総力戦 後日談
総力戦が終了してから暫く経ち、僕たちは帰りの船の上で過ごしていた。
「……」
船の上で景色を眺めていると、
「あ!いたいた!ヨル君〜」
そんな言葉が、後ろから聞こえてきた。
「……あぁ、藍沢さんか。どうかした?」
「ううん!見掛けたから声を掛けてみたんだ!ヨル君こそどうしたの、海をずっと見ていたみたいだけど……」
「ああ、うん。特にこれと言って理由は無いんだけど……潮風が心地良くてつい時間を忘れて見入ってしまっていたみたい」
「そっか」
そんな他愛もない話ををしていると、時間は過ぎていき船は港へと到着した。
あの後の話をすると氷城さんは僕より早く気が付いたのか意識を取り戻した時には姿は無く、先生に聞いたところ一足早く船で帰ったらしい。
あの人凄いな……
首絞められて直ぐに立ち上がって船まで徒歩で歩いて行くか……
酸欠でフラフラな状態でよく島半分を歩けるな
僕はと言うと川辺で倒れているところを藍沢さんに連れて来られたそうだ。藍沢さんありがとうm(_ _)m
港へ着くとそこには山崎先生の姿が見えた。
「……おぉ、着いたか」
気怠けにスマホを弄りながらも話し掛けてきた。
……教師なんだから仕事中にスマホいじるのどうなんだ?
僕が心に思ったことが顔に出ていたのか、
「だ〜い丈夫だ。今は勤務時間外だ。それくらい俺だって理解している」
……らしいです。
「そんな事より、勝ったらしいな。一人だけとは言え、あのAクラス相手に」
「……まぁ、そうらしいですね?」
「なんだ?勝ったのにやけに嬉しくなさそうだな。それになんで疑問形なんだ?聞いた話によるとお前が氷城の上に覆い被さっていたって聞いたが?」
情報が伝わるのが早い。いや、早すぎる。誰かが直接伝えたか、それとも見ていたか。何にしても流石国内最高の能力者学園……
「……誰から聞いたんですか?」
「あ、いや……まぁ、そこら辺は特別な仕組みがあるんだよ」
話をはぐらかされた。まぁ、今はいいか。
「……僕はただ気絶していただけですよ。そこに偶々氷城さんがいたんでしょう」
「そんな訳ないだろ……正直に言えよ」
そう言われたが、僕は無言を貫き通す。今は僕の、いや俺の実力は隠しておきたい。それはなぜだか分からない。
だが、今は隠し通す。それだけは頭で理解している。
「……はぁ、言いたくないならいいか……じゃっ帰るぞ〜」
皆に号令を掛け僕たち十人は学園へと帰って行った。