表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/103

狂腐

 人では辿り着けない領域。

 もしそれが僕のチカラとなればそれは大きな一歩だ。


 能力、実力、知能、どれか一つでも他より優れる事でこれまで以上のチカラを手にし、発言権も得られる。


(それには先ず、このチカラの正体を知らなければならない)


 部屋での訓練、もとい実験。

 保健室で出来た念動力に近い力を試す。

 軽い空のペットボトルからナイフまで、色々と。戦闘でも活かせるのなら戦闘の幅が格段に広がる。


「……」


 実験した結果、大抵の物は自在に動かせた。

 使った感じ見えない手が伸びているに近い。


(最後は……)


 白獅の話から聞いた、自分を浮かせるのかどうか……


 少し難しいが、出来ない事はない。

 かなりの集中と魔力がいるが出来た。ただ、戦闘で今直ぐ使えるかと言えばNOだ。

 実戦投入はまだ出来ないだろう。


「ふぅ、そろそろ行かないとか」


 身体も癒え、今日から学園に復帰だ。

 また休んじゃったから内田さんにノート見せて貰うか。


 そんな考えを思いながら寮を出る。


 学園に着くのは何時も四番目くらいだ。今日もそうだった。

 いずれ全員集まって、僕の進級が決まるまではそれまで一緒に勉強して訓練する。


『すみません!今日も学園へは行けそうに無いです』


 そう連絡を送られ、風邪でも引いたのかと納得し返信する。

 仕方なく休んでいた分のノートは藍沢さんに見せてもらった。


 学園が終わり見舞いに行こうと連絡するが、伝染るといけないという事で遠慮した。

 その後も電話でやり取りを行った。


 特にこの間の白獅との闘いは話した。というよりも怒られた。

 魔力の奔流、魔術の連続、外はあゝなっていた事で自国にも知られ誤魔化す事に困難したとのことだ。


 それに関しては僕が悪いから平謝りした、電話越しに。

 他にも最近ハマっている趣味、お気に入りのぬいぐるみ、殆ど内田さんの話になってしまった。

 僕が話すことと言えば戦闘技術だったり魔術のアレやコレやになってくる。


(僕も何か趣味を見つけないとな……)


 約束を果たした後、この世界が少しでも理想となっているであろう世界になった時。

 その時の為に何か没頭できて、内田さんと話し合う事が出来るように。


 闘い以外の趣味、か。


『ゆっくりでも良いので見つけて行きましょう』


「……そうだな」


『では、……また明日』


「嗚呼、また明日」


 そう言って会話を終える。


 そしてまた一日、一日と過ぎていく。

 しかしこの数日間、内田さんが教室に姿を出すことは無かった。


 今日も休みなのか?


「え〜……一応全員に知らせる事がある。本日未明に道の真ん中で倒れていた焼死体が発見された。燃え残っていた髪からFクラスの内田 凛だと判明した」


 は?

 なんて言った?


 内田さんが……死んだ?


 それからの話は何も入ってこなかった。

 受け入れられない、受け入れたくなかった。心が落ち着かない。

 ずっと沸々と、沸いてくる。


 コレは何だ?


「おーい!!聞いているか!」


「ッ!」


「明日からお前は違う教室だから気を付けろよって言ったんだが」


「……」


「……お前、後で職員室な」


 その後、普通に授業が行われた。

 誰一人疑うことなく、誰一人悲しむことなく、忠実に従う兵士のようだ。

 ただひたすらに自身が強くなる為だけに。


 僕は、そうは出来なかった。


 たった一日、たった数ヶ月、一緒に過ごしただけだ。

 理由は違えど共に同じ目標を持ち、約束をした仲。


 それだけ……たったそれだけの仲。

 そう思っていた。


(なのに……なのに……ッ!)


 これは悲しみじゃない、怒りだ。

 悲しみを通り越して怒りが沸いてくる。


 クラスメイトに、先生に、これを野放している世界に……


 時間が経つにつれ感情が制御できなくなっていき魔力が外に漏れ出る。


「うッ……」


「気持ち悪ぃ……」


 漏れ出た魔力に当てられ気分を害する者も気を失いそうになっている者もいる。

 徐々に膨れ上がり、揺れが生じる。


 窓にヒビが入り、ガタガタと机と椅子が音を立てる。


「な、何だ!?」


 魔力の制御なんて気にしてはいられない。

 俺の心はドロっとした感情に流されそうになっているのを行動に移さないので精一杯だった。


 パシンッ


 頭への衝撃で一気に思考が戻される。

 目の前には山崎先生がいた。


「ちょっと来い」


 何時も感情を面には出さず、だらけ切っている先生が僕を真っ直ぐ見ている。

 それに従い、ただ付いて行く。


 廊下では話す事も無く黙って先生の後ろを歩いている。


 着いた場所は普通に使われているが普段は空き教室となっている場所の前だった。


「ここら辺でいいだろ」


「……」


「お前がどうしてそうなっているかは分かる。内田 凛だろ?」


「ッ」


「アレを話した時にお前だけが反応したからそうだと思ったが、当たりだな」


 当たり前だ。昨日まで話していた友人が死んだなんて言われたんだ。そうならない方が可怪しいだろ。


「内田は、そうだな……仕方なかったんだ」


 は?


「あれは仕方が無い。最近の炎上事件の事は知ってるだろ?それにアイツは巻き込まれた。巻き込まれたのには同情するが負けたのはアイツが弱かったからだ」


 意味が分からない。何を言ってるんだ?


「弱かった、それが事実であり結果だ。……だから死んだ。それだけだ」


 嗚呼、やっぱりだ。

 この世界は腐りきっている。

 チカラを手に入れて発言権を得られれば変わるはず、そんな甘い事を言っていたら何も変わらない。

 もっと根本から、変えないと……


 この怒りは、憎しみは、約束は晴れない。


 何より、内田さんが報われない。

 誰よりも平和を望み、家族の為と頑張っていた彼女が。こんな腐った世界だと安心出来ない。


 そっか。


 僕が……俺が壊せばいい。


 俺が能力至上主義なんて世界をぶっ壊せば、それで解決する。


 その為には、力。力がいる。

 誰にも負けない、圧倒的な力が……


 待ってろよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ