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一変

 この世に【能力】と呼ばれる現象が発現してから数十年

 強い者が世界を牛耳り、弱い者は爪弾きされた。昔の政治体制も無くなり、新たな政治体制が敷かれた。

 それは、()()()()()()


 能力と実力が強ければ強いほど、その人物は評価される。

 実力と言っても様々ある。戦闘・知能・技術、そして……能力。

 あらゆる分野で優れた者がこの世界では勝ち上がる。


【強きが世界を統べ、弱きはただ従うのみ】


 最初、そんな政治が罷り通る(まかりとおる)筈がないと誰もがそう思っていた。

 だが、違った。


 一人の天才がいた。早ノ瀬楓夏(はやのせふうか)


 この人がいる事でどんどんとその罷り通る筈がないが無いものが通っていった。

 民衆を促し、政治関係者を説得し、共感させ、能力の有用性を世間に知らしめてきた。

 それにより、賛同者も増え、最初は反対だった者も今では賛成し、能力至上主義社会は順調に進展していった。

 それでも、至上主義の考えに少なからずもいた。

 能力を扱えない者、能力を持たない者たちは能力至上主義社会に反対した。

 無能力者、そして落ちこぼれと呼ばれる人たちだ。

 そう呼ばれる人たちが申し出たがもう既に聞き入れようとする者はいなかった。


 強行手段に出ようと考えたが相手は皆能力至上主義に賛成した者揃い。

 つまり、殆どが能力者。

 力で勝てるはずも無く、あっさりとこの世界は能力至上主義の世界へと変わっていった。


 これが、たった数年前の出来事だ。

 それから世界は瞬く間に変わっていった。


 キーンコーンカーンコーン


「おーい、帰ろうぜ」


「部活行こう!」


 そんな声が響く夕陽が照らす校舎の放課後

 授業が終わり、帰路に着くものや部活で汗を流す者。様々な放課後を過ごしている。

 そんな中、僕は……


「……はぁ……痛っつつ……」

「今回もこっ酷くやられたな……」


 校舎裏に連れて来られて、所謂虐めに遭っていた。

 だが、虐めが起きても問題になる訳じゃない。

 弱者は強者になにをされても当然である。それがお偉いさんたちの考えらしい。

 僕みたいな低い評価を付けられている弱者にはそれが普通。それこそが当然である。


「おかしな世界だ……」


 この世界では能力を駆使し、実力をつけ、評価をつける。

 僕みたいな弱者には相応の評価しか得る事しか出来ない。だからと言って、別に能力を持っていない訳ではない。

 ただ、扱いこなせていない。能力が発動する時もあれば、しない時もある。

 能力を扱えない僕は、無能の烙印を押されている。それも当然だ。

 この世界は能力至上主義社会。


「はぁ……帰るか」


 痛む身体を起こしながら、そう呟き帰路に着くのであった。


「夕飯は弁当でいっか……」


 そんな事を呟きながら家に向かっていると、


「まーたこっ酷くやられたわね」


 その瞬間、僕の前方から瑞々しい声が響き渡った。

 そこには、とても綺麗な女性が立っていた。

 スラリと伸びた脚にこちらを見つめる青い瞳。

 一上和奏(いちがみわかな)。それが、彼女の名前だ。

 彼女も又、この世界に取り残された普通の高校に通っている無能力者の一人だ。

「一上さん……」


「もう!和奏でいいって言ってるじゃん!」


「そういう訳にはいきませんよ。一上さんは年上なんですから」


「む~……」


 頬を膨らせながらこちらを青い瞳が見ている。

 いくらそんなに頬を膨らせても名前呼びはしませんよ。可愛いな。


「そんなに睨んでも呼びませんよ」


「……今はそれで良いわよ。それより傷の手当てしないと」


「大丈夫ですよ。ご飯食べて、1日良く寝れば治るので」


「貴方はそうかもしれないけど……普通はそんな一瞬じゃ治らないのよ」


「……そうなんですか」と途中立ち寄ったコンビニで買ったコーヒーを飲みながら聞いていた。そんなにおかしいかな?


「兎に角、取り敢えずは消毒だけでもいいから傷の手当てしないと……」


「……分かりました」


「だったら早く入って」


「え?」と困惑しているとしばしの沈黙が流れた。

 それもそのはずだ。僕は今実家暮らしではない。一人中学校近くのマンションに暮らしているのだ。何で中学生が一人暮らししているんだって思う人もいるだろう。僕もそう思う。


「どうしたの?」


「どうしたのって、僕の家ですよ!?」


「?そうだよ?」


「何当たり前だよみたいに言ってるんですか……」


「いやだって、その通りだから」


 さも当然の様に言って……


「……はぁ、いいですよ。今に始まったことじゃないですし」


 そう言いながらドアを開け、一上さんを家の中へ招き入れた。

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― 新着の感想 ―
すみません。 少し気になってつい覗いちゃいました。 優れた者が上に立つ、現実世界に横行する当たり前の事実に憤りを感じ、思わず口にする、「おかしな世界」 共感しました。 それから、彼女を苗字呼びするのは…
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