第21話 これは珍しい客が来たものだ
「ん? なんだ、レクト。お前、入学早々もう女に手を出してたのか? ミューイってもんがありながら、おめぇもまだまだ若ぇな! だっはっは!」
「なっ―!?」
「いや、勝手に人前に現れて誤解するようなこと言わないでくれない!? 違うよ! 俺はただ先輩の誤解を解こうとしてだな―」
「先輩ってことは年上か? おいおい、お前が年上好きだったなんて初めて聞いたぞ? 良かったな、ミューイ! こいつは脈ありだ!」
「っ!?」
ちょっと、この師匠何言ってんのおおおおおおおおおお!?
唐突に現れた師匠に、さらに唐突にわけの分からないことを言われ、驚いたように声を上げて静止してしまうラングース先輩とミューイ。そんな二人を横目に俺が師匠へ抗議の声を上げると、驚いたまま固まっていたイサリナが困惑した様子で師匠へと声を掛けていた。
「おじ様……なぜ、おじ様が学校に……?」
「ん? おぉ! よく見たら、お前、イサリナの嬢ちゃんじゃねぇか! 少し見ないうちにデカくなりやがって! 母親にすっかり似てきたな!」
「いや……あの……先月もお会いしたばかりですよね……?」
「ん? そういや、そうだったか? いやぁ、歳は取るもんじゃねぇな! ついコロッと忘れちまう!」
「は、はあ……」
そう言って、師匠の言葉に困惑した表情を浮かべるイサリナ。しかし、理事長の娘であるイサリナと師匠が知り合いだったってことは、ミューイとイサリナが知り合いだというのも事実なわけで……駄目だ、色々と頭の整理が追い付かん。
理解の範疇を超えてしまい俺が頭を抱えていると、師匠は何を思ったのか、俺とイサリナを交互に見比べると、これまたとんでもないことを言い出してきたのだ。
「しっかし、レクト。こんなに早くイサリナとも一緒に居るってことは、おめぇもうイサリナにまで手を出したのか?」
「へっ!?」
「ちょっと師匠おおおおお!? もうお願いだから黙っててくれない!? 師匠が喋る度に俺の株がだだ下がり状態になるから!」
誰かこの暴走爺さんを止めてくれ!
いきなり現れてとんでもないことを口にする爺さんにイサリナは顔を真っ赤にし、俺が心の中でとんでも爺さんに嘆いていると、そんな師匠の戯言に怒った様子でミューイが近付いていき抗議の声を上げた。
「あのね、お父さん……お願いだから、公衆の面前で変なことばっかり言わないでよ。レクトが誤解されるでしょ」
「ん? 何だ、違うのか?」
「あ、当たり前でしょ! というか、どさくさに紛れて変なこと言わないでってば……」
「ん? 変なこと? 何のことだ?」
「いや、だから……その……れ、レクトが年上が好きとかどうとか……」
「あん? 違うのか? おい、レクト。どうなんだ?」
「……いや、ここで俺に振らないでくんない? 俺、その年上のラングース先輩達に絶賛睨まれている最中なんだけど?」
もはや修羅の如き勢いでラングース先輩と取り巻きの二人から睨まれ、生きた心地がしない俺が師匠にそう返した時だった。周囲で騒いでいた生徒の数人が驚いたように声を上げると、聞き覚えのある声が校庭内に響く。
「―ほう、これは珍しい客が来たものだ」
少し前に俺はこの声を聞いた。しかし、俺が気付くより先にその声に真っ先に反応した人間が居た。
「よお、アンちゃん。邪魔してるぜ」
俺の師匠―ロッソ・イゾット。その師匠はいかつい見た目に似合わない呼び名で、理事長のことを呼んだのだった。




