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威圧

「……は?」


 言われた言葉に、私は一瞬言葉を理解出来なかった。

 元々十人を倒すことが出来ればどれで連戦進級審査はそこで終了の筈だった。

 だから、さっきの生徒で丁度終わりの予定だった。


「な、何を言っている!審査は終わりだ、これ以上戦う必要は無い!」


「それでも、お願いします」


 教師とは、生徒を導き見送る存在だと思っている。

 時に優しく、時に厳しく叱り在るべき場所へと導くそんな尊いとは存在だと今でも私は思っている。

 そんな教師という立場上生徒を叱る為に怒号を発し、怯える生徒を何人も見て来た。

 間違えた考え、態度、戦い方、そういったヒトとしての在り方を正す教師として、常に毅然とした態度を示していた。


(そんな私が……!?)


 体が動かず、一人の生徒から目を離せない。

 面には出していないが心が怯えている。恐怖や畏怖にも似た感情。

 死、それを直接目の当たりした気分だ。


 冷や汗が背を伝う。緊張感が訓練所全体に走る。


「お願いします」


「……わ、分かった」


 何とか振り絞った声で答え、歩き出す。

 扉を開け外の湿った空気が肌を撫でる。外の空気を吸った事でようやく肺に溜まっていた空気を吐く事が出来た。


「ハァ、ハァ」


(なんだ……あの緊張感は!私の能力は戦闘向けではないとされているが少なくとも実力はBクラス相当……これまで戦闘を見ていたが驚きはしたが、恐怖まではなかった)


 だが、それは私自身に向けられていたものではなかった。

 私ではなく次の相手、この学園で最強を誇る生徒と戦いと望んでいる。


 ドクンッ、ドクンッ


 私の心臓が高鳴っているのは、単なる好奇心。

 その高鳴りには学園の教師としてのポリシーは無く、私個人の興味だ。

 Aクラスへと向かう足は次第に早くなるのを止められない。



 俺には強くなれるチカラがある。

 現状の俺のチカラ、それは学園に来てから訓練によって得たチカラだけだ。実戦的な訓練をしてはいるが訓練は訓練。実戦には遠く及ばない。


 今はAクラスの中でも中の上から上の下くらいの筈。

 そこに俺に実戦での経験が加われば、更に強くなれる。


 次はこの学園最強。

 なら試運転ももう終わりだ。全力で勝ちに行く。


 倉庫に向かい使っていた短剣を戻して、新しいガントレットと槍を手に取る。

 持った感触、持ちやすさ、馴染み具合を確かめる。


(よし)


 ガントレットも槍も問題無い。

 倉庫を出るが、まだ先生は戻って来ていない。それまで待つか。


(……ふぅ)


 待つと決めてから一分も経つ前からそわそわしてしまう。

 まるで遠足前の小学生だ。

 身体が早く戦いたいとウズウズする。止まって身体を少し休めようとは考えられるけど動かさなければ落ち着かない。


「フッ」


 思わず笑い声が溢れる。

 無意識に顔が笑みを浮べる。


 一秒?一分?どのくらい時間が経っているのかも知らないが、楽しみだ。


(楽しみ……?)


 戦闘を楽しみだと思ったのは、いつ以来だろう。

 この先の心配や不安も拭い去るくらいの高揚感だ。現在の俺はFクラスに該当している。それも最底辺、能力もまともに扱えない。

 その俺がAクラス、それもトップの実力を誇る生徒と戦えるんだ。もし、俺が勝つことが出来たのならそれは革命(面白い)だろ。


「おい!」


 ふと、耳元で大声で呼ばれ隣を見るといつの間にか戻って来ていた先生がいた。


「どうしました?」


「全く反応が無かったから立ったまま寝ているのかと思ったぞ。まぁ起きているのならいい、連れてきたぞ」


 立ったまま寝るってどんなヤツだよ。

 特殊なヤツだ。


「今回連れて来たのは学園入学してからトップに立ち続けている生徒だ。心して挑めよ」


「分かりました」


 もう直ぐ始まるんだ。

 最強と最低の戦いが、これから。


「ところで、その人は何処に居るんですか?」


「ああ、そいつなら」


 先生が後ろを向くが誰も居ない。

 辺りを見回しても俺と先生以外のヒトも魔力も見当たらない。


 静かな訓練所の中で波紋する一粒の魔力。

 それから爆発的に溢れ出したかのような魔力の波が訓練所中を襲う。水中で突如何か途轍もないエネルギーが渦巻きそのまま水上まで膨れ上がった様に……


 背筋に大量の汗をかく。


(ここまでの魔力は感じた事が無い……!)


 さっきまで浮かべていた笑みも何処かへ消え去り、緊張感だけが残る。

 そこでようやく気が付いた。この緊張感(魔力)がどこから来ているのか。


 上、正確には訓練所の屋根の上真ん中。


(外から、しかも正確に訓練所を覆う様に魔力を満遍なく解き放った。授業をしている生徒の邪魔をしない為に)


 強い。俺が知っている中でも断トツに……

 しかし隠れているのなら何故魔力を解放した……?この審査をする事が面倒ならばそのまま隠れていればいい、何故魔力を飛ばした……?


(面倒なのは変わりないだろう。さっきの魔力はAクラスでも下にいれば卒倒するレベルだ。なら答えは一つ、試した)


 俺が戦うに値するか。アレで倒れるのならそれまで、耐える事が出来たのなら……どうする?最強。


 俺はお返しと言わんばかりに、さっきの魔力と同等量の魔力を解放した。昔からヒトより魔力が多かった。

 これくらいならどうという事ない。


 俺の魔力が覆い被さっていた魔力と反発し、膨大な魔力同士がぶつかり空気が揺れる。

 衝突した魔力同士で時に押し、時に反発する。

 違う魔力同士は反発しあいやがて全て霧散して綺麗さっぱり消える。



「……消された。俺と同等量の魔力、か。……メンド」


 空を見上げ雲一つ無い快晴。眩しい程の太陽が照りつける日。

 そんな昼下がり、訓練所の屋根の上で見上げる。


「眩しいな〜」

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