集い
その日は訓練も何もせず帰った。
訓練なんてしたら理性も何もかも吹き飛び暴れていたかもしれない。
……かもじゃないな、十中八九していた。
今の俺が冷静じゃないのも分かっている。
分かっているが……冷静でいられるか!
それが普通だ。
この世界が普通じゃ無いんだ。
これはもう約束なんて優しいモノじゃない。絶対だ、絶対的な使命。
(ただのエゴ、それでもそれが普通に成らなきゃいずれ世界を巻き込む戦争だ)
世界平和、柄じゃ無いけど他に誰もしないなら俺がする。
その為には力が必要。
お誂向きに俺には成長の余地がまだまだある。
念動力もどき、魔力停止、他にもまだ眠っているかも知れない。
それをものにする。今目標とするならそれだ。
この怒りも全てを持って制する。
新しいクラス、Fクラスとは比較にならない環境・内容・効率。
強くなるならそれが近い。
それにタイミングも重要だ。闇雲に問題を起こせばこの島、日本が敵になる。
何処かいいタイミングで何か起きればいいんだが……
タイミングの事は後々考えるとして、今は目下の事だ。
普通の進級審査なら順当に進級するならEクラスだが、俺が連戦進級審査は特別だ。何か違う進級方法なのかもしれない。
紙に書かれている教室へと向かう。
Aクラス〜Fクラスの教室がある棟とは別棟。
訓練所を跨ぎその奥。
ていう事は少なくともAからFクラスじゃ無いな。
(こっちには来たこと無いな)
廊下は一直線であり他の教室は見受けられない。
誰が居るのか分からないが、俺の目指すべきところは変わらない。
「……」
何時も通りに来たつもりだが、扉を開ければ誰もいない教室が広がっている。
……割と覚悟決めて扉開けたつもりだったんだが、杞憂に終わった。
(席……真ん中後ろ……)
席数少ないから見やすいと言えば見やすい。
数えたが俺含めて六人か。
一教室に入れる生徒の人数にしては少なすぎる。それも特別故か?
考えていると扉が開かれる。
扉の前には久しぶりに見る顔が現れた。
「氷城さん」
「あら、久しぶりです〜!」
「総力戦以来ですね」
「その後にも会ったでしょ?」
「あれは会ったじゃなくて待ち伏せでしょ」
「……そんな事はありませんよ?」
間があったぞ、確信犯か。
「氷城さんもこのクラスになったんですね。進級審査したんですか?」
「いえ、私は何もしていませんよ?」
……何か複雑だ。
俺は進級審査連戦だったのに。氷城さんは元々Aクラスで凄いっていうのは分かっていたが、何とも。
その時、後ろから静かに椅子を引く音が聞こえた。
振り返ると隣に座っている和田がいた。
「和田もいたのか」
「嗚呼、担任から今日からこのクラスだと」
「そうなのか」
これからは隠れて訓練をする必要が無くなるのか。
実力も惜しみなく出せる。
次に入って来た生徒は白獅。
遅れて藍沢さんが来た。
何故藍沢さんがこのクラスに来たのか?
曰く、学園長直々に勧誘に合い秒で了承したという。それに藍沢さんは総力戦で氷城さんを打ち取った事例がある。
それで声が掛かったのかもと。
学園長はそんな感が鈍い人には思えないが……
藍沢さんはどこかドジなのか単なるバカなのか分からない時がある。
教室に入って来て第一声が、
「おはよう!ちょっと迷っちゃたー!」
学園の校門からここまで曲がり角二つしかないんだが……
「集まっているな」
入り口から声が響く。
入学式にも個人的にも聞いた事がある。
(学園長……)
学園長、早ノ瀬楓夏本人。
夏休み前にも会ったが何を考えているのか読めない人だ。
「学園長センセーが何でここに居るんですか?」
「今日から私がこのクラスを受け持つからだ。普段は学園長室に籠っているが、偶に陽の光を浴びたくてな。それに」
学園長は教室を見渡す。
「このクラスは私が直に見てみたくてな」
実力をか?
ここに集められた生徒は皆特筆して能力が抜きん出ている。
その能力を直に見たい、というだろう。
「あの学園長センセー、一人いないみたいなんですけどー?」
「嗚呼、それならここに居る」
一人の女生徒を片手で軽々と持ち上げ吊るされている。
右へ左へプランプランと。
それでも尚眠り続けている。
「彼女、久渡 白を入れ六人でこれから学び高め合っていく。皆、健闘を祈る」
こうしてこの学園でも異質なクラスが誕生した。




