来訪者
ナイフを買って帰ってから数時間経った。
夜も更けて来て、そろそろ眠ろうとしていると、
ピーンポーン
今学園の寮に住まわしてもらっている部屋のチャイムが鳴り響く。
扉を開くとそこには、
「こんばんは」
氷城さんがいた。
僕たちFクラスの寮というのは古くはないが一部屋一部屋は狭くビジネスホテルの様なものだ。
階級が上がっていく程に部屋はグレードアップしていき、クラスに応じて広く豪華になっていく。
だから、おかしいのだ。Aクラスならそれ相応の部屋を用意されている筈だ。
それなのに、そんな今は関係の無い氷城さんがいるのはおかしい。
「予想外って顔だね。私に勝った貴方にとってそこまで予想出来ると思っていたけど……」
「予想……出来る訳ないじゃないですか。貴女とはもう関わる事は無いと思っていたんですから」
「あら?随分と薄情ですね。ふふふっ、冗談です。実は先程ベランダで涼んでいましたら帰って来た所を見かけましてね。それで声をお掛けしただけですよ!」
「……そうなんですか。僕そろそろ眠ろうとしたんですけど」
「まぁまぁ良いじゃないですか!!少し話しましょうよ。貴方と話すの楽しいのですよ?」
「……分かりました。ここでは何なんで入って下さい」
玄関で女性をこんな夜遅くに外で話すのもアレだから部屋の中へと招き入れた。
……まぁ夜に男の部屋に入るのもアレだと思うけど、多分受け入れなくても直ぐに帰るとは思えない。
だから、渋々だが招き入れた。
「へえー、ここが君の部屋か。思ったよりも狭いね」
「すいませんね。なにせ僕はFクラスな者なんで……僕らクラスだと大体こんな感じですよ?」
「そうなんですか?私達の部屋ならコレの十倍はありますよ?」
流石Aクラス。僕ら底辺クラスとは比べられない部屋の広さしているな……
コレも実力主義の世界だから
「前置きははこれくらいで……ヨルさんは最近起きている事件について知っていますか?」
「事件?」
何か最近起きているのか?おっかない殺人とかでも起きたのか?
「全身発火現象……突如として日本のここ周辺で起きた全てが謎な現象。人為的なのか無人為的なのかも分からない。どんな能力も効果を表す事無く、ただひたすらに暴走している、みたいなんです」