当日
親睦会なら闘いは無いのかもしれないけど……
学園同士の懇親会なら何をするんだ?能力の教え合いなんてする訳がないし、闘いに関する教養なら何時もと変わらないし……やっぱり戦闘か?
「親睦会と言っても簡単だ。たった一つの目標を遂行してもらう、それだけだ」
「センセー!目標って誰が設定するんですかー?」
「勿論私だ。個々人に合わせた目標にしよう」
成長に繋がる経験は人によって当然変わる。しかし俺たち位の生徒になると設定する方も難しいだろう。
どの程度から簡単でどの程度から困難なのか見極めがいる。
俺達も強いと言ってもまだ学生、未熟なところもまだまだある。
成長している芽を学園が潰す訳にもいかない。だからこそ見極めなければならない。
「合わせるからと言って油断はしないように。君たちに課す目標は私が望む成長だ。よって目標に達していない者を除名とする」
一瞬だが早ノ瀬と目が合った。
自意識過剰や気の所為でもない。その視線にどういう心理があるのか分からな、いや察せる事はある。
学園長が能力至上主義を基準にするのならそこだ。
能力の開花。
前に学園長が言っていた言葉、これが目指すべきものなら各々の能力に見合う研究型でも見つかるのだろう。
この教室にはこの程度で騒ぐ者はいない。皆納得してこの教室に来ているのだから。
「期待しているよ」
親睦会まで残り一週間となった。
目標とされるモノは親睦会当日に渡されるそうだ。事前に知らされて達成されても困るだろうが、学園長がそんな簡単な目標を設定するとは思えない。
簡単ならその程度だってことだ。
「各自の荷物は必要無い。必要最低限の物はアチラが用意してくれる」
向こう側にも寮があるらしく、生活面では心配する事は無いらしい。何でも今の生活と同等の品質を用意してくれると。
「今回の親睦会の目的はあくまで君たちは目標を遂行することに注力してくれ」
「センセー、その目標ってもう決まっているんですかー?」
「あゝ、勿論だとも」
「それって何処かに隠してるんですか?」
「……そうだね、この世界で一番厳重なトコロにね」
学園長が一番と言い切るのなら相当厳重なのだろう。
気になりはするが、探してもどうせ無駄に終わるのだろう。
「当日はこの教室に集合してもらう。移動に関しても問題は無い」
この島には飛行場なんて広さを誇る土地は……ありそうだが無い。島の外に出るには船に乗るしかないが、船は定期的に来る物資便以外にない。
ヘテロクラスなら泳げば島を出れそうではあるが、本島の方角は不明。
幾ら体力や魔力が有ろうが一週間と保たず沈んで逝くだろう。
それならどうやって俺達はこの島に来たのか?
推測だが物資便にプラス一隻二隻で乗せて来たのかもしれない。総力戦の時に乗った船もその一隻に過ぎない。
そんな事を考える暇は時間がある時にでも考えればいい。
荷造りをする必要無いなら何時も通り訓練するだけだ。
(魔力制御……より繊細に微量で魔力を運用する)
ガチガチに厚めに固めて防御するのではなく、薄くだが流動するように。
流れる水が物質を避け流れ落ちる様に攻撃を防ぐ。
刀なら質量によって剣筋が変えられてしまう様に、拳なら反発する様に。水の性質を参考に、魔力を流す。
使う魔力は10パーセントに抑える。
(しかし、動かす魔力は身体中を高速回転させる。一秒間に80回転は最低限……)
これで今までと同じくらいの防御力を誇る。
同時に念動力もどきも発動。こっちは一秒間に一を消費する感覚。
念動力もどき✕黄昏流槍術。
これで例え投げようが手元に戻す事が出来る。
【黄昏流槍牙突 夕光】
一閃。
一直線に限り高速になるだろう。投げ飛ばすが念動力で掴み、俺の手元に帰ってくる。
これ以外にも活用出来そうだが、それはこれから考えよう。
実戦で思い付く事もある。というか実戦で思い付いた方が実用性が高い。
「こんなもんか」
制限をしている今、これ以上使う事は止めておこう。
一点を見つめるとそこにはさっき投げ飛ばした槍によって生じた衝撃で凹んだ壁がある。
強化された壁は床や天井同様強化魔術が施され強固になっている。
そう簡単に普通の生徒なら壊れない程の硬さだ。
(また面倒だが修復申請書を出さないとか、何回目だコレ?)
事務所に寄り、その後にヘテロ寮へ帰った。
一週間という時間はまたたく間に過ぎていった。
早ノ瀬学園長が言う当日になる。
「全員、集まっているね」
教室内を確認して早ノ瀬は声を発した。
「これより、親睦会を行う為に島外の学園へと向かってもらう」
緊張感が帯びる。
闘いが始まる時と同等の緊張感。この瞬間は心臓がドキドキする。
胸の高鳴り、前は楽しめていたが……
「皆、準備は出来ている様だね」
「当然です」
「……」
「ふぁ~……zzz」
三者三様の反応を表す。
「よし、では……」
そろそろ移動して学園に向かうのか。
そう思い、各々が席を立とうとすると……
「あゝ、席は立たなくていい」
疑問が頭を過ぎる。移動せずにどうやって島外へ向かうというのか。
その時、この島にやって来た時の事を思い出した。
【情報遮断】
思考が止まり、意識が闇へと沈んでいく。
最後に見えたのは笑顔で見つめる学園長の顔だった。




