第22話 やっぱあれ、師匠が投げたのかよ…
そんな師匠に驚きのあまり俺が固まっていると、さらに俺を氷漬けにするような言葉が理事長から聞こえてきた。
「まったく、訪問するなら予め連絡を入れて欲しいものだな―ロッくん」
「……ロッくん?」
なんか今、いかにも真面目そうな理事長がうちの師匠を変な名前で呼んだような気が……あぁ、多分、色々なことがあり過ぎて疲れてるんだな、俺。
いきなり理事長室に呼び出された挙句、先輩に目を付けられて制裁されそうになったり、師匠が唐突に現れたりして精神が麻痺って耳まで壊れちまったんだな、うん。そうだ、そうに違いない……っていうか、そうであってお願い。
でなけりゃ、あのいかにも堅物なイサリナの父親である理事長が師匠のことを「ロッくん」とか頭の痛い呼び方なんてしないと思うんだよね。師匠の「アンちゃん」って呼び方は……まあ、百歩譲って良いとして、それでもあの理事長が「ロッくん」……いやいや。
あまりの出来事に俺が固まってしまっていると、「ロッくん」と呼ばれた師匠はいつも通りの豪快な態度で理事長へと言葉を返した。
「おっと、悪ぃな。ミューイとレクトがどうしてるか気になってよ。まあ、ついでに学校に投げちまった魔物の回収も兼ねて来たわけだ」
「やっぱあれ、師匠が投げたのかよ……」
「おう。なんかおめぇが俺のことを悪く言ってたと思ったからな」
「いや、はは……まさか、俺が師匠を悪く言うなんてそんな……ねえ?」
「ん? そうか? それなら良いんだけどよ。がははは!」
いやもう、地獄耳なんて次元じゃないんですが……俺、心の中で少し毒づいただけですよ?
そうして辟易とする俺をよそに、師匠と理事長の会話は続けられていく。
「あれほどの魔物を軽々と投げるとは……さすがだな、ロッくん」
「まあ、アンちゃんなら軽く防ぐと思ってたのよ。とは言っても、生徒に被害を与えるつもりはねぇし、バリアが張られなかったらギリギリで止めてたから安心しな」
「そこまで計算していたとは……とはいえ、そんな心配は要らん。ロッくんが投げ掛けたのを察知した瞬間、私はすでに受け止める準備をしていたのだからな」
「おぉ! さすがはアンちゃんじゃねぇか! これなら安心してうちの娘と弟子を任せられるってもんだ!」
そうして再び周囲を置いてきぼりにしながら豪快に笑う師匠。……やっぱり、聞き間違いじゃねぇ。
真実を確かめる勇気は正直に言えばなかったが……ここで俺が突っ込まないと駄目だという義務感を抱いた俺は、師匠と向かい合っていた理事長へと声を掛ける。
「あの……理事長?」
「ん? どうかしたのかね、レクトくん」
「いや、あの……理事長ってそこに居る俺の師匠と知り合い……なんですよね?」
「ああ。つい先ほども話したばかりだが、彼とは旧知の仲でな。今も時間を見付けては共に酒を交し合う仲だ」
「……え~と、非常に申し上げにくいんですけど、理事長は師匠のことを何て呼んでるんですか?」
「ん? あぁ―」
どこか格好いい雰囲気すら醸し出していたはずの理事長。しかし、そんな俺の質問に、理事長は事もなげに答えた。
「―昔から友人である彼のことは、親しみを込めてロッくんと呼んでいるよ」
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