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CLASSIC CARAVAN FANTASY  作者: じっくり
第一章
13/108

長老、マナトについて

 2人は居間まで駆け抜けた。


 「長老!!大丈夫か!?あっ!」

 「長老!?」


 居間で、机に突っ伏して、筆を持ったまま意識を失っている長老の姿があった。


 筆につけられた墨汁は染み落ちて、下の紙が黒く染まっている。


 そして、その先。


 「……それで……デスね……か……世界情勢は、そこまで、わ、分から……アメリカと……あっ……あと……ヨーロッパでは……」


 長老と向かい合って、マナトがだらんとイスにもたれかかって座っている。


 目は虚ろで、どこを見ているのか分からない。


 「……あっ……でも……日本でも……それほど……教育デスか……そ、ソウデス、ね……問題も……」


 意識が朦朧としているようだ。


 何か呪文を唱えるような、夢にうなされるような、何かに取り憑かれているように、微かながら、しかしずっと、口を動かしている。


 「ちょっと、アンタら……うぉ!?」


 ラクトが居間に入ろうとすると、足の踏み場がないほど、居間の床に長老が書き記したとされる紙が散らかっている。


 「ええい!紙なんか気にしている場合じゃねえ!」

 「長老!マナト君!大丈夫!?」


 ラクトもミトも紙を踏みながら居間に入った。


 「……あっ、これは、熱があるぞ!……うわっ!マナトもだ!」


 長老とマナトのおでこを触ったラクトが叫んだ。


 「医者呼んでくる!」


 ミトは長老の家を飛び出した。


     ※     ※     ※


 次の日、長老はピンピンとして、大広場へと出てきていた。


 「まったく、心配したぜ、長老」


 先日村に戻ってきたキャラバンの隊長、ケントが苦笑して言った。


 「いやぁ、すまんすまん。とりあえず、よう帰った、ケント」

 「おうよ」

 「交易品も、皆に行き渡ったようじゃな」

 「ああ、大丈夫だ」

 「うむ、ご苦労。それで、市場のほうは?」

 「おう、それを言おうと思ってたんだよ」

 「おっ!なんじゃ、よかったのか!?」

 「フフン、聞いて驚くなよ……」


 なぜかケントは鼻を高くした。


 「ちゃんと、ゼロを守り通したぜ」

 「……う、うむ、ご苦労」

 「ところで、俺が交易行ってる間に、新参者が増えたらしいな」

 「おお!そうじゃった。マナトはどこにいるかの?」

 「ミトの家で休んでいるみたいだぞ」

 「そうかそうか。……いやぁ、あまりにもあやつの住んでいた世界に興味を持ってしまって、三日三晩かの?ず〜っと問答してしまったわい」

 「三日三晩だと?」


 ケントは唖然とした。


 「おいおい、無茶苦茶だな、長老。そりゃ熱も出るぜ」

 「年甲斐もなく、若かりし頃の書生の血が騒いでしもうたんじゃ」

 「無理すると身体に堪えるぞ。もう年なんだから」

 「何を言う。まだまだ若いもんには負けん。生涯学習の身よ!」

 「年甲斐もないんじゃなかったのかよ。でも、まあ、そうだなぁ……」


 ケントは無精髭を触りながら、長老の表情を眺めた。


 「確かに長老、若返ったような気がするなぁ」

 「じゃろ?」

 「マナトって言ったな。どんなヤツなんだ?」

 「ものすごい、いろんな話を聞いてな。日本という、異世界の国からやって来たそうじゃ」

 「ほほう」

 「その世界がなぁ。……考えられないほど、平和なんじゃが、実は、それほどでもないところが、本当に面白くってなぁ」

 「へぇ〜!そんな世界があるのか」

 「マナト本人は意識しとらんようじゃったが、わしにとっては、とてつもない衝撃をいくつも受けた」

 「たとえば?」

 「……あまり、外では言えんことじゃ」

 「んだよそれ。ますます気になるじゃねえか」

 「そうじゃなあ……マナトはいわゆる、わしらが理想とする世界に住んでおった」

 「ほう!」

 「しかし、わしらはまだまだ無知じゃ。その理想の先になにがあるのかを、マナトによって、知ってしまってな」

 「……ほう?」

 「そういうことじゃ」

 「ふむ、なんもわからん」

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