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地力

 先生と一緒に来た娘は真っ直ぐ倉庫の方へと足を進める。


「因みに、予め言っておくが今回の相手はBクラスの生徒を連れて来た」


 Bクラスなら、さっきの生徒よりも格上のはず……

 しかし、何故だろうな。そこまで脅威に感じないのは。俺がこの数ヶ月で強くなったのか、それよりも格上(和田)の相手をしているからなのか。

 どちらにせよ、少し面白そうだ。


「私を甘く見ないで欲しいわ、これでもBクラスでも第一位から落ちたことの無い実力者なの。いきなり進級審査をするから誰かと思えば話題の、しかもFクラスが相手だなんて!」


(……コイツのチカラを見たことが無いヤツなら当然の反応か。だが、そんな事言っていられるのは今だけだ!)


 さっきは初めてだったが、コイツなら慣れている。

 生まれた時から使い続け、片時も離れた事はない生物なら必要不可欠。


 ゴンッ


 拳同士を叩き鳴らす。

 普通拳同士を合わせたくらいでは、こんな鈍い音はしない。鳴るのは俺が着けているガントレットがあるからだ。

 これは槍や剣程のリーチこそ無いが、汎用性は高いパフォーマンスを誇る。


 基本こそ殴るだが、武術技術を用いれば武器の中で一番の汎用性だ。


(これなら俺のスタイルにも合う!)


「それでは、連戦進級審査を再開する!」


「辻基先生!私の話は終わっていないんですけど!!」


「……不満なら後にしろ、今は進級審査中だ」


「ですが……」


 先生は相手の女生徒を鋭い目つきで射貫く様に見ている。


「……分かりました」


「では、両者準備はいいか!」


「「はい」」


「それでは、開始!」


 合図と共に一気に駆け出す。

 武器が違うなら戦闘スタイルも変わる。それにガントレットはどちらかといったら得意武器だ。

 それに今の俺の戦闘を混ぜたら負ける気がしない!



 …………



(私の見ている景色は一瞬、夢と見紛う程の景色を映し出している!)


 それもその筈、辻基の目の前には倒れている女生徒と背を向けている審査対象がいた。

 闘いはほんの二秒で決着した。


(アイツの姿が一瞬ズレたかと思ったら、対面していたAクラスの生徒が倒れていた。さっきのCクラスの生徒には数十分という時間を要していたにも関わらず、一瞬で……!?)


 先生も俄然と動揺しているが、俺も驚いてはいる。

 今回の相手はAクラスという事でそれなりに本気ではいたものの、こんなに圧倒的に勝ってしまうとは。


 自分の握り締めている拳に着けているガントレットを見るが汚れ一つ傷一つ無い。


(やっぱりガントレットは良い!槍と同等クラスのパフォーマンスを引き出せる!今後は体術も磨いて行こう)


 隙を見抜き、一撃一撃見舞いここぞという場面での強力無比の攻撃を相手に放つ。

 この戦闘スタイルはありきたりだが、やはり強い。この調子で……


「先生、次、お願いします」


「……ッ!あ、嗚呼分かった」


 そう言い残し出て行く。


 次々と連れてきたのもやはりAクラスの生徒。

 しかし、俺の前には児戯にも等しい戦闘だった。全て一撃で倒れていく。おそらく内臓や骨にはダメージは無いだろう。

 いや、最早戦闘とは言えないものだった。


 サンドバッグ、もしくはそれに等しい代物。


 ヒトをそんな風に扱った事は多分無いが、やはり気持ちの良いものでもない。


 三試合目

 光魔術師に対して俺は短剣。光の屈折を活かし残像による分身みたいなものと自分はこれまた屈折を利用して姿を隠す。

 それでも魔力を使い続けている間、魔力が僅かに垂れ流しの為バレバレだった。

 試合時間僅か三秒。


 四試合目

 刀を使うらしく、それなら俺も刀を使う。

 見合って出方を伺うがそれも直ぐに断ち切られた。正直に前から居合術であろう構えで突進してきた。

 動きが遅い。だからタイミングを合わせる事は簡単だった。

 試合時間僅か十秒。


 五試合目

 金属を媒体にしたゴーレム使い、というべきか。

 訓練所いっぱいに大きなゴーレムを作り出した。しかし大き過ぎる。隙だらけな上、動きも鈍い。関節部分の接合部、そこが悪さをしている。そこを大剣を突き刺せば崩れ去った。

 試合時間僅か八秒。


 六試合目

 六人目は世にも珍しい獣化という能力を持った生徒だった。

 この世に能力が発現してからまだ幾度と発見事態稀な能力だった。特に肉食動物への獣化は戦闘特化の為希少かつ有用性があるとされている。

 が、人体から動物の体へと変化しているのだ。如何にAクラスといえども獣化の変化に慣れるのにも時間を要する。そこから技と言えるまで昇華させなければならない。

 つまり、俺の敵ではない。

 試合時間僅か五秒。


 七試合目

 呪術師だった。

 これまた珍しい能力だった。呪術とは魔力ではなく霊力や呪力といった特別なチカラが必要とする。

 コレは素の才能だけではなく、家柄も必要だ。つまり特別かつ限られたヒトのみが扱える。

 呪術師は人型の紙や物を媒体として術を現世に顕現させる。

 主に呪術は呪い(デバフ)がメインであり、攻撃は然程適さない。攻撃も出来ない事はないが殆どが即死や、呪い殺す事が大半だ。だが、殺す事は原則として禁じられている。

 他には家柄によって違うが、そこは俺も知り得ない物が多い。

 その為、攻撃力は無いに等しい。

 時間は掛かるがノープロブレムだ。

 試合時間僅か二十八秒。


 八試合目

 一言で言えば筋肉バカ、だろう。

 ひたすら肉体強化によって力技によってゴリ押される。これが中々厄介だった。

 力によって技、工夫、罠、全てが覆される。

 ならばどうするか?

 答え、それ以上の力でねじ伏せる、これに限る。何も対策もクソも無いのならそれが手っ取り早い。

 試合時間僅か十秒。


 九試合目

 糸を使い、行動、スピードを封じられた。

 剣を使おうが切れず、どういう加工を施したのか分からないが強度は鋼以上を誇る。

 学園が貸し出している武器は斬撃よりも打撃になる様に施されているが、それでも斬れる様には出来ている。それでも切れない。

 一見万事休すにも見えるが、勝機はある。糸は全て相手に収束する様に展開している。切れまいが届かまいが全ての糸の収束先が相手なら、糸を全て絡め取ればいい。

 幸いこの糸全て頑丈で切れる事はない。それならば絡め取るのに何の躊躇いも無い!

 糸を全て絡め取り、頭に一撃を打つ。

 試合時間僅か三十秒。


 十試合目

 ネクロマンサー。

 練大祭でも見たことがある生徒。幾人かのアンデットを召喚し駒として戦う。

 している事はさながら軍師だが、多体一ならそれは数の暴力だ。

 五試合目にゴーレム使いがいたが天と地ほどの差がある。ゴーレムという高い質だけのモノとは違い兵それぞれに特有の役割がある。近接、中距離、遠距離を個ではなく軍として扱い、戦闘を進める。それだけ魔力を消費するだろうが、汗一つかいていない。練大祭では斥候だけを出していたのだろう。

 今まで戦っていた生徒とは一つレベルが違う。

 しかし、軍を動かすには軍師が相手を視認して考えなければならない。

 なら、急に相手が消えればどうなる?

 統率が乱れ、まともに機能しないんじゃないか?

 強化魔術によりスピードを高め、一瞬にして訓練所から姿を消す。

 ……目で追えている。が、捕らえてから兵に指示を出すには少しの間にラグが生じる。そこを突けば軍というのは崩壊する。

 試合時間僅か五十六秒。


 俺は得物を次々と変えて闘っていたが、槍やガントレットに勝る武器というのは中々見つからない。

 大剣、剣、短剣、弓、鞭、刀、銃、傘、扇等々。

 どれも曲者揃いだった。剣や刀は重畳だがいまひとつ決定打に欠ける。弓や銃は遠距離からの攻撃には優れているが、自身の魔力を弾として放つ。その為威力も弾数もそのヒトの魔力次第だ。


 これまでの戦いで実感したのは、俺のポテンシャルは高いといえるだろう。

 武器を変え変えに戦ったが、最長で戦ったのは最後のネクロマンサーの生徒で約一分。

 兵士がいたからといって指示も的確、俺の周囲を囲み行動を制限しつつ急所を狙いに来ていた。

 命令のラグが無くなっていたら、俺はかなり消耗され劣勢に立たされていただろう。


(武器が馴染めていなかったなんて言い訳でしか無い)


 環境、武器が変わろうと十二分に本領を発揮する。

 俺にはそれだけのポテンシャルはある。そこから突出するモノがあったとしたらそれを伸ばす。

 槍とガントレット、この二つが今は最有力候補か。


(なら、今の俺の全力はどれ程なのか……)


 それが気になる。丁度今はその場が整っている。

 今試さないでどうする。


「先生」


「なんだ」


 おそらく次の生徒を呼びに行こうとする先生を呼び止め、その言葉を言い放つ。


「Aクラスで一番強い人呼んで来てくれますか」

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