総力戦2
昔見たサバイバル動画を思い出しながら寝床や食事の用意を始めた。
食事は近くの川から魚もいることが分かったから魚を数匹取り、今晩にむけて、準備する。
魚の捌き方はなんとなく見ていた動画を参考にうろ覚えながらしている。
太陽は現在、偏り始めもうすぐ夜を迎えようとしていた。
簡易的な寝床も確保し、そして……静かな夜を迎えた。
聞こえて来るのは風で靡いた草木の音のみ……それ以外は殆ど聞こえては来なかった。
(チーム戦だというのになんで一人でいるんだろうな?)
そんな独りよがりな事を考えながら焚き火が消えない様に眺めている。
夜も更けてきて、そろそろ眠ろうとした時、
ドカンッ!
と、小さかったが爆発音が聞こえてきた。恐らく、川の向こう側。
単なる小火かそれとも氷城さんに遭遇したか……
ともあれ、今は体を休めよう。……明日から本格的に総力戦が始まる。
…………
夜が明け朝日が登る。
幸い、今日明日は晴れで雨が降らないそうだ。
先生達が言うには、総力戦期間中は晴れが続くそうで、それは絶対らしい。
能力によるものなのか、ただただ天気予報が優秀なのか、この世界ではどちらが正しいのか分からない。
(ただ、ここは能力至上主義の世界。それに先生伝に聞いた事だし、能力によるものなのかな?)
そんな事を考えながらいると、
ドカンと昨日と同じ何かが爆ぜた様な音が島に鳴り響いた。
(やっぱり、誰かが氷城さんと遭遇したのか?)
それに、今回は割と近いからか水柱が上がっているのが見えた。
実力はFだが、Fクラスの中でもアレだけの水柱なら上位に名前を連ねていたはずだが……
その後、数分もせずにその水柱が上がってからは特に戦闘音は聞こえてこず、静寂が訪れていた。
(……という事は、氷城さんと遭遇してから僅か数分もせずに倒されたということか……つくづく化け物じみているな)
そんな事を考えながらも辺りに何かないか、警戒をする。
警戒はしていたが、何ということも無く時間が進んで行く。
小川が流れ、小鳥がさえずる音が聞こえる。自然豊かなこの島で今、総力戦が行われているとは思えない程だ。
(自然豊かだな……)
そんな事を考えていると、後ろの草むらから物音が聞こえて来る。
僕は直ぐに立ち上がりざまに振り返り、臨戦態勢へ整える。
敵か味方か分からないが、備えるに越したことは無い。
徐々に草を掻き分ける音が大きくなっていき、僕の目の前にその人は姿を現した。
「……氷城さん」
そこには、今回こうなった根源の人物がいた。
「……ここにいたんですね。ヨル君」
川辺で立ち会い、こうなっている現状……良くは無い。
足元がおぼつかなく、体術だけでは勝てるはずも無いが、氷城さんの能力次第で変わって来る。
「そうですね。ここが一番周りを見えるので……氷城さんはどうしてここに?」
「私はこの場所が一番休憩に向いているから寄ったのですが……そうはいけなくなってしまいましたね」
「……別に今この場所でやり合わなければならないという訳ではないでしょ」
「……そうですね。ですが、私は貴方に興味があります。だから、だからこそ戦い合いたいのです」
「そうですか……」
「……そういえば、昨日と今日とで大きな水柱を見たのですが何か知りませんか?」
「ああ、それでしたら私が倒した人達ですね。皆さん強かったですよ?」
絶対に嘘だ……頂点から見れば僕たちみたいな底辺。視野にさえ入らないだろう。
そう言い終わると、二人は戦闘態勢になった。
僕は重心を下げ、体術メインの戦い態勢をとり、対して氷城さんは目を閉じ、恐らく集中し始めた。
氷城さんを見るからに魔法系なのだろう。しばらく見ていると、氷城さんの周りに氷の様なものが現れた。
(氷系統の魔法なのか)
内のクラスにも炎と水系統の魔法を使う奴らもいる。
多分そいつらも倒して来たのかもしれない……
……そういえば水系統の能力者が戦っているだろう場面を見た事あるけど、炎系統の能力者が戦っているは知らなかったな……
……今はそれはいい。集中しないと……
そう思った刹那、僕の目前に氷柱状の中氷が来ていた。
それを何とか顔を傾け躱し、頰の横を通り過ぎていった。
ッツーっと頰に何かが垂れていく。触ると赤い液体が垂れてきていた。
触ると血が滴り落ちていた。
躱しきっていたと思っていたが、躱しきれていなかったらしい。
傷口から血が数滴垂れ落ちてくる。
目では見えていた。が、体がギリギリ避けることができなかったようだ。
傷を気にしている僕の方よりも、氷城さんは無邪気な子供の様に笑っている。
怖ッ……
「アレを避けますか!そこそこスピードは出していたんですが……やはり貴方はFとは思えませんね!」
そう言い終わると同時に次弾が既に生成されており、標準を僕へと向けてきていた。
「次はもっとスピードを上げますね……!」
次の瞬間、更にスピードが上がった氷槍が飛来してくる。
シュッシュッ、と風を切る音が聞こえる。それを躱し、攻撃に転じる隙を探りながら相手を視る。
見えこそ出来るが、体が氷槍を避けるのについてこずにいた。
そのため、体に擦り傷が増えていき体力の消耗も激しくなっていく。
そこに更にスピードを上げた氷槍が僕に襲いかかってくる。
(だが、スピードが上がっても躱す事が出来ている。これも鍛えてきたお陰か……動体視力も上がっているのかもしれない……)
「このスピードでも躱しますか……!貴方はどれ程出来るのでしょうか!」