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真相

 トドメを刺した感覚はある。

 だが、動揺を感じない。


(僕が気絶してからどうしたんだ?)


 風音で気付かなかったが隣のベッドから寝言が聞こえてくる。

 毛布が膨らんでいるから誰か寝ている。

 凡そ誰か分かるが……


 横には頭まで毛布を被っている白獅がいた。


(生きては、いたのか)


 そこは一旦の安心が来る。

 思っていたことが違うと分かると動揺するのが人間だが、今回に限っては違った。

 安心したら、ずっと動き続けていたのもあり喉が渇いた。

 幸いここは保健室。備え付けの水が置いてある。

 手を伸ばし、水の入っている容れ物を取ろうとした。


(……は ?)


 不可思議な現象が起きた。

 手は伸ばしたが、容れ物を掴んでいない。それなのに容れ物は宙に浮き、そこで停滞している。

 どういう事だ ? 俺にこんな事をするチカラは無い。もしかしてこれが能力なのか ?


「それだ」


 部屋に突然声が響き渡る。

 振り返ると寝たままだが、起きた白獅の声が聞こえた。


「俺はその力に負けた」


 ものを手を触れず自由自在に動かすチカラ。所謂、念動力。

 しかし念動力は能力の一種だが魔力ではなく自身の中に存在する不思議なチカラによって発動するらしい。


「詳しく聞いていいか ?」


 今、体内の魔力で身体を調べてみたが、そんな不思議なチカラなんてモノは見つからなかった。

 それに、考えている間も容れ物を浮かせていたがどうやら消費しているのは魔力らしい。

 つまりコレは念動力に似た何か、になる。


(それを体感で知っているのは白獅だ。聞いて情報を集めよう)


「はッ、教えないといけない理由が何処にある ?」


「……」


「そら見ろ、何処にも理由は無い。つまり俺は何も話さない」


「理由はあるぞ」


「ハッタリだ」


「いやある」


「なら何だ ?その理由は」


「お前が理想とする平穏がやって来る」


「……」


「今回進級審査に合格したのかはまだ分からないけど、もし落ちているのなら何度でも挑戦する。そして何度でもお前を指名してやる。だが話さない場合は」


(俺とお前は闘う……か)


 おそらくアイツの進級審査の結果は合格しているだろう。

 だがこの学園は能力至上主義。コイツの能力は念動力ではない。魔力で念動力を使う能力は聞いた事が無い。

 つまりコイツは無能力者……

 学園がどういう判断を下すかは分からないが、不合格という判断を下せば……


(俺の平穏はまた崩れる……。まだ念動力もどきについてを話す方がまだマシ……か)


 目元を毛布から出して白獅はこう語った。


 ――お前のそれは人知を超えている。



(やっと終わった)


 闘いを早く終わらして寝たかった俺は、一番人間の意識をなくす方法。

 水浸しにして雷撃魔術を浴びせればいい。大抵の事はこれで終わる。

 コイツもそうだと思っている。いや、思っていた……


 現にアイツは倒れていっていた。この進級審査も終わりだと……


 ゾワッと背筋が凍りつく。

 殺気と魔力が膨れ上がった。俺にだけ分かる様に一点に集中して。

 さっきまでの数百、数万倍にまでに…… !


 直ぐに振り返りアイツの状況を確認する。

 その場にヤツはいなかった。


 しかし魔力の流れからヤツのいる場所は分かる !


(上ッ)


 上空100メートル地点に停滞している。


(妙だな。浮遊魔術特有の身体の揺らぎを感じられない)


 遠いからとか目視出来る距離じゃないとかそんな低俗な理由じゃ無い。

 俺は望遠魔術を使えば100メートルなんて距離は些細な距離だ。そんな事は問題外。

 アイツは揺らぐことなくまるで立っているかのように宙にいる。俺にだって出来ない芸当だ。


(それに、あんな場所で何をしている ?)


「……【展開】」


 学園全体どころか島を覆い尽くす程の魔術陣が広がる。

 幾何学な術式、未だ人間には到達出来ない領域。


(……こんな程度のものに名前を付けるのも面倒だ)


 魔術陣に魔力を流し魔術を起動する。

 魔術陣の外には何の影響を与えない。内と外では効果が違う。


 音が止み、動きは止まる。

 魔力により時空を歪め時空の停止ではなく人間の体内にある魔力を止め動きを完全に止める。


(魔力停止ッ !?)


 魔力とは常に動き流れ続ける流動体だ。

 それを止めるとなると強大な魔力と強制力が必要だ。


(それをいとも簡単に止めるだとッ !?)


 意識は残るが、魔力の流れを強制的に止められ酸欠の様に意識を持っていかれる。

 酸欠よりも早く気を失う。記憶にも残りにくさも加わる効果もある。


(そうなる前に解かせねーと俺まで意識を持ってイカレそうだ !)


 俺もヤツがいるところまで跳び上がろうとしたが、先にアイツの方から降りてきた。

 降りてきた ? 高所の有利を捨てて ?

 だが、好都合だ。思わず笑みが溢れてしまう。


「【展開】」


「【粋線光牙】!」


 太陽光を凝縮させ、一気に直線状に放出する。

 光線の熱と速度を持ってして攻撃と成して相手を切り裂く。

 この際アイツの怪我だのに構っていられない。アイツに勝って俺の平穏を取り戻す。


 パチンッ !


 指が鳴らされ魔術の発動をジャミングされた。

 他人の魔術への介入 !?人間技じゃ無いだろ !!


「【噴霧】【風雅】【土葬】!」


 霧により目眩まし、風による匂い音形を持たない一撃に、地面を崩し足場を悪くして回避を取らせない連撃(コンボ)

 これで倒せなくても策はまだある !


 技が効かなかった時の為に次の魔術の準備をする。


(次は【重力力場】×【土葬】×【植槽】で確実に動きを止め【獄炎烏】で)


 そんな考えは直ぐに振り払われた。

 霧は手で薙ぎ払われ【風雅 】は握り潰され、【土葬】は足により包み込まれた。


「【重力力場】【植槽】【水泉】【獄炎烏】!」


 まだこんな連撃なんて生ぬるい。

 ヤツも魔力によって覆われている。殺す気でやる。


「【水泉】【雷皇】!」


 まだまだッ。


「【植槽】【華香】【毒化粧】!」


 足りない !


「【粉刃】【螺旋海】【旋風】!」


 もっと !


「【水泉】【粋弾光」


「鬱陶しい」


 いつ近づかれたのかも分からないがそれより、驚く事がある。

 無傷。

 あれだけの量の連続攻撃を仕掛けられて尚、傷が一つどころか最初の【水粋】と【雷皇】以外の攻撃を受けた痕跡見当たらない。


(それにコイツッ ! 俺に触れてねぇ)


 念動力なんて隠し種を持っていたのか…… !

 首から伝わる確かな感触。着実に首が締まっている。


「俺をこの程度で煩わせるな」


 この程度、俺をこの程度って言ったのか !?

 今直ぐ魔力を全力で振り絞れば……念動力程度…… !


「お前も、そうムキになるな」


(何を言っている ?)


「この勝負の勝敗はお前に委ねる。俺が俺の時点で反則だ、実質的にはお前の勝ちだが細かいところまでは口出ししない。だからお前が決めろ」


 それとと続け、目の前のヤツは話す。


「これからお前に攻撃する。全力で防御しろ、さもなくは」


 死ぬぞ


 何を言っているのか一瞬理解出来なかった。

 直後、身を持って知ることになる。


 ()()()()()()()


 錯覚か現実か分からないがその一撃をもって俺は気を失った。

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