カリスマ
教室に向かい廊下を歩いていると、
「おい、ちょっと待てよ!」
後ろから肩を掴まれ、声を掛けられた。
後ろを振り返ると、屈強な男子生徒がそこにいた。
(またか……)と、この前起きたことを思い出しながら振り返り、尋ねて来た男に聞いた。
「……何か御用ですか?」
「今うちのクラスから出てきただろ。何してた」
(うちのクラス。という事はこの男はAクラスの生徒か)
「……いえ、別に何もしていませんよ」
「嘘を着くな!いいからAクラスの中で何をしていたのか話せ!」
(荒々しく聞いてくるのも以前話してくるのも似ているな)
「……」
「沈黙という事は何かしていたんだな。早く話せ!」
「……友達と話していただけですよ」
「友達?一体誰のことだ?」
(……そういえば、名前聞くの忘れてた)
「……」
「やっぱり嘘か!」
「嘘じゃないですよ!」
その後も、両者一歩も引かず「嘘だ」「そうじゃない」の一点張りで決着がつかないまま数分。
「はい、そこまで」
3人組の女性と男性がやって来た。
「喧嘩はそこまで。和田君もキミも、先ずは話し合いをしましょう?」
「っち!」と舌打ちをし、和田と呼ばれた男は僕の肩を掴んでいた手を離しそっぽを向いた。
「……和田君?いきなり喧嘩というのは駄目ですよ?」
「いきなりじゃねえ!コイツが……」
「それは後で聞きますから。それで?、君はどうして私達の教室まで来たのですか?」
「……さっきもそっちの方に言ったんですけど、友達に話に来ただけですよ」
「そうなんですね。それで、友達って誰ですか?」
「……えっと、何時も寝ている人です」
「寝てる……成程、久渡さんですか。よく話せましたね。彼女ここに来た時から寝てて声も聞いたことが無いのですが……」
(寝すぎじゃない?……あと久渡っていうのか)
「はい、多分その人です」
彼女自身名乗っていないので確証は無いが、寝ている人で直ぐに思いついたのならそうなのだろうと、僕は話を進めた。
「久渡さんとは何話したんですか?」
(来た。この質問にどう答えるべきか。嘘を付くか?でも嘘だとバレたら何をされるか……)
(相手は格上。僕では敵わない相手、それが今僕の目の前に4人いる。さて、どうするか……)
「?どうかしました?」
僕の答えるのが遅いからか、首を傾げながら尋ねて来た。
「やっぱり嘘だな!」とさっきの和田と呼ばれた男は拳を握りしめたが、
「……和田君。」
さっきの柔らかい感じの声では無く、冷たい氷の様な声で
「同じことを二度も言わせないで下さい」
「ッ!!わ、悪かった」
「キミも本当の事言って下さいね?」
「……分かりました」
(今の威圧感で分かった。今まで会ってきた中で一番の強者だ。虐め来たあの3人組や男達なんかでは一発でやれる様な力を感じる。それにあの存在感……)
「わぁ、氷城だ」
「きゃあ~!氷城さんよ!」
「コッチ向いて〜!」
「今日も綺麗だな」
いつの間にか周りは他のクラスの人に囲まれており、色んな視線を【氷城 三玲】が独占していた。
(加えてカリスマ性まであるのか……)
氷城と呼ばれた目の前の女性は青みがかった黒髪を耳に掛けた仕草でさえ周りの人を沸かせた。
(……本当の事、か)
「実は、クラス総力戦について聞きに来ていました」
「……そうですか」
そう一言こぼし口角を少し緩め上がった様に僕には見えた。彼女は何を思ったのかこうもこぼした。
「だったら、私と勝負しましょう」
その一言は周りを沈黙させるには十分な一言だった。それこそ、悪目立ちする程に……