第15話 あなた、例の転校生ですわね?
「げ……ミューイ……」
また面倒な時に見つかったな……。
どこぞのお父上様の師匠と違い、母親に似てしっかり者であるミューイはとにかく真面目だ。まあ、真面目というより、ただ堅物過ぎるだけなんだが……修行中もとにかく俺に説教ばかりしてきてたからな。
そんな姉弟子に今の状況を見られるのは非常に面倒だというのは火を見るよりも明らかで、案の定、ミューイは周囲の人だかりを縫うように歩いて俺のところまで歩いてくると、そんな心配事を証明するかのように不機嫌そうな声を俺へと向けてくる。
「ねえ、これは何なの? なんか、すごい人だかりが出来てるけど……」
「いや、何と言いますか……流れでそうなった?」
「流れでって……あの人が胸に付けてる称号……私と同じ学年の人でしょ? 入学初日から先輩に呼び出しを受けるって相当なことだと思うんだけど?」
はい、ごもっともです。
とはいえ、まさか「ロールパンと先輩を間違えちゃったんだ」などと言えるはずもなく、俺は微妙な顔を返すしかなかった……というか、もう一回そんなことを口にしたら、さらにラングース先輩を怒らせるのは間違いないし。
俺の言葉に困惑した表情を見せるミューイだったが、そんなミューイにラングース先輩から声が掛けられた。
「あなた―例の転校生ですわね?」
「ん……?」
その声にミューイと一緒にラングース先輩の方へと視線を向ける。すると、自信満々な様子で腕を組んでいた彼女は、自分の髪を軽く払い除けながら鋭い目付きを返してきた。
「見たところ、そこの男と親しいようですけれど……あなたもあなたで、このわたくしと同じクラスになったからと先ほど声を掛けてあげていたというのに、こちらに何の反応も示さないというのはいかがなものかしら?」
しかし、それに対してミューイは困惑した表情を浮かべると、そんなラングース先輩の鼻っ柱を砕くような一言を返してしまう。
「……ねえ、レクト。結局、あの人って誰なの?」
「なっ―!?」
「ちょっとおおおおおおお!? 余計に話をこじらせないでくれる!?」
素でラングース先輩を知らないらしく、そう尋ねてくるミューイに全力でツッコミを入れる俺。本人が意図してなくても、俺とのやり取りの後にそんなことを言えば、ラングース先輩にとっては挑発以外の何ものでもない。
当然、ラングース先輩は怒りから顔を真っ赤にすると、プルプルと肩を震わせた後、ゆっくりと俯きながら不敵な笑みを浮かべていた。
「ふ、ふふ……ふふふふふ……そこのレクト・ユーフィーンとかいう生徒といい……この私を馬鹿にするとは良い度胸ですわね……」
やべぇ……めちゃくちゃ怒ってるっぽいんですけど……。
状況が分からず、困惑した表情を見せるミューイにどう説明したものかと悩んでいると、ラングース先輩は突然手を振りかざし、その手に魔法で炎を作り上げる。
「あなた方のような無礼者には『教育』が必要のようですわね―なら、ラングース・ジュリスの名において、あなた達を制裁させて頂きますわ! ご安心なさい! 手加減はしてあげますわ! おーほっほっほ!」
そして、大きな声で俺達への『制裁』を宣言すると、その炎を俺達へと向けて放ってきた。




