、ふと師匠は何か思い出したように腕をポンと叩くと、よく見れば背中に何やらバッグを背負っていたらしく、その中からノートを一つ取り出した。


 そして、取り出したものを手にして師匠は驚きの言葉を口にしてきた。


「ついでと言っちゃなんだが、交換日記を持って来たんだよ! いや、今回は色々と書いて来ててよ! レクトやミューイのことについても書いてあんだ」

「……交換日記?」


 え? 一体、いつの時代の人?

 交換日記なんて、ミューイが持ってた―正確にはミューイの母親の持ってた―漫画の中でくらいしか見たことないんだけど? もしかして、都会だと当たり前なの?


 俺があまりにも唐突な出来事に置いてきぼりを食らっていると、さらにそんな俺を置いて理事長が師匠の言葉に過剰な反応を返していた。


「ま、待て! 中身を先に話さないでくれ! 仕事の合間に見る貴重な楽しみの一人なんだ! ネタバレはやめてくれ!」

「いやな、少しだけ先にどうしても話したくてな」

「ま、待て! それなら明日にでも時間を作ろう! この頃、激務でなかなか見れなくて楽しみにしていたんだ……」


 いや、マジでこの人達本当に何してるの?

 大陸一の魔法使い―らしい―男達のやり取りに、俺を始め、周囲には困惑したような空気が流れていた。

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