人間の性
「おい、どうなんだよ!」
「ッ!」
押し黙ってしまう様な形で藍沢さん一人に対して男女複数人が問い詰めてしまっている。
氷城さんのバッチを壊したのは確かに藍沢さんで合っている。だが、倒したのは違う。
氷城さん意識を奪ったのはこの僕だった。
そこに間違い、というかこれは学園側のミスというか勘違いというか何というか……
藍沢さんがその事を黙っているのは僕の事を気にしてなのか、他にバレたらいけない事があるのか……
まぁどっちにしても僕にとっては好都合だ。
……だが、黙ってもらっている分何か返すか。
「なあ、そんなに問い詰める事の程か?」
そう集まっている全員に言い聞かせる様に問いかける。
全員が何を言っているんだコイツみたいな顔をコチラに向ける。
「何言っているんだお前……」
そこ声に出すなよ……
「分かっているのか?ソイツのせいで俺達は無謀な戦いに巻き込まれるんだぞ!」
「「そうだ!そうだ!」」
「ソイツがその気ならアイツにも勝てるんだろ?だったらソイツを差し出せば解決じゃないか!?」
皆一同にその意見に賛成なのか、決心をしたかのような眼差しで見つめている。
「あ、えっと……それは、」
何とか上手く言おうとしているが、言い淀んでいる。なんて言ったら良いものかと迷っているのだろう。
だったら、
「そこまで言うのなら試してみるか?」
「た、試すって……」
藍沢さんも困惑しているのか、コチラを見つめている。
「あの和田って奴も本当に藍沢さんが氷城さんに勝ったのなら、対峙したらわかると思うけど……」
「でも、確認してたじゃないか!!」
「だから違うんじゃないか?」
「そ、それは……」
「和田だって強者かどうかは分かる筈だ。だけどそうはならなかった。つまり、」
つまり、全員の勘違いを解く。ただし、俺の存在はバレないように。
「他に居るんじゃないか?氷城さんを倒した強者が……」
「そ、それって、藍沢さん以外のクラスメイトがAクラスに匹敵する力を隠して……」
「隠す?なんでそんな事……」
「そうだよ、Fクラスなんて一番下のランクなんかよりも上のクラスにいけばいいじゃない。なんで……」
「それは、俺達を見下して嘲笑っているんじゃないか?弱い俺達を……見て」
「なによそれ!?私を馬鹿にしてるって言うの……!!」
「クソッ、なんだよそれ!!」
あれ?途轍もない勘違いを促してしまっていないか……?