謎
「それがあの後起きた顛末だ」
僕自身信じられない。
数多くの連続攻撃をものともせず、無傷。
そして、最後の言葉。
「『俺が俺の時点で反則だ』」
俺が俺、どういう意味だ ?
僕は二重人格なんてものじゃない。記憶が無いなんて事は特に無い。
それなら白獅が嘘をついている……いや違う。
さっきの最後の闘い、これを覚えていないのは事実だ。アイツが好きな”平穏”を使ってまで聞き出したんだ。それは間違いない。
「……俺が思うに、アレは神だ」
「……お前、そんな事言う奴だったのか ?」
「そうじゃねーと理屈もこれまでの研鑽もバカみたいだ。魔術は効かない、魔力を平然と止める。人類には不可能だ」
体内にある魔力は有限、回復こそするが魔力をずっと止めていられる程常時回復しているなんて事は不可能。
確かにヒトの領域を逸脱している。
だが……
「それだと僕は”神”という事になるぞ ?」
「そーゆー事なんじゃないか。俺は知らん」
「適当だな」
「興味がないだけだ。もう話す事は無い」
そう言い残し再度毛布を被り直し、眠りに着いた。早いな。
保健室を後にし、教室へと戻る。
学園は現在バタついて忙しい。白獅が派手に魔力を解放した所為で気絶している生徒は数人程度では無い。
だから今日の授業はこれ以上行われない。荷物を取って寮に帰る予定だ。
「お」
「よう」
偶然、ではなく僕の教室の前で和田が待っていた。
「さっきまで派手にしてたな」
気づいていたか。そりゃそうだよな、あれだけの魔力ぶちまけていれば……
「まぁな。予想以上に派手になってな」
白獅の魔力を受けても気絶しないのは流石の実力だ。
Aクラスならそれくらいは当然なのか ?
「ここにいていいのか ?」
「ウチのクラスでも数人が気絶してな、今は中断中だ。だからお前に会いに来た」
窓から見えるFクラスの教室内には机に伏せ、気絶している生徒が多数。
気絶で済んでいるだけまだマシだろう。
中には保健医のお世話になっている生徒もいる。
保健室に人がいなかったのもそれが理由だ。
「用件は ?」
「別に ? 今日の訓練をどうするか相談しに来ただけだ」
律儀に会って聞きに来てくれたのか。
思わずを笑ってしまう。
「そうか。……俺は今日止めておくよ、少し考えたい事もあるし」
「分かった。用はそれだけだ」
「ありがとな」
そのまま和田は自分の教室へと戻っていった。
その後ろ姿を見送りながら思う。これでいいのか ?
正直、疑問だ。
今の僕には疑問が多すぎる。
一つ一つ整理する必要がある。
1つ目、さっきの僕の力。
自覚も記憶も無いが白獅からの証言。
魔力を停止させ魔術を無効化、一撃で白獅を倒す攻撃。
正直僕の力が何処まで及び、成長するのかも分からない。
第二次成長期は既に終わっている。だから劇的に魔力が増え、筋力が上がる事はあまり無い。
底辺だったヤツが最上位と渡り合えるようになる。訓練をしているとはいえ、そこまで変わることはない。
だが、僕は違った。
訓練を重ねれば重ねるほど強くなる。
ゲームのように経験値を貯めレベルアップをしてキャラクターが強くなるように。
2つ目、藍沢さんの行動。
あれからも度々見掛ける行動。
AクラスBクラスの生徒と一緒にいる姿を見掛ける。能力至上主義のこの世界、チカラを持つヒトがチカラを持たないヒトと関わりを持とうとはしない。
それなのに藍沢さんとは違う。
和気藹々、そう見える程に笑い合っている。
何故そうなったのか ?
何故そう出来たのか ?
能力を使いヒトを操っているのか ?
ならば能力は何か ?
今現在の疑問点はこの2つだ。
僕のチカラに関しては試してみないことには謎のまま。
訓練ができ次第和田にも手伝ってもらって検証するか。そして藍沢さんの行動はその理念を知らない事には善悪はつけられない。
今後、藍沢さんの行動はもしかしたら監視し難くなるだろう。
そうなると、何かあっても全てが後手に回る可能性がある。
それもどうにかしないと……
考え事に集中していたら寮の部屋の前まで着いていた。
(一旦は身体を休めよう……)
ベッドに横になり、そのまま眠りに着いた。
面には出ていなかったが、相当疲れていた。それもそうだ、11連戦をしている。
果にはキャパを超えたダメージまで受けている。
身体に蓄積していない訳がない。
その後、目覚めてから時計を見ると針が3周しており三日間もの間眠っていた事に驚いた。
「ふふっ面白い光景が見れました。アレが……私の最終目標ですか」
面白い、実に面白い。
魔力停止。未だ人類には到達出来ない領域……
私にも、あの娘にも不可能。
それを一生徒がやってみせた。素晴らしい !
実験してみたい気持ちはゼロでは無い。
が、注目の生徒がいきなり行方不明は怪しい。
それなら、私の管轄に……
(ふふっ、楽しみですね)




